それゆけ!ストレンジアドベンチャー!

「そんなことがあったんだ」
「詮索したらいけなかったんだけどね」
 無事レジギガスを捕まえ巨人伝説を完結させてきたジュードに言う。ユウリはあの後頭の大きいポケモンを連れてきて『豊穣の王だ』と見せてからはマックス大巣穴に籠っている。
「でもロキも、……ルキも、悪い奴じゃないと思う。主人の女の子のためにこんなところまでポケモンを捕まえにきたのだから」
「それ思うんだけどさぁ」
 ジュードは言いづらそうにしている。目線で続きを促すとぽつり、とジュードは言葉を落とした。
「主人の女の子、来てないってことは、動けないんじゃないの」
「……!」
「だってポケモンなんて本人に選ばせた方がいいもん。珍しいポケモンが多いとはいえ、どれも『強すぎる』って言ってるし、あんまり御せる感じではないんじゃないの……」
「確かに」
「アルベルが彼らを悪く思いたくないのはわかるよ。でも怪し過ぎるんだよね」
「……」
 ピキ。
 沈黙を破る音があった。
 見るとテーブルの上に置きっぱなしになっていたタマゴが割れ始めていた。
「ウワーッ!!」
「落ち着いてアルベル!!」
 そうこうしている内にタマゴは完璧に割れ……、
「……やぁん?」
「ヤドンだね。ヨロイ島によくいる奴だ」
「おお……!」
「やぁ? やぁーん」
 ヤドンは辺りを見回すとアルベルを見てにこっとした。
「アルベルがタマゴあっためてたってわかるのかな」
「……可愛いな」
 抱き上げると温かいし、体を擦りつけてくる。
「ふふ」
 思わず笑いが漏れる。悪い気はしない。
 そこでジュードのスマホがまた鳴った。
「マクロコスモスからだ」
「かけてくれ」
『もしもし、ジュードさんですか? マクロコスモスの者です』
「はい、どうしました?」
『現在謎の鳥ポケモンがワイルドエリアで走り回っています。これはジムチャレンジで優秀な成績を残した方にお願いしているのですが、どうか一旦捕まえて我々の会社に寄贈願えませんか?』
「なるほど……リス、リステル選手はどうですか? ちょっと今手離せなくて……」
『ジュードさんが推薦するなら、そちらで通しましょう。仮にも前委員長の息子ですから』
「お願いします」
『では』
 電話は切れた。
「なんだ、隊長行かねぇのか?」
「今日はコバルオンを探すので」
「やることがあるのはいいことだよな!」
「リステル君、『なんでだよー!!』って言ってそう」
「いいからコバルオン探しに行くよ」
 その時にロッジの扉がこんこんとされた。
「はい」
「……ロキ」
「今開ける!」
 アルベルが扉を開けるとまだ若干具合の悪そうなロキがいる。服も燕尾服ではないゆったりとしたものになっている。
「大丈夫か?」
 ヤドンを抱えたまま話すとロキはヤドンの頭を撫でると、言った。
「ここに出てくる鳥ポケモン、ルキの話聞いてから欲しくなっちゃってよ。手伝ってくんない?」
「そういうことなら!」
 どうやら、今日もコバルオンは探せないらしい。

★★★

「なんとか捕まったな」
「……ありがとう」
「具合は大丈夫か」
 ジュードのスイクンの上に乗ったロキは大分顔色がよくなっては見える。
「ああ。やっぱ可愛いなぁ。このポケモン」
「お気に召したようでよかった」
「コバルオン探しに行かせるんだったんでしょう。それはごめん」
「いやいや……」
『こばーっ』
「!?」
 鳴き声と同時に何かが近づいてくる気配。
 吹雪の奥から青い角の生えたポケモンがゆったりと歩いてきた。
「コバルオン!?」
『そうだ』
「喋った!?」
『失礼した。テレパシーを使って会話をさせて貰っている』
「そ、そうなのか……」
「びっくりだなあ」
『ミカに頼まれたのだろう。随分と彷徨ったな?』
 そう言うとコバルオンはアルベルの後ろを見る。振り向くとミカがいた。
「ミカ」
「どうしても、あやまりたかったの」
『……』
「あなたをみたことをいったらむらのひとがあなたたちをおいたててしまった。ほうじょうのぬしが、まだちからをもっていたころだから。ほかのちからをゆるさなかった。あなたはやさしかったのに」
「やっぱり……君は、もう死んで……」
『外から来た我々がこの地の伝説を害したのは、本当のことだ』
「そんなことない!」
 ミカがコバルオンに縋った。
「どうか、ここが気に入ったのなら、ここにいて。これ、かえすから……」
 返されたのは
『いいのか』
「元々貴方のものだから」
 急にミカが大人の声で言う。
「もう時間のようね、アルちゃん、ミカちゃん。私を解放してくれてありがとう……」
「ミカっ」
 ミカの姿が消えていく。
『些細なことだけど、未練があると人間、苦しくなってしまうのよ。二人も後悔しない人生を歩んで……。ガラナツリース、ヤドンちゃんに使ってあげてね』
 やがて、光の粒子になり、見えなくなってしまった。
『“たべのこし”か、ふむ、確かに」
「……人のポケモンだったことがあるのか!?」
『昔のことだ。遠い昔の。飢えかけていたミカに与えた。食べなかったようだがな』
 コバルオンはそこで吼えた。
 そして二人に背を向けて行ってしまった。
「行っちゃった」
「……ガラナツリース……」
 言われたことにガラナツリースを取り出すと、ヤドンのボールが揺れる。
 ボールから出すと、よちよち歩いてガラナツリースを欲しがるので与えてみる。途端、進化の光がヤドンを包んだ。光が落ち着いた頃そこにいたのは。
「ヤドキングだ……ガラルの」
「なんと……本でしか見たことない存在だ……」
 ヤドキングのシェルダー部分がにこりとする。
「ガラルのヤドキングってシェルダーに乗っ取られちゃってる筈だけど、それでもアルベルはわかるのかな」
「さあ……」
 今度はヤドキングがアルベルに抱き着いてきた。
「やあん」
「きっと記憶を継承してるんだよ! ミカさんの力かな」
「やあん!」
 応えるようにヤドキングは鳴いた。
「一緒に強くなってくれるか、ヤドキング」
「やあ、ん」
 頭を撫でると、嬉しそうに返事をする。
「ふふ」
 和やかにしている一行に聞こえたのはスマホの着信音。
「ユイさんからだ」
 ジュードが通話モードをオンにする。
『もしもし、少年たち! あたしは今ヨロイ島でガラルファイアー捕獲したわよ! データが欲しければ渡すけど』
「お願いします」
「任せなさい!」
 数秒後、スマホにデータが送られてくる。
「ユイさんはこれからどうするんですか?」
「あたしはもうガラルを去るわ。まだ色々知らないことがあるけれど、謎を謎のまま残すのも伝説ハンターの仕事よ!」
「お元気で、ユイ」
「アルベルとジュードはいつも一緒だね。それじゃまた縁があったら!!」
 電話が切れる。
「最後まで嵐だったな」
「ん、続いて着信が……」
 応答すると。
『もう~ジュードちゃんってば人使い荒いでござるよ~!!』
「リスだ。鳥ポケモンは捕まったの」
『労いすらなし! まあ最近親父の不始末で書類仕事だったし、ワイルドエリア爆走は楽しかったよ。一応ガラルサンダーのデータ送っとくぜ~!』
 今度はガラルサンダーのデータが送られてくる。
「なんかローズ前委員長の息子ならって検査終わったら所持も許されたわ」
「わ! リスますます強くなっちゃうね」
『ん~でもオレお前らほどバトル強くないからなぁ』
「そんなこと言わずに! 『任セキタンザン』って言ってよ!」
『仕方にゃいなぁ~。任セキタンザン!!』
「ふふ」
「俺たちの冒険も終わった。近い内帰るだろう」
「!」
『アルベルじゃん。おつしたー! じゃあ書類仕事片付けてくるね!』
「ああ、お疲れだった」
 今度はリステルの通信が切れた。
「皆大変そうだな」
「あ、あの、アルベル……『冒険が終わった』って」
 アルベルはジュードの視線を受け止めた。
「豊穣の王、巨人、鳥。全部済んでいるだろう? ピオニー殿の義理は果たしている。これから帰って来年のジムチャレンジの候補を選ぶことにするよ」
「あー……」
 納得したようにジュードは頷き、眉根を潜める。
「まさかロキさんに黙って行かないよね?」
「……」
「こら~!!」
 雪山にジュードの怒声が響いた。
『それで僕に連絡を?』
「表からはルキ君が許してくれそうになかったもので」
『うん。僕の方は平気。大分本調子に戻ったよ』
「そうか」
 安心した、本当に。
『アマルスも、ありがとう』
「ああ」
 そう和やかに話していると。
「大変だ、隊長! アルベル隊員!!」
 デカい声でピオニーが紛れ込んできた。
「なんだこんな時に……」
「巨人、盗まれた!!」
「え!」
「いや、レジギガスがよー……数えてもいねぇんだよなー……!」
「いねぇんだよな、じゃないっ!!」
『樹の方に向かったと思う』
「ロキ!?」
『それやったの、多分ルキだよ』
 そんな、ことが。


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