「今日の練習はこれで終わりだ。自主練してもいいが、あまり遅くまでやらないように」

「「おーす！」」





10月に入り、春高予選前の大事な今、烏野・白鳥沢・青葉城西・伊達工業の4校で合同合宿が行われており、初日の練習を終え、各自自主練に入る



会場となっている白鳥沢学園はさすが強豪校、合宿所の設備も整っておりマネージャーとしては非常に羨ましい環境である





自主練メンバーのドリンクを用意するため体育館を出ようとすると
「あ、なまえちゃーん！今からドリンク作るよね？俺たちの分もお願いしたいな〜なんて」
ウィンクしながら頼んでくる及川さんに若干苛つくも、青城にはマネージャーがいないため仕方なく引き受ける



『高つきますからねー』
「体で払うね？」
『…』
「冗談だから！そんな目で見ないでっ！」


岩泉さん曰く、ゴミを見るような目をしていたらしい



近くにいたツッキーを誘い（めっちゃ嫌そうな顔された）、一緒にロビーの水道に向かう途中、突然辺りが真っ暗になる



『ギャッ！…停電？…ツッキー大丈夫？』

隣にいるはずなのに返事が無い



え、待って、どうゆうこと？停電にしては暗すぎひん？
ちょ、冷静になれ自分。
こうゆう場合はどうするのが正解や…動かん方がええよな…
確かポッケに携帯入れとったはず


携帯を取り出した瞬間、一瞬白い光に包まれた
あまりの眩しさに目を閉じ、恐る恐る開けてみると、先程までロビーにいたはずがなぜか体育館のど真ん中に立っていた



『…は？』

照明が付いておらず、外の月明かりのみで照らされているため薄暗いが、ここが白鳥沢の体育館では無いことははっきりわかる




なんやこれ、ドッキリか？にしてはタチ悪すぎひん？
他のみんなどこ行ったん…



近くに倒れている人を見つけ駆け寄る


『大丈夫ですか？』
「ん…」
『川西君…よな？』
顔を確認し、見知った人であることに安心する


「…みょうじさん？え、なにここ」
『わからへん。急に暗なったかと思ったら明るなってここにおってん』
「他の人は？」


辺りを見回し、何人か倒れているのが確認でき、手分けして声をかけ、みんなで集まる




他にいたのは及川さん、岩泉さん、青根君


「全く状況が飲み込めないんだけど…」
「みんなそうだろ。取り敢えず状況確認するか」



岩泉さんの提案でそれぞれがこうなる前の状況を説明する


及川さん、岩泉さんは国見君と話をしていたらしい
青根君はにろと黄金川君と自主練をしていて、川西君は白布君と食堂に向かっていたと…


みんなバラバラやん
他には誰がここに飛ばされたのか見当もつかず…

一緒にいた人もここに飛ばされた可能性が高いため、体育館から出てみることになり、岩泉さんが引き戸の扉に手をかけるもビクともしない
鍵掛かってる？


パワー5リラの岩ちゃんでも開かないなんて…と驚く及川さんに無言で蹴りを入れる岩泉さん



『ってかこの体育館おかしない？ですか？』
「なにがだ？」
『だって普通体育館って出入り口は最低でも2つはありますよね？ここ1つしかあらへん…』
「「…」」
「…まぁ、この状況自体が非現実的だからな」
「変なフラグ立てるのはやめよ？」
『ウッス』
「取り敢えず鍵…探します？」



川西君の提案にみんな賛成し、体育館内を手分けして探すことに



うちの第2体育館くらいの広さやし、すぐ見つかるやろ！なんて思っていた数分前の自分を殴ってやりたい…
全っ然見つからへん！



あれから30分近く経つも鍵は見つからず途方に暮れる
ちなみに電気は通って無いのか、スイッチを押しても照明は付かなかった




あと探してないところってどこや…
ふと上を見上げると、月明かりの反射で照明カバーに何か挟まっているのが見えた




『なぁ、あれって鍵やない？あの真ん中の照明カバーんとこ…』

近くにいた川西君に声をかけ、一緒に見てもらうとその声に他の人も反応し、全員が注目する



「あんな高い所どうやって取るんだよ」
『ボールかなんかぶつけたら落ちるんちゃう？』



確か器具庫にバレーボールあったよな？
走って取りに行き、天井向かって思いっきり投げるも全く届かず…



「なまえちゃん、全然届いてないよー」
笑ってる及川さんを睨みつけ、無言でボールを青根君に渡す
びっくりした様子だったが、察してくれて代わりにボールを投げてもらうと1発で命中し、見事鍵が落ちてきた

思わずハイタッチを求めるもなかなか手を出してくれず、少し圧をかけると渋々手を出してくれた















（ウェーイ！）
（…）
（さすが青根君、頼りになるねぇ）
（…）
（あー、確かに岩泉さんも力あるもんなぁ）
（…）
（わかる！でも青根君も負けてないと思うで）
（待って？なんで会話成り立ってるの？）