無防備すぎるお前が悪い
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『って、焦凍くん大丈夫?!ごめんわざとじゃなくて、無意識で…』
呼吸を落ち着かせた私は勢いよく水を
ぶつけてしまった焦凍くんの方へと目線を移す
わざとじゃないとはいえ折角焦凍くんも
雨に濡れた体が乾いてきていたというのに
また水で濡らしてしまった。
「ふっ…お前、いくらなんでも威力強すぎだろ」
ふっと笑った焦凍くんは
自分の濡れた前髪をかき分けて、
私の方を見てそう言った。
(焦凍くん、今、初めて笑った…!?)
たしかに今、彼は笑った。
学校にいるときも2人で話してた時も
全く笑わなかった焦凍くんが。
焦凍くんは外見も中身もイケメンだし、
とっても優しい
けど、表情はどこか氷みたいな、
冷たい目をしていた。
そんな彼が、笑ってくれた
その表情を見て私はつい見惚れてしまう
俗に言うギャップ萌えとは
こういうことなのだろうか。
(イケメンの不意打ちの笑顔…破壊力すご…)
「さっき、突然襲ってわりぃ…」
『う、うん…ちょっとびっくりしちゃった…。私こそ水ぶっかけちゃってごめん』
「いや、あそこで水ぶっかけてくれて助かったよ。…あのままだったら抑えられたかわかんねぇ」
正直私も個性が発動してくれて
助かったかもしれない。
あのままだったら私…
なんとも言えない空気感になったものだから
空気を変えようとその場から立ち上がる。
『…と、とにかく!!このままじゃ今度こそ風引いちゃうから…お風呂入ってきていいよ?』
「……あぁ、そうだな。」
焦凍くんがお風呂場に向かったのを確認すると
私はもう一度ソファーに座り込む。
(あぁぁぁびっくりした!!!ほんとに…)
一度冷静になったものの、
さっきまでの事を思い出してしまって
また顔が赤くなる。
でも、焦凍くんはなんで
あんなことしてきたんだろう。
考えてみたけど考えれば考えるほどさっきの事を思い出してしまうのでやっぱりやめた。
『だめだ…一回忘れよ…』
そのままちょっとソファーに横になると
だんだん眠気が押し寄せてきて
私はそのまま眠りについた。
−轟side−
(やっちまった…)
気づいた時にはあくあを
押し倒してしまっていて、
自分でも自分の行動に驚いた。
あんなに余裕なくなるとは…。
でも、あくあもあくあで
途中から抵抗してなかったし、
あんな表情間近でされたらやめる方が無理だろ。
俺はもうあくあに惹かれている
だから、今一緒にいるのが他の奴なら
あんな事にはなっていない
あの時あくあの個性が発動しなかったら、
あくあが抵抗しなかったら、
俺はあそこで止まれていただろうか。
「あくあ、お風呂ありが……って、寝てるのか…?」
手早くお風呂を済ませて戻ってくると
あくあがソファーに横になったまま眠っていた
「おい、そんなとこで寝るな。ちゃんとベットで寝ろよ」
トントンと軽く肩を叩いてみるが起きる気配はない
スースーと静かに寝息をたてながら眠っている。
(さっきあんなことがあったのに、
警戒心のかけらもないな…)
さっきのことがあった後にこんな
無防備な格好でリラックスした状態で
ソファーで寝るとか…。
(これ、きっと今ここにいるのが俺じゃなくても同じ事してるよな…)
やっぱり逆に色々心配になる。
眠っているあくあの表情は柔らかくて、
今まで初対面からあくあには
“綺麗”という言葉が似合うと思っていたけど
案外“可愛い”系なのかもしれない。
あくあが起きる気配は全くなさそうだったので
俺は両手であくあを抱き抱えて
ベッドに寝かせてやった。
−あくあside−
(………朝…?)
目が覚めるとカーテンから
明るい光が差し込んできていて、
夜が明けていることを知らせていた。
昨日私はいつのまにか寝てしまったらしい。
(あれ?でも私昨日ベッドで寝たっけ…?)
私の記憶だと、
ソファーでそのまま寝てしまった気がする。
重たい瞼を開きながら、
なんだかいつもより狭いような
気がする布団から顔を出す。
(わっ…?!)
ベッドが狭い理由が分かった。
顔を出したすぐそばにある焦凍くんの顔。
(ん…?一緒に寝てる…?!?)
なんで私と焦凍くんが
私のベッドで一緒に寝ているのだろうか。
なんなら私はベッドに入った記憶がない。
昨日は突然のことだったから
よく見てなかったけど…
間近で見てもイケメンだなぁ…。
さすが美形男子。
髪の毛は女子の私でも羨ましいくらい
サラサラしてるし…
無意識に手を伸ばし、
焦凍くんの前髪に触れてみる。
「……ん…おはよう…あくあ」
『お、おはようっ焦凍くん』
ちょっと動けばキスが出来てしまいそうな距離
(これは…朝から心臓に悪いです…)
『あの、昨日…』
「ソファーでそのまま寝てたからベッドに運んだ」
『ええ、なんかごめんありがとう。でも、その後わざわざここにいなくても家に帰っちゃってよかったのに』
「女子一人暮らしの家の鍵開けっぱなしで出てけねぇよ。どっちにしろ雨もすごかったし」
『た、たしかに…』
(私が寝ちゃったら家の鍵閉めれないもんな…、そこまで考えてくれたのか)
『…えっと、今何時かなっ?』
この距離で会話するのが
急に恥ずかしくなってきた私は
勢いよく布団を出て、手探りで時計を探す。
(あった…!)
「「あ」」
現在時刻を目にすると
私と焦凍くんの声が重なった。
あと30分程で予鈴の時間。
ここから普通に学校へ向かうと25分。
つまりはピンチなのである。
大急ぎで学校の支度をして
私と焦凍くんはダッシュで学校に向かった。