鬼滅の刃
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「アハハハハッ!死ね死ね不細工共!!」
「ぐぉおおおお!!帯に加えて血の刃が飛んでくるぞ!何じゃこれ!!蚯蚓女に全然近づけねぇ!!くそォオ!!特に血の刃はやべぇ!!掠っただけでも死ぬってのを肌でビンビン感じるぜ!!」
血の刃を避ける事に精一杯で、まったく攻撃する事ができない。
伊之助はもどかしさに腹を立てる。
予知を見ようとしても帯に邪魔されできない○○も、珍しく額に青筋が浮かぶ。
「だあああクソ!!向こうは頚斬りそうだぜ!!ぐわっ!!チクショオ合わせて斬らなきゃ倒せねぇのによ!!」
堕姫に近づけない伊之助は気が焦り、集中力が散漫になり始めた。
三人で撹乱しながら逃げ回っているからなんとか攻撃を避けれているが、頚を狙わなければ意味がない。
『伊之助落ち着いて!全く同時に斬る必要はないんだ!二人の鬼の頚が繋がっていない状態にすればいい!!くそっ、少しでも時間があれば手がかりが掴めるはずなのにっ!』
「○○…」
初めて見る○○の険しい顔に、伊之助は胸が騒いだ。
そんな伊之助の気持ちをかき消すように善逸が口を開く。
「向こうが斬った後でも諦めず攻撃に行こう!」
珍しく凛々しい善逸の姿に、伊之助は呆気にとられる。
「お前っ…おま…お前なんかすごいいい感じじゃねーか!!どうした!?」
密かに同じ事を思っていた○○は苦笑した。
そう、きっと誰もが思っているだろう。
「危ねえぞオオオ!!」
『炭治郎!!雛鶴さん!!』
帯から逃げる中。
炭治郎と雛鶴に向かって帯が伸びたのを見て、伊之助と○○が叫ぶ。
声に気づいた炭治郎が、間一髪で雛鶴を抱えて帯を避けた。
「だアアアア!!!」
「伊之助!! ○○!!善逸!!」
帯を躱し続け息が切れる三人に、思わず炭治郎が叫ぶ。
「作戦変更を余儀なくされてるぜ!!蚯蚓女に全っ然近づけねぇ!!こっち四人で蟷螂鬼はオッサンに頑張ってもらうしかねぇ!!」
『伊之助と話したんだけど少しでも時間を作って予知を使おうと思うんだ!!炭治郎まだ動けるかい!!』
「鎌の男よりもまだこちらの方が弱い!まずこっちの頚を斬ろう!! ○○に攻撃がいかないよう守るんだ!!」
炭治郎は三人の言葉を聞いて、ちらりと妓夫太郎と戦う宇髄を心配そうに見つめて口を開く。
「動ける!!ただ宇髄さんは敵の毒にやられているから危険な状態だ!一刻も早く決着をつけなければ…!!」
○○に帯が伸びないよう、三人は何度も何度も帯を斬り続ける。
○○は目を瞑り、深く呼吸して集中を高めていく。
「アハハハ!!だんだん動きが鈍くなってきてるわね!誰が最初に潰れるのかしら!!」
堕姫の甲高い声が色街に響く。
「この鬼の頚は柔らかすぎて斬れない!!相当な速度が、もしくは複数の方向から斬らなくちゃ駄目だ!!」
炭治郎の必死な叫びと共に、徐々に映像が見えてくる。
堕姫に向かって走る伊之助。
刃こぼれした両方の刃で、堕姫の頚が斬れる。
飛んだ頚を伊之助が掴んだところで、何も見えなくなった。
血走った目を開いた○○は、一瞬帯が緩んだのを見逃さず伊之助に叫ぶ。
『伊之助!!今だ!!』
「おう!!複数の方向なら二刀流の俺様に任せておけコラァ!!四人なら勝てるぜェェェイ!!」
「わかった!!今度は伊之助を守ろう!」
突っ込んでいく伊之助に攻撃がいかないよう、三人で援護する。
獣の呼吸 捌ノ牙 爆裂猛進!!
雪の呼吸 肆ノ型 散り餠雪!!
水の呼吸 参ノ型 流流舞い!!
雷の呼吸 壱ノ型 霹靂一閃・八連!!
「ウォオオオ!!ぬぅうああ!!」
堕姫が防御をせず一直線に向かってくる伊之助に怖気付いた時、伊之助の刀が堕姫の頚を挟むように伸びる。
「今度は決めるぜ!陸ノ牙!!」
乱杭咬み!!
鋸のようにして斬れた堕姫の頚を見て、炭治郎は希望に目を輝かせた。
「やった伊之助!!」
伊之助は離れた頚を逃げないよう、腕を伸ばして力強く掴んだ。
「頚 頚 頚!!くっつけらんねぇように持って遠くへ走るぞ!!」
伊之助はそれだけ言うと足に力を込め、一気に踏み込み走り出す。
「ぬぉぉおおおおおお!!とりあえず俺は頚を持って逃げ回るからな!!お前らはオッサンを加勢しろ!!」
「わかった!!」
『気をつけて伊之助!』
「おうよ!!」
少し走ったところで、ここまで大人しくしていた堕姫がついに切れた。
「糞猪!!放しなさいよ!!」
堕姫は恨みがましく叫ぶと、髪を伊之助に伸ばして締めようとする。
伊之助はそれに瞬時に反応して、向かってくる髪を切り落とした。
「グワハハハ!!攻撃にキレがねぇぜ!!」
「何ですって!!」
「死なねぇとはいえ急所の頚を斬られてちゃあ弱体化するようだな!グハハハハ、ハ…!」
笑う伊之助に気配なく人影が近づき、背後から伊之助の胸を貫いた。
妓夫太郎だ。
「『伊之助ーーーーーッ!!!!!!』」
目撃していた炭治郎と○○の絶叫が静かな街に響き渡った。
鎌が抜かれ、倒れていく伊之助を見て、○○は頭に血が上る。
(どうしてこんな惨状を予知できなかった!?守れなかったらこんな力あったって無駄なだけじゃないか!!!!)
○○は無我夢中で伊之助の元へと走る。
その途中、視界の隅に左腕を斬られ倒れている宇髄の姿を捉えて、○○の顔にビキリと血管が浮かんだ。
「○○!!戻れ!!危険だ!!!」
「炭治郎危ない!!」
堕姫は頚が無くても帯で炭治郎と善逸を襲い続け、最終的には屋根を破壊して地面へと叩きつけられた二人は意識を失った。
雪の呼吸 伍ノ型 雪崩!!
堕姫の頚を奪い返した妓夫太郎の背に技を繰り出すが、全く効いていないようだった。
少量の血を吐いた妓夫太郎が、ゆっくりと振り返る。
伊之助から自身に標的が移ったのを確認して、○○は体制を立て直す。
「なんだあ?」
妓夫太郎は息を荒らげ睨みつける○○の姿を視界に入れた。
鬼の口角が上がるのがわかった○○は刀を構えた。
「暗くてよく見えなかったが、可愛い顔してんなあお前」
「アタシこいつ嫌い!妙な力使うのよ!?早く殺して!!」
「ちょっと黙ってろぉ」
堕姫と話していた妓夫太郎に、一瞬のうちに鎌で腕を切りつけられ、力が抜けた○○は刀を落とした。
そしてすぐさま両膝に鎌を刺され、○○は倒れ込む。
『い゛っ!?』
しゃがみこんだ妓夫太郎は痛みに歪む○○の頬を片手で掴むと、機嫌が良さそうに微笑んだ。
『っ!』
「何で!?毒で殺さないでもっと痛めつけなさいよ!!」
「うるせぇ毒は消してる。堕姫が言ってた餓鬼はコイツかぁ。こんな顔した奴は長く生きてきて初めて見たなぁ…いいなぁ可愛いなぁ」
脂汗を浮かべて睨む○○の顔を固定してジロジロと観察した後、妓夫太郎はその小さな唇に口付けた。
『!?』
「ひい!?ちょっとお兄ちゃん何してんのよ!?」
「気に入った、あいつら殺した後に鬼にしようコイツ」
「絶ッッッ体いや!!早くボコボコにして殺してよ!!!」
騒ぐ堕姫に妓夫太郎は小さく舌打ちすると、掴んでいた○○の顔を放し、頭を掴んで思いっきり瓦に叩き付けた。
『ぁがっ!!』
額が割れて瓦に血が飛び散る。
そして妓夫太郎は髪を掴み上体を起こさせると、鎌を○○の両膝から容赦なく引き抜いた。
『あ゛あっ!!!』
痛みに堪らず倒れ込んだ○○の右腕を脱臼させると、やっと妓夫太郎は立ち上がる。
「これで満足だろぉ」
「駄目よ!!まだ殺してない!!ねえ!お兄ちゃんってば!!」
「うるせぇなあ他のヤツ殺せばいいだろぉがあ」
遠のいていく鬼を涙を流しながら睨みつけた○○は、傍に倒れている伊之助の手に手を重ねた。
『伊之助…ごめっ、ごめんね』
額を割られ朦朧とする中、呼吸でなんとか止血した○○はそのまま意識を飛ばした。
「ガアアアァアア!!!」
獣のような咆哮に○○は目を覚ます。
視線を泳がせて、さっきまでいた伊之助が瓦に血痕を残していなくなっている事に気づいた。
○○は痛む足に鞭を打ち、外れた右腕を嵌めて急いで刀を掴んで立ち上がった。
屋根の上で戦う堕姫と善逸の姿を捉え、○○は走る。
その近くに伊之助の気配を感じて、無事だった事に小さく微笑んだ。
「アンタがアタシの頚を斬るより早く、アタシがアンタを細切れにするわ!!よ…!」
堕姫の頚を斬ろうとする善逸に迫る帯を、二つの影が切り裂いた。
伊之助と○○だ。
○○が善逸と反対の方から刀を頚に当てる。
堕姫の顔が驚きに染まった。
「俺の体の柔ら゛かさを゛見くびんじゃね゛え゛!!内臓の位置をズラすな゛んてお茶の゛子さい゛さい゛だぜ!!険しい山で育った゛俺に゛は毒も効かね゛え゛!!」
善逸と○○の刀で挟むように固定された堕姫の頚に、伊之助の二刀が当てられた。
「『アアアアアア!!』」
「ガアア゛ア゛アア゛ア゛!!!」
三人の咆哮と共に刀に力が入るのがわかり、堕姫の表情が焦りに変わる。
「お兄ちゃん何とかしてお兄ちゃん!!」
堕姫の叫びも虚しく、三人の刃によって頚を斬られた。
同時に炭治郎も妓夫太郎の頚を斬り、向かい合うように二つの頚が落ちる。
安心したのも束の間、宇髄の叫びが響いた。
「逃げろーーーーーーーーーッ!!!!」
血鬼術なのか、黒い渦が迫るのがわかり、伊之助は肩で息をする血だらけの○○を腕に閉じ込めた。
視界いっぱいに逞しい胸が見えたのと同時に、目の前が真っ暗になった。
肺を潰されるような感覚に○○の意識が戻る。
小さな瓦礫が胸に乗っているのを見て、腕で払い起き上がった。
『ゲホッ!!え゛ほっ…いたっ』
肋が折れているのか咳き込む度に激痛が走る。
それをきっかけに痛覚がぶり返し、体中が痛んだ。
歩けない。
右腕はまた脱臼し、両足は折れていた。
(…そうだ、伊之助は…)
渦に巻き込まれる前に伊之助が庇ってくれたのを思い出した○○は、ノロノロと顔を上げた。
すぐそばで、ピクリとも動かない伊之助の姿が目に映る。
○○の目が極限まで見開かれた。
『いのっ伊之助!!そんなっ!!』
○○は痛む体を引きずり伊之助の前まで来ると、心臓に耳を当てた。
心音が少しずつ弱くなっていくのがわかる。
○○の目から大粒の涙が溢れた。
「○○!!無事だったのか!!」
『!!炭治郎っ!!伊之助が!』
禰豆子におぶられ走ってきた炭治郎は、険しい顔をして伊之助の体を揺さぶる。
「伊之助ーーーっ伊之助!!伊之助!!しっかりしろ!伊之助!!」
『うぅ…』
伊之助が弱っていくのを見るしかできない炭治郎と○○は涙を流す。
それを黙って見ていた禰豆子が、そっと伊之助に小さな手を伸ばし胸に触れた。
瞬間。
ボッと伊之助の体が燃えだし、毒で爛れた皮膚が治っていく。
「『!?』」
ありえない現象に、二人は目を見開いた。
「腹減った!!なんか食わせろ!!」
「『伊之助!!』」
意識が戻った伊之助が元気そうに大きく言い放ったのを見て、○○と炭治郎は泣きながら伊之助を抱きしめた。
「いやあああ死なないでぇ!!死なないでくださぁぁい天元様あ~~!!!」
聞こえてきた絶叫にまた禰豆子が走り出し、炭治郎は慌ててそれを追いかけて行った為、○○と伊之助は二人この場に残された。
『伊之助っ伊之助ごめんね!私がちゃんと予知できてれば伊之助はこんな大怪我しなくてすんだのに!!』
見た事もないくらい泣いて取り乱す○○に、伊之助の胸がザワついてガシッと細い肩を掴んだ。
「っ別に○○が気にする事じゃねえだろ!!気配に気づかなかった俺が悪ぃ!!だから泣くな!!」
『でもっ…うん、ごめん…』
「謝んな!!!別に俺は怒ってねえ!あとお前肩外れてんだろ!嵌めてやる!!」
『うん、うん…ありがとう伊之助』
伊之助はしゃくりあげながら謝る○○の頭をガシガシと撫でた後、外れた肩を嵌めてやった。
骨の音が響いて、右腕が動く。
『ありがとう…』
「おう、もう泣くなよ」
自分を想ってまだ涙が止まらない○○を、伊之助は抱きしめた。
腕に大人しく収まる小さな○○を見て、胸がいっぱいになる感覚に伊之助は身を任せた。
その後、禰豆子と一人騒ぐ善逸を連れて炭治郎が戻てきて、泣きながら○○と伊之助に腕を伸ばした。
やっと終わったのだと安心した○○は、隣で泣き喚く善逸の背をよしよしと撫でた。
次に○○が目を覚ましたのは2ヶ月後だった。
隣の部屋から騒ぐ声が聞こえてきて、炭治郎と言う単語だけ、しっかりと聞き取った。
(炭治郎、無事だったんだ…よかった)
安堵した○○が瞬きをした一瞬の間に、天井に伊之助が張り付いていた。
完全に目が合う。
驚いた○○の目がまん丸に見開かれた。
『いのっ』
「○○ーーーーー!!!!!!」
叫びながら○○の上に潰さないよう降ってきた伊之助は、逞しい腕で○○を抱きしめた。
怪我はほぼ治っているのか、あまり痛みは感じなかった。
伊之助の叫びが聞こえたのか、隣の部屋からバタバタと走ってくる足音に○○は驚く。
「○○っ!!!」
『カナヲ…』
戸を強く開けて入ってきたのはカナヲだった。
後ろからはアオイ、後藤、なほすみきよが続々と入ってくる。
全員の泣き顔を見て、○○は目を白黒させた。
アオイは自分の代わりに任務で傷ついた事に責任を感じているのか、誰よりも泣きじゃくっている。
『アオイさ…わっ』
カナヲは伊之助をベリッと剥がすと、代わるように○○を抱きしめた。
触れた体はふわりと柔らかく、花のような香りに○○の頬が色づく。
当然その様子に伊之助は怒り狂ったが後藤、なほすみきよの四人がかりで押さえ付けられた。
「よかった○○…2ヶ月間意識が戻らなかったのよ…炭治郎もさっき目を覚ましたの」
『2ヶ月も…善逸は?』
「その人なら翌日には目を覚まして、一昨日任務に復帰したばかりよ」
『そっか…よかった…』
疲れと眠気で返答するのが精一杯の○○に気づいて、鼻を啜ったアオイがカナヲの肩を叩き離れさせた。
限界だったのか、○○の目が閉じてすぐに寝息を立て始める。
可愛らしい○○の寝顔を見て、カナヲは優しく微笑んだ。
「おやすみなさい、○○」
頬を撫で、名残惜しそうにカナヲが離れたのをいい事に、邪魔だった四人を振り払った伊之助は勢いよく○○の隣に寝転んだ。
その様子にアオイが涙を引っ込め、目を吊り上げる。
眠った○○に気を使って、アオイは静かな声で怒りをあらわにする。
「ちょっと伊之助さんっ!」
「はあ…まったく…アオイちゃん、今だけこうしといてやろうぜ」
「○○さんも目を覚ましてよかった~」
「ね~」
「カナヲさん、○○さんの分の重湯も作らなきゃですね」
「そうだね」
全員が静かに出て行ったのを確認して、伊之助は眠る○○に近寄り猪頭を外した。
2ヶ月間、死んだように眠っていた○○にようやく生気が戻った気がして伊之助の目が潤む。
「起きるのが遅ぇんだよ馬鹿○○」
伊之助は小さく鼻を啜って○○に寄り添い、優しく抱きしめる。
柔い髪に鼻を押し当て、○○の匂いを肺いっぱいに吸い込んでから伊之助も眠りについた。
伊之助にとって、2ヶ月ぶりの安眠だった
その後。伊之助、○○、炭治郎の順で回復し、それぞれ単独任務に復帰するのだった。