黒の時代
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「さてと、死体を調べてみよう。何か出るかもしれない」
そして太宰は何事もなかったかのように
くるりと死体の方へ方向を変えた。
『………龍くん、大丈夫?』
沙羅は芥川のそばに寄って
体を支えながら言葉をかける
「はい……先程は_______』
だが、
返答しようと口を開いた芥川の言葉は、
直ぐに太宰に遮られた
「沙羅、君も手伝ってくれるかい?」
『分かった、今行く』
太宰に呼ばれた沙羅は
その場に立ち上がると
『……本当に困った時は、私を頼っていいからね』
小声で芥川にそう囁いてから
太宰の元へ向かった
「あの、死体の何をお調べしましょう」
黒服の1人の男がそう太宰に問う
「全部だよ。靴底、ポケットの屑、服の付着物、すべてが手懸かりだ。……全く、うちの部下は揃って敵を嬲り殺すだけがマフィアだと思ってる。この調子だと、織田作1人で解決してしまいそうだ」
無表情な太宰だが、
微かな怒りをひしひしと感じさせる
「その男なら、私も知っています。マフィア内にあって、人を殺す度胸のない男。…とても、太宰さんと沙羅さんと釣り合うような人間とは思えません」
「君の間違いは二つ。釣り合う釣り合わないに度胸は関係ない。もう一つは忠告だ。織田作は怒らせない方がいいよ、絶対にね。もし彼が心の底から怒ったなら、この部屋にいる全員が銃を抜く間もなく殺されるよ。本気の織田作は、どんなポートマフィアより恐ろしい。芥川君、君なんか百年経っても織田作には勝てないよ」
「……莫迦な…有り得ない。太宰さん、貴方は僕を……」
芥川は言葉を絞り出すように
太宰に向けた
それを太宰は
聞こえていないかのように無視して
死体を調べ始めた。
「さあ仕事に戻るよ。敵も面倒だけど、早く抗争を片付けないと異能特務課が出張ってきてさらに厄介なことになる」
『全く、人使いが荒いんだから……。』
はぁ、とため息をつきながら
沙羅も太宰の隣で
死体を覗き込んだ
しばらく死体を調べていると
『………ふぁ〜あ』
と沙羅が小さくあくびをした。
それを見た太宰は
死体から沙羅に視線を移す
「沙羅…」
『……あっごめん、今仕事中なのに』
「…それは別に良いよ。そうじゃなくて…沙羅、最近ちゃんと休んでるかい?」
『うん?休んでるよ』
沙羅は先程のあくびを誤魔化すように
きょとんと首を傾げてそう答えた
「平均睡眠時間は?」
太宰にそう訊かれて、
答えるまでに間ができる
『………………7時間。』
_______本当は3時間くらいしか寝てないけど
と沙羅は心の中で付け足した
「……はぁ、どうせ最近全然眠れてないんだろう?沙羅の嘘はすぐに分かる」
でもそんな嘘を太宰が見抜けない筈もなく
沙羅は誤魔化すのを諦める事にした
『……だって…私、もっと強くならないと…』
「沙羅はもう十分強いよ。…その心意気は大事だけれど、それでいざという時に倒れてちゃあ意味がないだろう?」
『………。』
沙羅は完全に図星を
突かれてしまって返す言葉が出てこない。
強くなる為に努力する事は大事だけど、
倒れてたら意味がない、
そんな事、とっくに分かっていることだ
「偶にはちゃんと休みなよ、沙羅」
下を向いてしまった沙羅の頭に
太宰はポンッと手を乗せた
先程まで銃を
握っていた人間の表情とは思えない
ましてや太宰は沙羅に銃を向けていた
それでも今は、
沙羅だけに向ける、
優しい表情だった
その行動に沙羅は思わず顔を上げる
もしこれがヨコハマの海の側で、
夜景の見える場所で行われている会話なら
どれ程ロマンチックなのだろうか
でも、
私達はポートマフィア
光なんて、知らない。
死体の側で行われたそんな2人の会話を、
周りの者達は、静かに見ていた