鬼滅の刃
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「えーと不死川さんの道場こっちだっけ?」
「違ウ!!ソコノ角ヲ右ダ!!鳥頭!!」
「ああ!あそこを右ね」
炭治郎と鎹鴉の微笑ましいやり取りに、○○はにこりと笑う。
そこで、○○は見知った気配を感じて前を向く。
と同時に。
ボロボロになって涙を流す善逸が一瞬で目の前に現れた。
『ぅわっ!?』
「うわあああああ!!!!ああああ善逸!!」
○○に抱きつき、しなだれかかって押し倒した善逸はその体に必死にしがみつく。
炭治郎も○○も、突然の善逸の奇行に不思議そうに顔を見合わせる。
「ににににに逃がしてくれエエエ○○炭治郎何卒!!!」
『逃げる?』
「何から?」
「もう足が立たないんだ無理なんよ!!ややややっとここまで逃げたんだ!!塀を這って逃げてきたんだ気配を消してヤモリのように!!!命にかかわる殺されるっ!!!」
「あっ」
○○はアビャーーッと汚く泣く善逸の頭をよしよしと撫でて、炭治郎の声に視線を前に移した。
そこには、隊服の前を開けて立派な筋肉が見えている傷痕だらけの男がおり、善逸の頭をガシッと掴んだ。
溢れ出る殺気に善逸と同様、○○も縮こまる。
「選べェ。訓練に戻るか俺に殺されるかァ」
「ギャア゙ア゙ア゙ア゙ア゙勘弁してェェエェ!!ギャッ…ギャモッギャアアアンヌ!!!」
耳元で絶叫され顔を顰める○○を見て、不死川は更に血管を浮かべて善逸に手刀を入れた。
「うるさい!女子に縋るな女々しい!!」
「げうっ!!」『えっ』
○○はやはり女子だと間違われた事にショックを受けたが、今の不死川に訂正するのは流石にできなかった。
「運べ」
「あ、はいっ」
炭治郎は、不死川に首根っこを捕まれ死にかけの魚のような顔で気絶した善逸を背負った。
「大丈夫かィ」
『あ、はいっありがとうございます…』
差し出された手を取って、○○は立ち上がる。
離れていった固くざらついた手に、なんとなく鋼鐵塚を思い出した。
『初めまして風柱様、氷鉋○○といいます。今日からよろしくお願いします!あと私男です』
○○は歩きだした不死川の後ろについてそう言うと、不死川は律儀にも立ち止まって振り返った。
実際は男だという言葉に驚いて止まっただけである。
「おう…悪ィ」
『いっいえ、慣れていますので』
素直に謝罪の言葉を述べる不死川に驚き、思わず言葉に詰まった○○は恥から頬を染めた。
その愛らしい姿が不死川の胸を撃ち抜く。
固まった不死川を不思議に思いながらも、炭治郎が口を開いた。
「ご無沙汰しています、今日から訓練に参加させてもらいます。よろしくお願いします!」
心底嫌いな相手から話しかけられ、不死川はようやく動き出し、背を向けて歩き出した。
「調子乗んなよォ俺はテメェを認めてねえからなァ」
「全然大丈夫です!俺も貴方を認めてないので!禰豆子刺したんで!」
キリッとした顔で言い切って善逸を背負ったまま不死川の先を行く炭治郎に、○○は冷や汗をかく。
「いい度胸だ……」
ちらりと様子を伺うと、次々と不死川の顔に血管が浮かぶのを見て○○は青ざめた。
『風柱様申し訳ありません!!炭治郎が失礼な態度を!』
不死川は頭を下げた○○を振り返り、傷だらけの腕を小さな頭に伸ばした。
殴られる覚悟をした○○に訪れたのはポフッと柔らかい衝撃。
「気にすんなァ。テメェが悪ィ訳じゃねえだろォ…硬い呼び方すんなァ」
意外と優しい不死川に、○○は目の玉が飛び出しそうなほど驚いた。
失礼である。
頭を撫でる手が慣れている事に、面倒見のいい人だと理解し、○○は頭を上げた。
『すみません、ありがとうございます…不死川さん』
気張っていた力を抜くように柔らかく笑う○○を見て、不死川も小さく微笑んだ。
不死川の訓練は善逸がああなるのもわかるキツさだった。
とにかく不死川に斬りかかっていくという単純な打ち込み稽古だったが、反吐をぶちまけて失神するまでが一区切りで、それまで休憩なしだった。
善逸は目覚めると、親の仇の如く炭冶郎を責めた。
泣きながら炭冶郎を殴りまくる善逸を、流石の○○も止める気にはならなかった。
不死川は特に炭冶郎への当たりが強く、一瞬でも気を抜いたら大怪我をするほどの打撃であった。
逆に○○には他より甘く、軽く刀で叩く程度で終わった。
その代わり、倍の筋トレと走り込みをさせて○○は腕と足に力が入らなくなった。
初日でボコボコのゲロまみれ。
流石に炭冶郎も○○も心が折れそうになった。
「○○…死ぬ前に、俺に接吻してくれないか…」
『善逸はっまだ死なないから、大丈夫だよ…』
善逸と○○は地べたに座って、息も絶え絶えに話していた。
○○は一人走り続けたせいか足が鉛のように重く、動く気にならなかった。
すると、突然すぐ目の前にある部屋から、障子を薙ぎ倒しながら玄弥を抱えた炭冶郎が縁側に倒れ込んできた。
『ええっ!!炭冶郎!?』
「うわああああ!!戻ってきた戻ってきた!血も涙もない男が!伏せろ!!失神したふりだ!!えっ炭冶郎?」
不死川だと思い地面に倒れ伏せた善逸を、○○は叱る気にならなかった。
善逸の気持ちはわかる。とても。
「やめてください!」
畳を踏みしきる音が聞こえて炭冶郎が叫ぶ。
炭冶郎が叫ぶ先からは、禍々しい空気を背負った不死川が殺気を放って現れた。
「どういうつもりですか!!玄弥を殺す気ですか!」
「殺しゃしねえよォ殺すのは簡単だが隊律違反だしよォ」
縁側から庭に下りてきた不死川の顔は、それはもう極悪非道であった。
関係のない善逸の目に涙が浮かぶ。
「再起不能にすんだよォただしなァ、今すぐ鬼殺隊辞めるなら許してやる」
「ふざけんな!!あなたにそこまでする権利ないだろ!辞めるのを強要するな!!」
ブチ切れる不死川へ同じく切れて言い返した炭冶郎に、善逸も○○も目を剥いた。
「さっき弟なんかいないって言っただろうが!!玄弥が何を選択したって口出しするな!才があろうが無かろうが命を懸けて鬼と戦うと決めてんだ!!兄貴じゃないって言うんなら絶対に俺は玄弥の邪魔をさせない!玄弥がいなきゃ上弦に勝てなかった!!再起不能になんかさせるもんか!!!」
怒気を含む炭冶郎の声が庭に響き渡り、外野は息を呑んで見守るしかなかった。
「そうかよォじゃあまずはテメェから再起不能だ」
不死川は般若のような顔で言い切ると、瞬時に炭冶郎の前に現れ鳩尾を殴りあげた。
『炭冶郎!!!』
「うっわ…炭冶郎…!!」
炭冶郎は間一髪。
鳩尾を殴っている筈の拳を両手で止めると、不死川に向かって蹴りを入れた。
不死川が思わず炭冶郎を落とすと、炭冶郎は○○と善逸に目を向けた。
「○○ーーーーっ!!!善逸ーーーっ!!!玄弥を逃がしてくれ頼む!!」
『わかった!!』
バチコーンとウインクをする炭冶郎と了承する○○に、善逸は頭が痛くなった。
「炭冶郎!!」
玄弥の叫びで炭冶郎が避けると、耳に不死川の蹴りが掠ったのか耳が切れて血が出る。
「いい度胸してるぜテメェはァ。死にてェようだからお望み通りに殺してやるよォ」
「待ってくれ兄貴!!炭冶郎は関係ない!!うわっ」
ブチ切れる不死川に呼びかける玄弥の腕を○○が引き、善逸が背中を押す。
玄弥は遥か下にある○○の姿を捉え、顔を真っ赤に染め上げた。
「ひっ!!女!?は、放せよ!」
『ごめんよっ!炭冶郎のお願いだから!』
玄弥は小柄で可愛らしくか弱そうな○○の腕を振り払う事ができず、威嚇するように叫ぶが○○は全く聞き入れてくれない。
「○○は男だ!揉めてる人間は散らすといいんだ!距離をとる!!アレお前の兄貴かよ!?完全に異常者じゃん!気の毒に…」
好き放題言う善逸を叱ろうと○○が振り向くと、玄弥も振り向いてそのまま拳を振り上げると思い切り善逸を殴った。
「俺の兄貴を侮辱すんな!!」
「俺味方なのに!!」
『善逸がごめんね玄弥君!』
「あっ、いやあの…」
「俺との扱いの差っ!! ○○は男だって言ってるじゃんか!!」
「嘘だろ…こんな可愛っゲッホゲホ!」
「お前…」
新たな犠牲者に善逸は哀れみの目を向けた。
そしてファンクラブに引き入れる事を密かに決めたのだった。
この後はもうぐっだぐだのグッチャグチャ。
夕方近くまで乱闘が続き、炭冶郎は上から正式にお叱りを受け風柱との修行は中断の上、接近禁止が命じられた。
○○が不死川に謝り倒したおかげで炭冶郎は殺される事なく、なんとか騒動は収まったのだった。
これをきっかけに、全隊士が○○を天女だの女神だのと崇めるのだった。
今回の件でファンクラブ会員数は馬鹿みたいに増えた。
そしてもちろん、不死川兄弟の仲を取り持つ事はできなかった。
善逸と○○、炭冶郎は不死川邸を出て岩柱の家へと向かっていた。
「こんな事するつもりじゃなかったんだけどな…痣もまだくっきりしないし修行の成果でてないなぁ」
「いや出てるよ、風のオッサンとやりあえたじゃんか凄えよ」
「そうかなぁ」
隣を歩いていた○○は、落ち込む炭冶郎の背を撫でて微笑む。
『うん、柱に一発入れるのって凄い事だよ。状況が状況だから褒められた事ではないけどね…』
「うん、そうだよな…ありがとう○○」
ホワホワと二人の世界に入り始めた様子に、面白くない善逸がついに叫んだ。
「おいそこ!!イチャついてんじゃねえよ馬鹿!美少女!!でこっぱち!!つーか、まだ山奥なの!?岩柱の家もばかじゃないの!?」
「え、あぅ、べ、別にイチャついてなんて…」
まんざらでもない顔で頬を染める炭冶郎に、善逸の目が血走り始める。
「も、もうそろそろつくんじゃないか?」
『あっ滝だ!人がいる…よ』
○○の途切れた言葉を疑問に思い、炭冶郎も善逸も彼の視線の先を見つめる。
瞬間、二人の顔が青ざめる。
「如是我聞!一時仏在!舎衛国!祇樹給孤独園!!」
そこには滝に打たれて、なにやら唱える伊之助の姿があった。
洗脳されたような様子に全員がドン引いた。
「心頭…滅却すれば…」
後ろから声が聞こえて三人は振り返る。
「火もまた涼し……ようこそ…我が修行場へ……」
そこには丸太三本に岩を四つぶら下げ、それを肩に担ぎ、燃え盛る炎の中でしゃがむ悲鳴嶋行冥の姿があった。
恐怖から善逸は吐いた。