それゆけ!ストレンジアドベンチャー!
「……寒いな」
駅から出たアルベルの一言はそれだった。
場所はカンムリ雪原。ガラルの僻地であるそこにアルベルはそこにやってきていた。
というのも。
「ジュード」
「ん」
「君は本当に、止まらないんだな」
「……」
珍しいポケモンを探しにきたジュードの付き添いをジュードの親から頼まれたためだ。
といっても。
(既にジュードは俺より強い)
それは紛れもない事実。ブラックナイトの時のタワーのてっぺんの戦いが証明している。
「アルベル?」
「あ、ああ、すまない、ジュード」
気おくれしつつももこもこの洋服をまとったジュードの後を追って、コートを翻す。
「こんな俺でも……」
(ジュードは頼ってくれる)
こっそり持っているムゲンダイナのボールが揺れた。
★★★
マックス大巣穴。
「これが……スイクン」
ジュードが捕まえたボールを撫でている。貸し出しのポケモンに恵まれ、勝つことができ、ゲットできたのだ。
外で待っていたアルベルはその様子を見てふふ、と声を漏らした。
「なに?」
「ジムチャレンジから会ってなかったから、元気そうでよかった」
「確かに」
あの後はずっと大変だった。自分は面識はなかった王族たちがザシアンとザマゼンタの様子に怒り狂い、アルベルはずっと彼らを相手に対話をしていた。
皆、醜い顔をしていると思った。そして、ジュードにすら嫉妬した自分はもっと醜いのだろうと暗い気持ちになることが多かった。
だから家で父親ともやや和解し、勉学に励んでいるというジュードから『カンムリ雪原に行かないか』という誘いの手紙が出た時は、飛び上がるくらい嬉しかったのだ。二つ返事で飛び出してきてしまった。
「俺も嬉しい」
「……! ジュード……」
「なに、どうかした?」
少し上がった目線に、変わった一人称。
(ああ、そうやって君は変わっていくのか)
恋人でもあるまいし、自分にそれを阻む権利などないというのに。
二人がここに滞在している間に借りることにしたのは、マックス大巣穴の近くの村フリーズ村。軽い話をしながら、向かっていると、不意に視界をなにかが走った。
「何奴!!」
咄嗟に癖でジュードを後ろに隠し、オノノクスのボールを抜く。しかし目に入ったのはポケモンに乗った女性だった。
「あら、なんだ人だったの。てっきりポケモンかと」
灰色に海のように蒼い目の女性は品定めするように二人を見ている。
「済まないお嬢さん、俺はアルベル、こっちがジュード。敵意はないと見ていいんだな」
「かたっくるしいわね~その口調、貴族でしょ。あたしはしがない伝説ハンターよ」
「伝説ハンター?」
しかし『貴族』とは。そんなにわかりやすかったろうか。
「あの……」
ジュードがアルベルの後ろから顔を出す。
「それ……ライコウですよね。しかもずっと強そう」
「!」
「あら、当たり。この子の価値がわかるなんてやるじゃない。ポケモンバトルしたいところだけど、ここ、伝説だらけで滞在中に回れなさそうなの! フリーズ村の村長に訊いたら、近々ツアー客が来るらしいし、あんたらも珍しいポケモン狙いでしょ?」
女性は矢継ぎ早に話す。マシンガントークという奴だ。全く言葉が差し込めない!
「あ、あたしはユイ。これ番号だから珍しいもん見つけたら教えてよ」
女性はやっと名前と連絡先を名乗るとライコウをあやして、その後走り去って行った。
「嵐か?」
「ムゲンダイナの話してたら食いついてきそうだったね……」
「ジュード、さすがに冗談の質が悪いぞ!」
「ごめん、絶対漏らさないようにしようね……」
ジュードはしゅんとしてしまった。そんな顔をさせたい訳じゃないのに。
「言い過ぎた。村長の村へ行こう。寒いだろう、ほらコート着て」
「アルベルの分がなくなっちゃうじゃないか」
「俺は鍛えてるから」
「俺だってアルベルの背抜かすもん!」
「はいはい」
「キーッ」
★★★
「ごほっ……」
「鍛えてるの、誰だっけ」
「すまない……」
次の日借りている部屋の一室のベッドの上でアルベルは寝込むことになっていた。さすがに鍛えていても寒さはどうにもならなかったようだ。
「さてと……」
「じ、ジュード、一人で行くのか? あ、あぶな」
「アルベルに栄養あるもの食べさせたいし、ちょっと本土とか色々行ってくるよ」
「だめだこの子電車圏内徒歩と同じレベルだと思ってる!」
「おう、景気いい会話が聞こえてくるな!」
そう言ってドカドカと一人の男性が部屋に入ってきた。
その顔は。
「ローズ!? お前何して……」
「んあ? ああ、俺様はピオニーだっての!」
「ぴ、ピオニー?」
「そう! ド・かっけえだろ? 実は娘のシャクちゃんと伝説ツアーに来たんだけど娘っこはダイマックスアドベンチャーに夢中でなぁ! あ~誰かシャクちゃんがいい具合に気になるようにツアー協力してくんねぇかな~」
「……」
あまりにも言葉に含ませるのが下手過ぎる。
「もしかして、ユイさんが言ってたツアー客って、貴方?」
「おう! 村長から既に来てる人がいますよって聞いてこちとらでんこうせっかで来たんだぜ? そこの緑のチビ、さっきから興味津々って顔してるぜ?」
「ジュード!?」
「興味はとってもあります!」
ジュードの目が宝石のようにキラキラしている。暫く会わない内に大分活動的になった気がする……。
「俺、ジュードって言います! ピオニーさん、そのツアー、俺とアルベルに噛ませてくれませんか!」
「おう、いいぜ! ピオニー探検隊の冒険の始まり始まりだな! ここの寒さを舐めちゃいけねぇ。俺が着てるのと同じ奴と金ピカの奴を貸してやる!」
「金ピカの奴いらないだろ!」
「風邪っ引きにちゃんとやるからなっ!」
「要らないって言ってんだろ!!」
「アルベル、調子よくなってきた?」
そう言うとジュードは自分の額とアルベルの額を手で抑えて比べた。
そんなこと親にもやられたことがなく固まっているとジュードはうん、と笑顔で頷いた。
「今日だけ休もうか。ピオニーさん、料理とかできます?」
「伊達に娘育ててねぇぞ!! シチュー作ってやるからな!」
「わーい」
なんか、
楽しいのに。
「う~……」
「アルベル!? 辛いの!」
「ううっ……自分が情けなくて……。俺、勝手にお前と距離、感じて……!!」
自分の行動がこんなにも痛い。
「あーほら泣かないで。ツアー頑張ろうね」
「うん……っ」
「なんかよくわかんねぇが話が進んだってことでいいか? とりあえずシチュー作るぜ」
「手伝います」
アルベルはまだぐすぐすと泣きながら布団で見じろいだ。そして目を閉じた。
今度こそ君を裏切ったりしないから。
【250910】
駅から出たアルベルの一言はそれだった。
場所はカンムリ雪原。ガラルの僻地であるそこにアルベルはそこにやってきていた。
というのも。
「ジュード」
「ん」
「君は本当に、止まらないんだな」
「……」
珍しいポケモンを探しにきたジュードの付き添いをジュードの親から頼まれたためだ。
といっても。
(既にジュードは俺より強い)
それは紛れもない事実。ブラックナイトの時のタワーのてっぺんの戦いが証明している。
「アルベル?」
「あ、ああ、すまない、ジュード」
気おくれしつつももこもこの洋服をまとったジュードの後を追って、コートを翻す。
「こんな俺でも……」
(ジュードは頼ってくれる)
こっそり持っているムゲンダイナのボールが揺れた。
★★★
マックス大巣穴。
「これが……スイクン」
ジュードが捕まえたボールを撫でている。貸し出しのポケモンに恵まれ、勝つことができ、ゲットできたのだ。
外で待っていたアルベルはその様子を見てふふ、と声を漏らした。
「なに?」
「ジムチャレンジから会ってなかったから、元気そうでよかった」
「確かに」
あの後はずっと大変だった。自分は面識はなかった王族たちがザシアンとザマゼンタの様子に怒り狂い、アルベルはずっと彼らを相手に対話をしていた。
皆、醜い顔をしていると思った。そして、ジュードにすら嫉妬した自分はもっと醜いのだろうと暗い気持ちになることが多かった。
だから家で父親ともやや和解し、勉学に励んでいるというジュードから『カンムリ雪原に行かないか』という誘いの手紙が出た時は、飛び上がるくらい嬉しかったのだ。二つ返事で飛び出してきてしまった。
「俺も嬉しい」
「……! ジュード……」
「なに、どうかした?」
少し上がった目線に、変わった一人称。
(ああ、そうやって君は変わっていくのか)
恋人でもあるまいし、自分にそれを阻む権利などないというのに。
二人がここに滞在している間に借りることにしたのは、マックス大巣穴の近くの村フリーズ村。軽い話をしながら、向かっていると、不意に視界をなにかが走った。
「何奴!!」
咄嗟に癖でジュードを後ろに隠し、オノノクスのボールを抜く。しかし目に入ったのはポケモンに乗った女性だった。
「あら、なんだ人だったの。てっきりポケモンかと」
灰色に海のように蒼い目の女性は品定めするように二人を見ている。
「済まないお嬢さん、俺はアルベル、こっちがジュード。敵意はないと見ていいんだな」
「かたっくるしいわね~その口調、貴族でしょ。あたしはしがない伝説ハンターよ」
「伝説ハンター?」
しかし『貴族』とは。そんなにわかりやすかったろうか。
「あの……」
ジュードがアルベルの後ろから顔を出す。
「それ……ライコウですよね。しかもずっと強そう」
「!」
「あら、当たり。この子の価値がわかるなんてやるじゃない。ポケモンバトルしたいところだけど、ここ、伝説だらけで滞在中に回れなさそうなの! フリーズ村の村長に訊いたら、近々ツアー客が来るらしいし、あんたらも珍しいポケモン狙いでしょ?」
女性は矢継ぎ早に話す。マシンガントークという奴だ。全く言葉が差し込めない!
「あ、あたしはユイ。これ番号だから珍しいもん見つけたら教えてよ」
女性はやっと名前と連絡先を名乗るとライコウをあやして、その後走り去って行った。
「嵐か?」
「ムゲンダイナの話してたら食いついてきそうだったね……」
「ジュード、さすがに冗談の質が悪いぞ!」
「ごめん、絶対漏らさないようにしようね……」
ジュードはしゅんとしてしまった。そんな顔をさせたい訳じゃないのに。
「言い過ぎた。村長の村へ行こう。寒いだろう、ほらコート着て」
「アルベルの分がなくなっちゃうじゃないか」
「俺は鍛えてるから」
「俺だってアルベルの背抜かすもん!」
「はいはい」
「キーッ」
★★★
「ごほっ……」
「鍛えてるの、誰だっけ」
「すまない……」
次の日借りている部屋の一室のベッドの上でアルベルは寝込むことになっていた。さすがに鍛えていても寒さはどうにもならなかったようだ。
「さてと……」
「じ、ジュード、一人で行くのか? あ、あぶな」
「アルベルに栄養あるもの食べさせたいし、ちょっと本土とか色々行ってくるよ」
「だめだこの子電車圏内徒歩と同じレベルだと思ってる!」
「おう、景気いい会話が聞こえてくるな!」
そう言ってドカドカと一人の男性が部屋に入ってきた。
その顔は。
「ローズ!? お前何して……」
「んあ? ああ、俺様はピオニーだっての!」
「ぴ、ピオニー?」
「そう! ド・かっけえだろ? 実は娘のシャクちゃんと伝説ツアーに来たんだけど娘っこはダイマックスアドベンチャーに夢中でなぁ! あ~誰かシャクちゃんがいい具合に気になるようにツアー協力してくんねぇかな~」
「……」
あまりにも言葉に含ませるのが下手過ぎる。
「もしかして、ユイさんが言ってたツアー客って、貴方?」
「おう! 村長から既に来てる人がいますよって聞いてこちとらでんこうせっかで来たんだぜ? そこの緑のチビ、さっきから興味津々って顔してるぜ?」
「ジュード!?」
「興味はとってもあります!」
ジュードの目が宝石のようにキラキラしている。暫く会わない内に大分活動的になった気がする……。
「俺、ジュードって言います! ピオニーさん、そのツアー、俺とアルベルに噛ませてくれませんか!」
「おう、いいぜ! ピオニー探検隊の冒険の始まり始まりだな! ここの寒さを舐めちゃいけねぇ。俺が着てるのと同じ奴と金ピカの奴を貸してやる!」
「金ピカの奴いらないだろ!」
「風邪っ引きにちゃんとやるからなっ!」
「要らないって言ってんだろ!!」
「アルベル、調子よくなってきた?」
そう言うとジュードは自分の額とアルベルの額を手で抑えて比べた。
そんなこと親にもやられたことがなく固まっているとジュードはうん、と笑顔で頷いた。
「今日だけ休もうか。ピオニーさん、料理とかできます?」
「伊達に娘育ててねぇぞ!! シチュー作ってやるからな!」
「わーい」
なんか、
楽しいのに。
「う~……」
「アルベル!? 辛いの!」
「ううっ……自分が情けなくて……。俺、勝手にお前と距離、感じて……!!」
自分の行動がこんなにも痛い。
「あーほら泣かないで。ツアー頑張ろうね」
「うん……っ」
「なんかよくわかんねぇが話が進んだってことでいいか? とりあえずシチュー作るぜ」
「手伝います」
アルベルはまだぐすぐすと泣きながら布団で見じろいだ。そして目を閉じた。
今度こそ君を裏切ったりしないから。
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