私がもっと、強かったら
名前変換
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少し走ると直ぐに
ミミックの拠点まで辿り着いた
「…ここか」
その時、乾いた銃声の音が
建物の中から聞こえて
太宰と沙羅は
周りに倒れる幾つもの死体も気にせず
全速力で建物の中に駆け込んだ
その銃声の音は、
織田作とジイドの発砲した銃の音で
バタッと人が倒れる音が、
2回、響いた
「『織田作っ!!』」
太宰と沙羅は同時に名前を呼んだ。
コートを脱ぎ捨て、
大切な友人に駆け寄っていく
倒れた織田作の背中を支えれば、
支えた手には真っ赤な織田作の血があった
銃を受けて出来た傷から溢れる大量の血、
それを見ただけでもう、
織田作は助からないだろうと
いうことが理解できてしまう
「莫迦だよ織田作っ……君は大莫迦だ…あんな奴に付き合って……」
太宰は織田作の血のついた自身の手を
力強く握りしめながらそう言った
『織田作っ…嫌だ…そんなの嫌だよ……!!あと少しで……あと二週間もあれば、復元の、治癒の魔法式が完成する所だった………!私がもっと、強かったら、助けられたのに……』
沙羅はずっと前から、
復元能力の魔法式を研究し続けていた
それが完成すればきっといつか役に立つ
そう思って、ずっと、
でもその能力を使う為の式は
そう簡単には生み出せなくて、
やっとあと少しというところまできていた
だけど、一歩、遅かった…。
「太宰……沙羅…、お前らに、言っておきたい事がある…」
「駄目だ、やめてくれ。まだ助かるかもしれない、いや、きっと助かる。だからそんな風に______」
「聞け」
「太宰、お前は云ったな。“暴力と流血の世界にいれば、生きる理由が見つかるかもしれない”と……」
「ああ、言った。言ったがそんな事今は________」
太宰の言葉に被せるように、
織田作が声を絞り出すように、
「見つからないよ」
と言った。
その言葉に太宰は大きく目を見開いた
「自分でも判っている筈だ。人を殺す側だろうと救う側だろうと、お前の予測を超えるものは現れない。お前の孤独を埋めるものは、何処にもない。お前は、永遠に闇の中を彷徨う」
「織田作……私はどうすればいい?」
「太宰…沙羅…」
静かに2人の名前を呼ぶと
太宰と沙羅は
黙って言葉の続きを待つ、
「人を救う側になれ」
そして、織田作の言葉は、
2人の耳によく響いた
『人を、救う……』
「どちらも同じなら、良い人間になれ、弱者を救い、孤児を守れ。正義も悪もお前らには大差ないだろうが…その方が、幾分か素敵だ」
「何故判る?」
「判るさ。誰よりも判る。……俺は、お前らの友達だからな」
“友達”
その一言は、2人の心に
強く刺さった
「…判った。そうしよう」
「”人は自分を救済する為に存在する”か……確かに、その通り……だ……」
織田作が触れた太宰の頬から、
解けた包帯が地面へ舞った
『織田作…………』
涙を堪えるように震えた声で
沙羅が最後に名前を呼ぶと
織田作は、静かに息を引き取った