too early to give up.
「ミュシャさん、ぼ、僕と付き合ってください!」
数秒後、彼女が発した言葉は。
「ごめん、多分君の思う通りじゃないから無理」
だった。
★★★
「ミュシャ、あの子のこと振ったんだ」
「うん、脈がなかったから」
「勿体ないねぇ。ボーイッシュ寄りなあんたのこと好きになってくれる人、珍しいよ?」
「なんであたしの勿体ないとかをあんたが決めるのさ!」
それを聞いた男子同級生は途端に気まずそうに『ごめん』とだけ呟いて席に戻って行ってしまった。
『……感じ悪』
どこかから声が聞こえたが、『シッ、聞こえるよ!』と諫める声の後聞こえなくなってしまった。
(またやっちゃった)
彼も彼女らも、口に出すだけで、なにもしてこないと知っている。
何故なら、ミュシャのクラスの1-Bがバトル実技コースで、ミュシャはバトルが強いから。
オレンジアカデミー。それがミュシャの通う学園だ。
その中でも、総合コースより少し、いやかなりバトルに関して詳しく、比重を置いて勉強するのがバトル実技コースだった。
「メー……」
「パモ」
足元に手持ちのマメバッタとパモットがじゃれつく。それをそれぞれ一撫でする。
ミュシャは、ポケモンバトルが強い。この学園の生徒会長ほどではないが。それでもバトルのセンスは目を見張るものがある。だからこのクラスではミュシャに表立って文句を言う者はいない。
(本当は友達欲しいのにな)
そういえばあの告白をしてきた男は『自分のバトルしている姿に惚れた』と言っていた。
そういう人間は少なくはなかった。恋人ではなく友人が欲しい身としては迷惑なことこの上ない。少なくともミュシャはそう言われると冷める性質だった。
「みんなー席に着け」
チャイムと同時に担任であるイグサがやってきた。
「隣の1-Aの転校生が騒がれれているが、うちにも新入生が来ている」
「嘘!? 知らなかったぁ!」
「男!? 女!?」
「はいはい、今呼ぶからね。アレイス!」
イグサの声と共に一人のクリーム色の髪の少女が教壇の横に並ぶ。片方ずつ宝石のような目の色が違う、綺麗な少女だった。
「自己紹介できるかな」
「アレイスです。初めまして。バトルを通して少しずつ皆のこと知っていけたらなって思っています……」
少し手振りを交え、無表情で云った後、彼女は礼をした。
「きれ~」
「どんな戦い方するんだろ」
自己紹介も皆の反応も一切拾わず、頬杖をついてぼうっとしているとイグサと目が合った。
「席はミュシャの隣な」
皆の空気が微妙なものになる。
しかしアレイスは気がつかなかったようで、はい、と答えミュシャの右隣りの空席に座った。視線を移すと相変らず無表情で『よろしく』と言われたので軽く手を振っておいた。
「えーと今日のカリキュラムは……」
イグサによるHRが始まり、いつものように授業は進んでいく。
★★★
「アレイスさんってカロスから来たんだ!?」
「うん、そう。でもいろんなところ転勤してるから……」
「へー、じゃあエンジュは!?」
「旅行でなら……」
昼の休み時間、アレイスは何人かの生徒に絡まれている。丁寧に答えているアレイスをぼんやり隣で眺めていると、困ったように幾度か視線を外にやっているのに気づいた。
「アレイス!」
ミュシャが声をかけると、アレイスが視線を向けてくる。その肩を叩き、彼女は言った。
「グラウンドに行かない?」
★★★
オレンジアカデミー、グラウンド。
「あの……」
「礼とかいらないから。あいつらも暫く経ったら飽きるよ!」
「そう、なんだ」
「あたしも転校してきたからさ! 新学期一ヶ月遅れで」
「そう……」
アレイスは俯いた後、顔を上げた。
「折角だから、バトル……」
「おうおう、ミュシャちゃんじゃあありませんか!」
アレイスの声を遮って、三人の男子生徒がアレイスの後ろから声をかけた。
「……誰、なに」
「あいつのこと振ったんだって? お前みたいなちんちくりん、身に余る光栄だぜ?」
「あっそ」
「可愛くねぇなぁ!」
「いや、待て。この結果は予想できてた」
「そうだよ、バトルで負けたら付き合わせるんだからさ」
「付き合……!?」
「なんでそうなるのよ!!」
自分勝手な言い分に足をどんと踏み鳴らす。
「あいつが未練たらたらで、俺たちがあいつのツレだからだよ!」
男子生徒たちは今にもポケモンを繰り出しそうだ。
「ツレ……ねぇ。まあいいわ、かかってらっしゃい!」
「ミュシャさん!?」
「アレイスは危ないから下がってて」
マメバッタのボールを構え、ミュシャはバトルコートに向かった。
数十分後。
「つええ……」
「もう戦えるポケモンいねぇよ……」
「くー! あいつが惚れるのもわかるぜ……」
男子生徒たちはもれなくマメバッタとミュシャのコンビにぼこぼこにされていた。
「気は済んだ? なら行くけど」
「すごい……」
「ぐぐ……なんだかかっこよくて俺も好きになっちゃいそうだぜ……」
「馬鹿! と、とりあえず行くぞ!!」
「覚えてろよー!!」
男子生徒たちはわあわあ叫びながらグラウンドを去って行った。
「なんなんだ」
「ミュシャさん、すごいね……」
「アレイス?」
「実はイグサ先生から聞かされてたの。不愛想だけど芯は強くて優しいって」
「そんなこと……ないよ」
「ううん! さっきも私助けてもらったし、『優しい』は少なくとも本当だよ……!」
「も、もー! わかったからそれ以上言わないで……!」
今の顔を赤くしているミュシャを見たらクラスメイトは目を飛び出させるかもしれない。
「それでね、あの……」
「?」
「久しぶりにおもしれーもん見た」
またアレイスの言葉は遮られた。見ると緑の髪の少年が木の影でシャワーズを撫でていた。どう見ても改造されている制服に、ミュシャはげ、と声を上げた。
「スター団じゃん。なんで学校来てんの?」
「そんなスター団だと来たらいけないみたいなー」
「スター団?」
アレイスの疑問符にはこう返す。
「不良の集まりだよ」
「不良……」
「行こ、アレイス。昼休み終わる」
「う、うん」
「おいおい、負けるのが怖いの?」
それはミュシャのバトルに関しては高すぎるプライドを挑発するには十分だった。
「わかったよ。構えな!」
「いや、戦闘がしたい訳じゃないんだ。俺じゃなくてあいつに勝てるかなって話」
「あいつ?」
「スマホロトム出して。この連絡先」
言われた通り、でんきカバーのスマホロトムを出すと、相手はイーブイカバーのスマホロトムを出してきた。意外と可愛いカバーを使うんだな。
ピピ、と音がした後連絡先が名前付きで表示される。
「『オウカ』……?」
「行ってみてよ。俺は全然強くないからさー、オウカからの連絡待ってるよー」
そう言い残し、シャワーズをボールに戻すと彼は手をひらひらとして去って行った。
「なんなんだあいつ……」
「ミュシャさん、昼休み……」
「あー、パスする」
「え!?」
驚くアレイスを後目にミュシャは笑顔でピースを作り言った。
「早く、このオウカって奴負かさないと!」
【250919】
数秒後、彼女が発した言葉は。
「ごめん、多分君の思う通りじゃないから無理」
だった。
★★★
「ミュシャ、あの子のこと振ったんだ」
「うん、脈がなかったから」
「勿体ないねぇ。ボーイッシュ寄りなあんたのこと好きになってくれる人、珍しいよ?」
「なんであたしの勿体ないとかをあんたが決めるのさ!」
それを聞いた男子同級生は途端に気まずそうに『ごめん』とだけ呟いて席に戻って行ってしまった。
『……感じ悪』
どこかから声が聞こえたが、『シッ、聞こえるよ!』と諫める声の後聞こえなくなってしまった。
(またやっちゃった)
彼も彼女らも、口に出すだけで、なにもしてこないと知っている。
何故なら、ミュシャのクラスの1-Bがバトル実技コースで、ミュシャはバトルが強いから。
オレンジアカデミー。それがミュシャの通う学園だ。
その中でも、総合コースより少し、いやかなりバトルに関して詳しく、比重を置いて勉強するのがバトル実技コースだった。
「メー……」
「パモ」
足元に手持ちのマメバッタとパモットがじゃれつく。それをそれぞれ一撫でする。
ミュシャは、ポケモンバトルが強い。この学園の生徒会長ほどではないが。それでもバトルのセンスは目を見張るものがある。だからこのクラスではミュシャに表立って文句を言う者はいない。
(本当は友達欲しいのにな)
そういえばあの告白をしてきた男は『自分のバトルしている姿に惚れた』と言っていた。
そういう人間は少なくはなかった。恋人ではなく友人が欲しい身としては迷惑なことこの上ない。少なくともミュシャはそう言われると冷める性質だった。
「みんなー席に着け」
チャイムと同時に担任であるイグサがやってきた。
「隣の1-Aの転校生が騒がれれているが、うちにも新入生が来ている」
「嘘!? 知らなかったぁ!」
「男!? 女!?」
「はいはい、今呼ぶからね。アレイス!」
イグサの声と共に一人のクリーム色の髪の少女が教壇の横に並ぶ。片方ずつ宝石のような目の色が違う、綺麗な少女だった。
「自己紹介できるかな」
「アレイスです。初めまして。バトルを通して少しずつ皆のこと知っていけたらなって思っています……」
少し手振りを交え、無表情で云った後、彼女は礼をした。
「きれ~」
「どんな戦い方するんだろ」
自己紹介も皆の反応も一切拾わず、頬杖をついてぼうっとしているとイグサと目が合った。
「席はミュシャの隣な」
皆の空気が微妙なものになる。
しかしアレイスは気がつかなかったようで、はい、と答えミュシャの右隣りの空席に座った。視線を移すと相変らず無表情で『よろしく』と言われたので軽く手を振っておいた。
「えーと今日のカリキュラムは……」
イグサによるHRが始まり、いつものように授業は進んでいく。
★★★
「アレイスさんってカロスから来たんだ!?」
「うん、そう。でもいろんなところ転勤してるから……」
「へー、じゃあエンジュは!?」
「旅行でなら……」
昼の休み時間、アレイスは何人かの生徒に絡まれている。丁寧に答えているアレイスをぼんやり隣で眺めていると、困ったように幾度か視線を外にやっているのに気づいた。
「アレイス!」
ミュシャが声をかけると、アレイスが視線を向けてくる。その肩を叩き、彼女は言った。
「グラウンドに行かない?」
★★★
オレンジアカデミー、グラウンド。
「あの……」
「礼とかいらないから。あいつらも暫く経ったら飽きるよ!」
「そう、なんだ」
「あたしも転校してきたからさ! 新学期一ヶ月遅れで」
「そう……」
アレイスは俯いた後、顔を上げた。
「折角だから、バトル……」
「おうおう、ミュシャちゃんじゃあありませんか!」
アレイスの声を遮って、三人の男子生徒がアレイスの後ろから声をかけた。
「……誰、なに」
「あいつのこと振ったんだって? お前みたいなちんちくりん、身に余る光栄だぜ?」
「あっそ」
「可愛くねぇなぁ!」
「いや、待て。この結果は予想できてた」
「そうだよ、バトルで負けたら付き合わせるんだからさ」
「付き合……!?」
「なんでそうなるのよ!!」
自分勝手な言い分に足をどんと踏み鳴らす。
「あいつが未練たらたらで、俺たちがあいつのツレだからだよ!」
男子生徒たちは今にもポケモンを繰り出しそうだ。
「ツレ……ねぇ。まあいいわ、かかってらっしゃい!」
「ミュシャさん!?」
「アレイスは危ないから下がってて」
マメバッタのボールを構え、ミュシャはバトルコートに向かった。
数十分後。
「つええ……」
「もう戦えるポケモンいねぇよ……」
「くー! あいつが惚れるのもわかるぜ……」
男子生徒たちはもれなくマメバッタとミュシャのコンビにぼこぼこにされていた。
「気は済んだ? なら行くけど」
「すごい……」
「ぐぐ……なんだかかっこよくて俺も好きになっちゃいそうだぜ……」
「馬鹿! と、とりあえず行くぞ!!」
「覚えてろよー!!」
男子生徒たちはわあわあ叫びながらグラウンドを去って行った。
「なんなんだ」
「ミュシャさん、すごいね……」
「アレイス?」
「実はイグサ先生から聞かされてたの。不愛想だけど芯は強くて優しいって」
「そんなこと……ないよ」
「ううん! さっきも私助けてもらったし、『優しい』は少なくとも本当だよ……!」
「も、もー! わかったからそれ以上言わないで……!」
今の顔を赤くしているミュシャを見たらクラスメイトは目を飛び出させるかもしれない。
「それでね、あの……」
「?」
「久しぶりにおもしれーもん見た」
またアレイスの言葉は遮られた。見ると緑の髪の少年が木の影でシャワーズを撫でていた。どう見ても改造されている制服に、ミュシャはげ、と声を上げた。
「スター団じゃん。なんで学校来てんの?」
「そんなスター団だと来たらいけないみたいなー」
「スター団?」
アレイスの疑問符にはこう返す。
「不良の集まりだよ」
「不良……」
「行こ、アレイス。昼休み終わる」
「う、うん」
「おいおい、負けるのが怖いの?」
それはミュシャのバトルに関しては高すぎるプライドを挑発するには十分だった。
「わかったよ。構えな!」
「いや、戦闘がしたい訳じゃないんだ。俺じゃなくてあいつに勝てるかなって話」
「あいつ?」
「スマホロトム出して。この連絡先」
言われた通り、でんきカバーのスマホロトムを出すと、相手はイーブイカバーのスマホロトムを出してきた。意外と可愛いカバーを使うんだな。
ピピ、と音がした後連絡先が名前付きで表示される。
「『オウカ』……?」
「行ってみてよ。俺は全然強くないからさー、オウカからの連絡待ってるよー」
そう言い残し、シャワーズをボールに戻すと彼は手をひらひらとして去って行った。
「なんなんだあいつ……」
「ミュシャさん、昼休み……」
「あー、パスする」
「え!?」
驚くアレイスを後目にミュシャは笑顔でピースを作り言った。
「早く、このオウカって奴負かさないと!」
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