無防備すぎるお前が悪い
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「でも、お前にとっては大きな一歩だろ」
そう言った消くんは
私の頭を軽く撫でてくれた。
あぁこの感じ、懐かしい。
こんな私を引き取ってくれて、
悩みを聞いてくれて、
私にとって唯一の理解者だった。
一人暮らしに切り替える前は
今まで一緒に暮らしてきて
私の中で消くんは、
お兄ちゃんみたいな、そんな存在だ
(昔はよくこうやって撫でてくれたなぁ…)
「どうした?そんなにニコニコして」
『えっ?私顔に出てた…?!』
久しぶりのこの感じが嬉しくて
つい顔に出てしまったみたいだ
自分で鏡を見なくても
口角が上がってるのが分かる。
『いや…この感じ久しぶりだなぁって思ったらちょっと嬉しくて…!』
「…なんかあった時はすぐ言えよ。いつでもこうしてやるから」
私が頭を撫でられるのが好きなことは
どうやらお見通しなようだ
今までもそうだった、
消くんに隠し事をした時も
すぐに見破られてしまう。
(消くんてばなんでもお見通しだよね)
『ありがと……お兄ーちゃん』
私は悪戯っぽく笑うと
ノリでお兄ちゃんと呼んでみた。
「……」
(あれ、私何かまずいこと言った?!)
消くんはそのまま固まったままだ
ドライアイなはずなのに
珍しく瞬きが全くない。
『あ、あの…消くん?』
「あ、いや、なんでもない。ほら、もう教室に戻れ」
『うん…??分かった。じゃ、また後でねー!』
よく分からないが用は終わった
みたいなので私は教室に向かった。
(結局何の用だったんだろ…??)
教室に入ると一瞬周りからすごく視線を
感じた気がするのは気のせいだろうか
なんだろう、
直接ガン見されてるわけじゃ無いのに
すごく視線を感じる。
(いや、ただの自意識過剰か)
この時勝手に答えを出して
一件落着した私は本当に視線が
向けられていたことに気付いていなかった
−相澤side−
自分でも生徒にこんなに
優しくする日が来るとは思っていなかった。
生徒と言ってもあくあとは
付き合いが長いけど…
“何かあったらすぐ言えよ、いつでもこうしてやるから”
こんな言葉が自分の口から
出てくるのも衝撃だ。
あくあを引き取ったのは
10年前のあの日。
親も友達もいなくなって
行き場を無くしていた所を俺が引き取った
正直初めは同情というかなんというか、
他にあくあを
引き取ってくれそうな人はいなかったし、
むしろ皆それを嫌がった。
個性がいつ暴走するかもわからない
そんな危険な子を家に置きたく無い、と。
そう言われて1人でうずくまっている
彼女をみているのが辛かった
だからあの時手を差し伸べた。
俺の個性なら暴走した時に止めてやれるし
あいつもちゃんと自分の立場を
理解していたからこそ
文句ひとつ言わなかったのだろう。
とりあえず住む家と
食事と生活に困らないようにしてやろう
それだけだった
なのに俺はいつのまにか
あくあのことを本当の
妹のように見るようになっていた
あくあが悩んでいたら
解決してやりたいし、
支えになってやりたい
そう思う程に。
「……がんばれよ、あくあ」
廊下を歩くあくあの背中に向けて、
小さくそう呟いた。
−緑谷side−
(あくあちゃん、相澤先生に呼ばれたまま戻ってこないなぁ)
クラスメイトと話しながら
そんな事を考えていると
峰田くんが大声で話しながら
教室に入ってきた
「おいお前ら!おいら見ちまったんだ…!!」
「どうしたんだよそんなに慌てて」
そう言ってうずうずと落ち着きのない
峰田くんを切島くんがなだめる
「たまたま声が聞こえたから行ってみたら見ちまったんだ……相澤先生が海凪の頭を撫でてるところを!!」
「「えええ??!?」」
(え…?相澤先生が…あくあちゃんの頭を…?え??)
訳が分からない。
のは僕だけじゃ無いみたいで
クラスが一気に騒がしくなる。
「え?なになにどーゆーこと?!」
「禁断の…恋っ?!」
「あの2人そういう感じなの??」
相澤先生とあくあちゃんが…?
でも…だって、教師と生徒だよ?
だが、保健室で話してた時、
あくあちゃんの過去を知るのは
相澤先生とリカバリーガールだと
言っていたことを思い出す
どういう関係かはわからないにしろ
何かしら繋がりはありそうだ。
「峰田それ本当?」
「本当だって!あの2人きっとそういう関係なんだよ…!!」
「でもあの2人妙に仲良いような感じはあるよね」
そういう関係と決めつけるのは
早い気がするけど、
たしかに仲良いなとは思っていた。
あくあちゃんは相澤先生にタメ口だし
たまに下の名前で
呼びかけていたことがあった気がする。
「チッ…くだんねぇ。教師と生徒同士なんてあるわけねぇだろ」
騒がしい教室内に
かっちゃんの低い声が響いた
いつものように
怒鳴ってくるわけでもなく
静かにそう言った。
これはこれで逆に怖い
多分今かっちゃんは
イライラしているんだろう。
「え…何爆豪もしかして嫉妬「んなわけねぇだろ黙れや!!」
「なーんか怪しいぞ…!!」
「もっかい言ったらぶっ飛ばす」
かっちゃんが珍しく
少し焦っていたような…?
それってまさか…。
いや、あのかっちゃんだぞ…?
みんなの頭の中に一つの疑惑が
浮かんだところであくあちゃんが
教室に戻ってきたのでその話は中断された