ラティス地方雑誌

「強さってどういうことだと思う?」
 その桃色の服を纏った男は言った。
「力が強い? うん、わかりやすい。素早く攻撃できる? 大切だ。しかしこのアダバナはそれを否とする!」
 その手にはひとつのボール。
「ゆけっ、アシレーヌ!!」
 一匹の人魚のようなポケモンは美しい声で吠える。
「『美しさ』、それがこのアダバナが求めるもの!!」
 自分の近くに来た愛しいポケモンを一撫でし、アダバナと名乗った男、ユグドタウンジムリーダー、アダバナは懐からテラスタルオーブを持つ。
「美しさの頂点へ、猛ろアシレーヌ!!」
 頭にハートのテラスタルジュエルを生やしたアシレーヌは今一度、更に大きい声で、吼えた──……。

★★★

「容赦なかったですね」
 待ち合い室でクールダウンしているところを声をかけられ、アダバナはんあ、と少し気の抜けた声を漏らすと、相手を見て微笑んだ。
「だろ? 次のレート戦あんたに勝っちゃうかも」
「おやおや、相手を越して僕を見ていたのですか。挑戦者に失礼ですよ」
「そんなこと言いにシアンから出てきたのか? お前も俺と戦いたくて仕方ないでしょ~」
 挑発されたシアンシティジムリーダー、オブシディアンは一瞬呆けた顔をしたがやがてアダバナにどこか似た悪どい笑みを浮かべた。
「そうですね、ほのおなどかくとうなどは見慣れていますから、そろそろ自分の有利属性(ホーム)で戦いたいですね」
「そいつら全員退けてる癖に、よく言うぜ」
「結果にすぎませんよ。苦しいものです」
「まあ俺もあんたのはがね(ウィークポイント)なら歓迎だ。ジム業終わったら相手してくれや」
「承知致しました」
「アダバナさん、次の挑戦者、準備整いました」
「もうそんな連チャンできる程若くないんだけどねー」
 頭を掻いてごちりながらアダバナはコートに向かっていった。
 オブシディアンは考え込む。先ほどの戦い、レアコイルを始めとするはがねタイプ統一との戦い、やや相手優勢の攻防の中、最後のアシレーヌで一気に二体を撃破した。
『力が強い? うん、わかりやすい。素早く攻撃できる? 大切だ。しかしこのアダバナはそれを否とする!』
「お行きなさい。貴方は十分お美しい」
 オブシディアンは聞こえないように彼の背中に投げかける。『マジョリティ・ニッセ、アダバナ』。その名前に曇りなきバトルをと思いながら。


※ニッセ…伝承に登場する妖精のこと。

【250917】
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