それゆけ!ストレンジアドベンチャー!
翌日、ピオニーの濃厚なシチューとぐっすり寝たことで風邪が回復したアルベルは、鏡を見て顔を顰めている。
「ちょっと金色過ぎないか?」
「似合ってるよ」
「元々シャクちゃんのために作ったんだが、着こなすとはやるじゃねぇか!!」
「嬉しくない……」
そう、アルベルの探検着はピオニーとジュードと違って金キラだった。雪山で目立つのは大事かもしれないが……。
「じゃあぼうけんメモを配るぞー」
「あの~……」
そこで一人の少女が入ってきた。
見覚えがある。それもその筈。
「ユウリ!」
ガラルチャンピオン、ユウリ。
「あ、ジュード。いたんだね、実はシャクちゃんから頼まれてピオニーさんの様子見に来たんだ」
「なるほど! 昨日俺を負かした娘っこが加入か! ちょっと待っててくれ、あんたの分の冒険着も作るからよ!」
「手作り!!」
「すご……」
「ジュードと……アルベルさん、ですよね」
ユウリはちょっとバツが悪そうだ。アルベルの事情を知っているのだろう。それもそうだが。
「随分と金色……ですね」
「うう……やはりそこに目が行くよなあ」
「それは一点ものだからな!」
屈辱。
ユウリは言った。
「私、服ができるまで待つから二人は先行ってていいよ。伝説いっぱい捕まえちゃえ!」
「うん、ユウリも後で!」
「ああ、後で」
「よーしお前らに冒険のしおりを渡すぞ」
「絵も文字もきたなっ!」
「なんだアルベル、芸術がわかんねぇのか!」
それは芸術に対する冒涜だ、と言いそうになったがややこしくなりそうなので耐えたアルベルだった。
「巨人か~」
「なんか数体いるみたいだが……、……?」
「どうしたの?」
アルベルは頭を掻く。
「今、何かに見られていたような……」
「ユイさんかな? 連絡せずに来ちゃったから」
「いや、あの様子だったら知ってたらメモを奪いにくる勢いだぞ」
「連絡、する?」
「どうしようかな……」
「……さん」
「? ジュード、今なんか言ったか?」
「アルベルこそ」
二人で首を傾げていると。
「あの……」
「うわっ!」
「わあ」
一人の少女がいつのまにか二人の前に立っている。もこもこの服を着た、黒髪の控えめそうな少女だ。
「なっ、なんだ君は、フリーズ村の子か?」
「フリーズむらなのは、そう。ミカって……いう」
「……アルベル」
「ジュード」
「アルちゃんに、ジュウちゃん……。おねがいがあるの」
ミカは言い淀んでいたが、やがて絞り出すように言った。
「あたし、“こばるおん”にあいたいの」
「こばるおん?」
「ああ、イッシュにいる珍しいポケモンだ。姿を隠すらしいから、雪山はおあえつらえ向きかも」
「ふむ……。ミカ君、だったか。君はコバルオンに会ってなにをするつもりだ?」
「かえさなきゃいけないもの、ある……」
「ふむ……いいか、ジュード?」
「いろんなとこ行けるし会えるかもね」
二人の言葉を承諾と受けたのかミカはほっとした顔をした。
「ふたりのそばにいるから、あえたらまたこえかけるね……」
「うわっ」
辺りが一瞬ふぶいた。
辺りを見回してもミカの姿はない。
「シャイな子だな……」
「現地の子ならちゃんと着いてこれるんじゃない?」
「そうか……」
「さ、巨人探そー」
「ああ」
★★★
巨人の寝床、黒鉄の遺跡。
「指笛で入れるなんてな……」
「どういう仕組みなんだろうね。あ、床が光る」
「おい、無遠慮に踏むな……あ?」
中に入った二人が戯れていると、近くの像の雰囲気が変わった。
「まさか……」
数秒経って、像が動いた。
「だから言っただろー!!」
「やるしかないよ、スイクン、初陣だよ!!」
「くおおー」
「う、うう、オノノクス、頼んだ……!」
「ぎゃう!」
こうして鋼の巨人とのバトルが始まった。
数十分後。
遺跡の前には肩で息をするアルベルとボールをしげしげに見ているジュード。
「本ッ当、寿命縮んだ……」
「レジスチルっていうんだ。これは後でピオニー隊長かユウリに渡そうね、管理しきれないから」
「ああ、そうしよう……」
「後、折角だからここのポケモンもちょっとゲットしていこうよ。戦力強化だ」
「切り替えはや~……昔は俺の後ろに隠れてたのに」
「いつの話をしてるんだよ」
そう笑うジュードの顔はもう『男』の顔だった。
胸がしくんと痛んだ。
(変わっていくことは、いいことの筈なのに)
「あっ! ニドリーナ!」
「あまり遠く行くなよー」
捕まえたてのフリージオの怪我を手当てしながらアルベルが走っていったジュードに言うと『わかってるー』という声が聞こえてくる。
「『いつの話をしてるんだよ』か……」
「アルちゃん、かなしい……?」
「わっ!!」
振り返るとミカがいた。
「ああびっくりした……どうかしたかね?」
「あたしも、まわりがどんどん、あたしをわすれていって、かなしかったことあります」
「君の年齢で……」
「もうとりもどせなくなっちゃったので……アルちゃんは、ジュウちゃんがまだとどくとこにいるから、きっとだいじょうぶ」
「ミカ君……」
「これあげる。あたしがあんだの」
「これは?」
枝のリースのようだ。
「そろそろもどるね」
「戻るもなにも一緒にいたら……」
一瞬目を離した隙に、少女はいなくなってしまった。
「……まだ届くとこにある、か」
でも、全部ぶちまけたら、ジュードは本当に自分を見限ってしまわないかな。
思い悩んでいると、二個のボールを抱えたジュードが戻ってきた。
「首尾は」
「ニドリーナと、アブソル!」
「いいじゃないか!」
「えへへ……」
「それで、その、あの……」
ジュードが首を傾げる。ええい言ってしまえと口を開いた時だった。
「見つけたわよ探検隊!!」
何かがすごい勢いで走ってきた。ライコウだ。ということは。
「このユイ様を差し置いて巨人を捕まえるなんて、いい度胸をしてるじゃないの!!」
ユイだ。
「ああ、面倒臭い……」
アルベルは頭を抱えた。
「巨人を賭けてベットバトルよ! あたしは色違いポケモン二匹を賭けるわ!」
「うーん」
「やるしかないよ、俺が受ける、そのバトル!」
「そうこなくちゃ!」
「うーん」
今なら話せそうだったんだけどな。
【250911】
「ちょっと金色過ぎないか?」
「似合ってるよ」
「元々シャクちゃんのために作ったんだが、着こなすとはやるじゃねぇか!!」
「嬉しくない……」
そう、アルベルの探検着はピオニーとジュードと違って金キラだった。雪山で目立つのは大事かもしれないが……。
「じゃあぼうけんメモを配るぞー」
「あの~……」
そこで一人の少女が入ってきた。
見覚えがある。それもその筈。
「ユウリ!」
ガラルチャンピオン、ユウリ。
「あ、ジュード。いたんだね、実はシャクちゃんから頼まれてピオニーさんの様子見に来たんだ」
「なるほど! 昨日俺を負かした娘っこが加入か! ちょっと待っててくれ、あんたの分の冒険着も作るからよ!」
「手作り!!」
「すご……」
「ジュードと……アルベルさん、ですよね」
ユウリはちょっとバツが悪そうだ。アルベルの事情を知っているのだろう。それもそうだが。
「随分と金色……ですね」
「うう……やはりそこに目が行くよなあ」
「それは一点ものだからな!」
屈辱。
ユウリは言った。
「私、服ができるまで待つから二人は先行ってていいよ。伝説いっぱい捕まえちゃえ!」
「うん、ユウリも後で!」
「ああ、後で」
「よーしお前らに冒険のしおりを渡すぞ」
「絵も文字もきたなっ!」
「なんだアルベル、芸術がわかんねぇのか!」
それは芸術に対する冒涜だ、と言いそうになったがややこしくなりそうなので耐えたアルベルだった。
「巨人か~」
「なんか数体いるみたいだが……、……?」
「どうしたの?」
アルベルは頭を掻く。
「今、何かに見られていたような……」
「ユイさんかな? 連絡せずに来ちゃったから」
「いや、あの様子だったら知ってたらメモを奪いにくる勢いだぞ」
「連絡、する?」
「どうしようかな……」
「……さん」
「? ジュード、今なんか言ったか?」
「アルベルこそ」
二人で首を傾げていると。
「あの……」
「うわっ!」
「わあ」
一人の少女がいつのまにか二人の前に立っている。もこもこの服を着た、黒髪の控えめそうな少女だ。
「なっ、なんだ君は、フリーズ村の子か?」
「フリーズむらなのは、そう。ミカって……いう」
「……アルベル」
「ジュード」
「アルちゃんに、ジュウちゃん……。おねがいがあるの」
ミカは言い淀んでいたが、やがて絞り出すように言った。
「あたし、“こばるおん”にあいたいの」
「こばるおん?」
「ああ、イッシュにいる珍しいポケモンだ。姿を隠すらしいから、雪山はおあえつらえ向きかも」
「ふむ……。ミカ君、だったか。君はコバルオンに会ってなにをするつもりだ?」
「かえさなきゃいけないもの、ある……」
「ふむ……いいか、ジュード?」
「いろんなとこ行けるし会えるかもね」
二人の言葉を承諾と受けたのかミカはほっとした顔をした。
「ふたりのそばにいるから、あえたらまたこえかけるね……」
「うわっ」
辺りが一瞬ふぶいた。
辺りを見回してもミカの姿はない。
「シャイな子だな……」
「現地の子ならちゃんと着いてこれるんじゃない?」
「そうか……」
「さ、巨人探そー」
「ああ」
★★★
巨人の寝床、黒鉄の遺跡。
「指笛で入れるなんてな……」
「どういう仕組みなんだろうね。あ、床が光る」
「おい、無遠慮に踏むな……あ?」
中に入った二人が戯れていると、近くの像の雰囲気が変わった。
「まさか……」
数秒経って、像が動いた。
「だから言っただろー!!」
「やるしかないよ、スイクン、初陣だよ!!」
「くおおー」
「う、うう、オノノクス、頼んだ……!」
「ぎゃう!」
こうして鋼の巨人とのバトルが始まった。
数十分後。
遺跡の前には肩で息をするアルベルとボールをしげしげに見ているジュード。
「本ッ当、寿命縮んだ……」
「レジスチルっていうんだ。これは後でピオニー隊長かユウリに渡そうね、管理しきれないから」
「ああ、そうしよう……」
「後、折角だからここのポケモンもちょっとゲットしていこうよ。戦力強化だ」
「切り替えはや~……昔は俺の後ろに隠れてたのに」
「いつの話をしてるんだよ」
そう笑うジュードの顔はもう『男』の顔だった。
胸がしくんと痛んだ。
(変わっていくことは、いいことの筈なのに)
「あっ! ニドリーナ!」
「あまり遠く行くなよー」
捕まえたてのフリージオの怪我を手当てしながらアルベルが走っていったジュードに言うと『わかってるー』という声が聞こえてくる。
「『いつの話をしてるんだよ』か……」
「アルちゃん、かなしい……?」
「わっ!!」
振り返るとミカがいた。
「ああびっくりした……どうかしたかね?」
「あたしも、まわりがどんどん、あたしをわすれていって、かなしかったことあります」
「君の年齢で……」
「もうとりもどせなくなっちゃったので……アルちゃんは、ジュウちゃんがまだとどくとこにいるから、きっとだいじょうぶ」
「ミカ君……」
「これあげる。あたしがあんだの」
「これは?」
枝のリースのようだ。
「そろそろもどるね」
「戻るもなにも一緒にいたら……」
一瞬目を離した隙に、少女はいなくなってしまった。
「……まだ届くとこにある、か」
でも、全部ぶちまけたら、ジュードは本当に自分を見限ってしまわないかな。
思い悩んでいると、二個のボールを抱えたジュードが戻ってきた。
「首尾は」
「ニドリーナと、アブソル!」
「いいじゃないか!」
「えへへ……」
「それで、その、あの……」
ジュードが首を傾げる。ええい言ってしまえと口を開いた時だった。
「見つけたわよ探検隊!!」
何かがすごい勢いで走ってきた。ライコウだ。ということは。
「このユイ様を差し置いて巨人を捕まえるなんて、いい度胸をしてるじゃないの!!」
ユイだ。
「ああ、面倒臭い……」
アルベルは頭を抱えた。
「巨人を賭けてベットバトルよ! あたしは色違いポケモン二匹を賭けるわ!」
「うーん」
「やるしかないよ、俺が受ける、そのバトル!」
「そうこなくちゃ!」
「うーん」
今なら話せそうだったんだけどな。
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