ラティス地方雑誌
その日マンダラはふらっとヘリアルシティまでバトル大会に参加するか、と遠出していた。四天王な手前自分に注がれる視線に、顔の布をよりたくしあげた。
「アレーひょっとしなくてもマンダラさん……?」
異国訛りのある言葉で呼ばれ、振り返ると白髪に金目の男が立っていた。
「カルロス……」
「ア、覚えてくれてたんだァ……!」
「博士の助手がなんでこんなところに?」
ヘリアルシティはジムがないし、ポケモンファイトクラブくらいしか見るものがない。研究職のカルロスはそれ程バトルが好きではなかった筈だ。
「えと、娘に会いにきて……」
「御息女か」
えへ、とカルロスは照れたようにする。彼の娘はまだ三歳だった筈だ。
「すごいんデス、もうこないだあげたムウマが懐いてて! きっと才能あるんデスヨッ!」
「左様か」
マンダラは元々こう言うときに気の利いたことを言う方ではないし、カルロスも聞いて欲しいだけだろう。暫く娘の惚気をしていたカルロスだったが、急に顔を暗くした。
「ただ、ここで大会に出たいッテ……」
「ああ……」
研究職、とは言ったが、実は昔、カルロスが自分が来るより昔にメジャーリーグのジムリーダーをやっていたことは聞き及んでいる。それ故多分、これから話すことは『杞憂』ではない。
「勝つために、勝ち続ける意味でいうならポケモンを揃えなくてはいけないシ、更にそれを鍛えなくてはいけないシ、ポケモンだけでなくトレーナーも知識を蓄えステップアップしていかなくてはいけません」
……このように。
「しかし齢三であろう? まだ浅瀬でチャプチャプしててもいいと思うが」
「僕はリディアが悲しんで欲しくないんデスッ!!」
「そうは言っても、勝ち続けることの難儀さは貴殿がよく知っていよう」
「う……」
ジムリーダー時代の彼はレートが物凄く高いという訳ではなかったようだ。
「でも勝負の辛辣さって友達としてのポケモントレーナーとは別でェ〜! そりゃいつまでも仲良しこよしを楽しむとも思ってませんでしたが、三歳は早すぎるヨ〜!!」
「それはそうかもしれんな、子供の成長は早いな」
「ウウ〜」
「そんなに言うなら、我の弟子にするか?」
「エ」
「パパ〜!!」
そのタイミングで、カルロスと同じ色の髪をした少女がカルロスの方へ走り込んできた。
「いっかいめ、かてたの! むーまちゃん、がんばったよ!」
拙い舌で紡がれるのは、今日の戦績だろう。隣には得意そうにふんぞり返るムウマ。
「リディア……」
「でもにかいめはおしかったー! つぎは、ゆーしょーするからね!」
「なかなか気合が入った娘ではないか」
「おにいさん、だれー?」
「マンダラ、だ」
「しってる! きいたことある! つよいひと!!」
「ほうそうか」
カルロスはその様子を見ながら暫く悩んでいたが言った。
「エエト、そのゥ……今師弟関係とか、リディアはわかんないし、見識を狭めることになると思いマス……」
「パパ?」
「ふむ、して、どうする?」
カルロスは苦笑した。
「僕も心配し過ぎでした。僕のやり方で、この子は伸ばしていこうと思いマス」
そう言ってカルロスは大きな手で娘を抱き上げる。
「たか〜い!!」
「そうだね」
「では、我は失礼する」
「はい」
「またね、まんだらおにーちゃん!」
無言で無表情で振られた手にさえ、少女は満面の笑みを浮かべた。
親子が去ってから数分後、
「よ、わ」
マンダラのボールからなにかが出てきた。彼の手持ちのヨノワールだ。
「気になるか、戦うとしたらずっと先だぞ」
「わー!」
「わかった、わかった。とりあえず午後の部が始まる前にファイトクラブへ向かうか」
そう言ってマンダラは親子が行った先とは逆方向に相棒と一緒に歩み始めた。
【250918】
「アレーひょっとしなくてもマンダラさん……?」
異国訛りのある言葉で呼ばれ、振り返ると白髪に金目の男が立っていた。
「カルロス……」
「ア、覚えてくれてたんだァ……!」
「博士の助手がなんでこんなところに?」
ヘリアルシティはジムがないし、ポケモンファイトクラブくらいしか見るものがない。研究職のカルロスはそれ程バトルが好きではなかった筈だ。
「えと、娘に会いにきて……」
「御息女か」
えへ、とカルロスは照れたようにする。彼の娘はまだ三歳だった筈だ。
「すごいんデス、もうこないだあげたムウマが懐いてて! きっと才能あるんデスヨッ!」
「左様か」
マンダラは元々こう言うときに気の利いたことを言う方ではないし、カルロスも聞いて欲しいだけだろう。暫く娘の惚気をしていたカルロスだったが、急に顔を暗くした。
「ただ、ここで大会に出たいッテ……」
「ああ……」
研究職、とは言ったが、実は昔、カルロスが自分が来るより昔にメジャーリーグのジムリーダーをやっていたことは聞き及んでいる。それ故多分、これから話すことは『杞憂』ではない。
「勝つために、勝ち続ける意味でいうならポケモンを揃えなくてはいけないシ、更にそれを鍛えなくてはいけないシ、ポケモンだけでなくトレーナーも知識を蓄えステップアップしていかなくてはいけません」
……このように。
「しかし齢三であろう? まだ浅瀬でチャプチャプしててもいいと思うが」
「僕はリディアが悲しんで欲しくないんデスッ!!」
「そうは言っても、勝ち続けることの難儀さは貴殿がよく知っていよう」
「う……」
ジムリーダー時代の彼はレートが物凄く高いという訳ではなかったようだ。
「でも勝負の辛辣さって友達としてのポケモントレーナーとは別でェ〜! そりゃいつまでも仲良しこよしを楽しむとも思ってませんでしたが、三歳は早すぎるヨ〜!!」
「それはそうかもしれんな、子供の成長は早いな」
「ウウ〜」
「そんなに言うなら、我の弟子にするか?」
「エ」
「パパ〜!!」
そのタイミングで、カルロスと同じ色の髪をした少女がカルロスの方へ走り込んできた。
「いっかいめ、かてたの! むーまちゃん、がんばったよ!」
拙い舌で紡がれるのは、今日の戦績だろう。隣には得意そうにふんぞり返るムウマ。
「リディア……」
「でもにかいめはおしかったー! つぎは、ゆーしょーするからね!」
「なかなか気合が入った娘ではないか」
「おにいさん、だれー?」
「マンダラ、だ」
「しってる! きいたことある! つよいひと!!」
「ほうそうか」
カルロスはその様子を見ながら暫く悩んでいたが言った。
「エエト、そのゥ……今師弟関係とか、リディアはわかんないし、見識を狭めることになると思いマス……」
「パパ?」
「ふむ、して、どうする?」
カルロスは苦笑した。
「僕も心配し過ぎでした。僕のやり方で、この子は伸ばしていこうと思いマス」
そう言ってカルロスは大きな手で娘を抱き上げる。
「たか〜い!!」
「そうだね」
「では、我は失礼する」
「はい」
「またね、まんだらおにーちゃん!」
無言で無表情で振られた手にさえ、少女は満面の笑みを浮かべた。
親子が去ってから数分後、
「よ、わ」
マンダラのボールからなにかが出てきた。彼の手持ちのヨノワールだ。
「気になるか、戦うとしたらずっと先だぞ」
「わー!」
「わかった、わかった。とりあえず午後の部が始まる前にファイトクラブへ向かうか」
そう言ってマンダラは親子が行った先とは逆方向に相棒と一緒に歩み始めた。
【250918】
1/2ページ
