無防備すぎるお前が悪い
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『へ……?』
多分「は?」と「え?」が混ざって
「へ?」になったのだろう言葉を発して
思わず私はぽかんと口を開けた
“……テメェを俺に惚れさせる”
え……??
え???
待って待って、意味がわからない。
私は思考停止状態で固まったままだ
そんな私が言葉の意味を
理解するのを待つように目の前の
爆豪くんも黙ってじっと私を見ている。
私の自意識過剰とかじゃなければだけど……だって、それって…
出会ってすぐとはいえ
爆豪くんいつも怒鳴ってるし
口は悪いしちょっと怖いとこあるけど
チャラいって感じではないし
嘘でこういう事したり
言ったりするような人とは思えない。
『それってつまり…………』
私が疑問の答えを出そうとした時、
頭の後ろに手を回され爆豪くんの胸に
頭をうずめるような形で抱きしめられる。
どう反応すればいいのかわからず
私の両手は行き場を無くしている
と同時にこの静かな空間で
抱きしめられているせいで
爆豪くんの心臓の音がはっきりと聞こえる
(爆豪くんの心臓の音…私と同じくらい速い…。)
「…流石にもうどういう意味か分かったよなァ?」
『えっと…あの…はいっ…』
抱きしめられたまま耳元でそう言われ、
私はしどろもどろに答える。
−爆豪side−
言っちまった。
我ながら結構すごいことを。
こんな事を言ってしまう程
俺はあくあに惹かれてるんだと
再確認させられて、
自分の顔が熱くなっていくのを感じた。
轟と仲良くなっている
あくあを見て焦ってた
油断してると知らないうちに
あいつのものになっちまうんじゃ無いかって
あくあも突然
こんな事言われて困っているとは思う。
さっきからずっと固まったままなあくあは
“どうしよう”と言っているようなものである
でもそんなあくあの顔を見ると
無言のままさっきよりも頬を赤く染めている
少なくとも
拒否はされていないという事は分かった。
「じゃ、覚悟しとけよ。あくあ」
ニヤリと悪戯な笑みをあくあに向けてから
俺は背中に回していた手を離し、
その場から立ち去ろうとする。
『え、待って…爆豪くん…!』
「爆豪くんじゃなくて、勝己って呼べ」
『じゃ、じゃあ勝己くん…?』
「上等だ」
引き止めようとしてきたあくあをよそに
俺は早足でその場を立ち去る。
かすかに赤くなっている自分の顔
それをあくあに見られたくなかった。
−あくあside−
爆豪くん改め勝己くんが立ち去った後
私はへなへなと床に座り込んだ
(え…勝己くんが、私を…?)
色々起こりすぎて頭が追いつかない
ここが一応校内の廊下だということも
忘れて私は床に座り込んだままだ。
だって、初めて会ったの昨日だよ…?
それに…初対面あれだし…
なんかめっちゃ怒鳴ってきたし…
どっちかといえば嫌われてると思ってた
だからこそ、意外すぎて驚きを隠せない。
「あくあちゃん…どうしたの?…大丈夫?」
『出久くん…?!あ、えっと…これは、その…』
横から出久くんの声がしてハッと我に帰る
人気のない廊下の曲がり角から
出久くんがひょこっと現れた
この状況をどう説明しようか
こんな場所で一人で座り込んでるとか
誰がどう見てもおかしいはずだ。
「さっきの騒ぎではぐれた後教室に戻って来てなかったから…無事でよかった。ほら」
『ありがと…』
さっきの出来事を話すわけにもいかず
必死に誤魔化そうとする私に
何があったのかは何も聞かず、
立ち上がりやすいように手を差し伸べてくれた
(出久くんてばこういう時も優しいんだよなぁ…)
出久くんは人の感情を
読み取るのが得意だと思う
去年初めて出会ってから
ニコニコ笑っているつもりでも
悩み事がある時は気づかれちゃうし、
私が言いたくない事に関しては
何も聞かないでくれる
「もうすぐ午後の授業始まっちゃうし、教室戻ろっか!」
『うん!』
私は少し前を歩く出久くんを追いかける
この時の私はさっきの勝己くんとの会話を
出久くんに聞かれていた事なんて
知る由もなかった。
−緑谷side−
警報がなってからの騒動が落ち着いた後
麗日さんと飯田くんと合流したものの
あくあちゃんの姿が見えなかった
教室にもいなかったから
もう一度探しに来たのだが…
『爆豪くん…待っ…』
人気のない廊下の隅から微かに聞こえた声は
確かにあくあちゃんの声だった。
そして彼女が呼んだ名前は“爆豪くん”
つまり今一緒にいるのは
かっちゃんということだ
(何でこんな場所であくあちゃんとかっちゃんが一緒に…?)
2人の姿は見えないけれど
会話は聞こえる距離で僕は立ち止まる
『っちょ、…爆豪くん…!なんで、今キス…』
(………?!え、今…何て…)
“キス…???”
聞き間違いじゃない、
あくあちゃんは
“キス”と、今そう言った。
かっちゃんが……
あくあちゃんに、
キスしたってこと…?
盗み聞きは良くない事なんて分かってるけど
その言葉を聞いてから僕の足は
その場から立ち去ろうとはしなかった。
「……あくあ。」
『はいっ…!?』
「…………テメェを俺に惚れさせる」
『へ……?』
(………え?)
それはつまり…かっちゃんが
あくあちゃんの事を…
好きって事……?
訳がわからない
あくあちゃんの反応からして
あくあちゃんはもっと
訳がわからないのだと思う
昔からかっちゃんは冗談で
そういうこと言う奴じゃない
でも、恋愛なんて興味なさそうだったし、
意外すぎる。
会話が終わったかと思うと
かっちゃんはそのまま
反対側から立ち去っていった。
(聞いてたのバレなくて良かった…)
僕はたった今この場に来たかのように
振る舞いながらあくあちゃんに話しかける
「あくあちゃん…どうしたの?大丈夫?」
でも、なんだろう、このモヤモヤ感
今の僕には、
この感情の正体は分からなかった。