鬼滅の刃
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荻本屋へと戻った伊之助と○○は、各々の部屋で炭治郎が来るまで時間を潰していた。
『そろそろ日が暮れる…炭治郎遅いなぁ』
小さな窓の障子を開けて外を眺めていた○○は、一向に来る気配のない炭治郎が心配になった。
『そろそろ伊之助の部屋に行こうかな』
○○が立ち上がった時、鬼の気配がして持っていた刀を抜こうとするが、現れた鬼の方が幾分か早かった。
振り向いた瞬間○○は強く口を押さえられ、悲鳴を上げることもできなかった。
「アンタ、この間追ってきた女だね。ちょこちょこ動かれて鬱陶しかったのよ。」
○○は鬼の手に爪を立てるが、鬼は離す気配はない。
ずいっと顔を寄せた鬼に○○は目を見開いた。
「ここで喰い殺してやっても良かったけど、アンタみたいな上玉、何百年も生きてきて初めて見たわ。勿体ないから食糧庫に入れて最後に骨まで残さず喰ってやる」
『~~っ!!』
○○の頬に汗が伝うと同時に、ガバッと鬼の着物の帯が広がり、あっという間に○○は呑み込まれた。
「おい○○!惣一郎の奴来やしねぇから先に行くぞ!!」
スパンっと騒がしく○○の部屋の襖を開いた伊之助は大きく呼びかけるが、その部屋に○○の姿はなかった。
「?部屋間違えたか?」
伊之助は全ての階の部屋を見て回ったが、○○はどこにも見当たらなかった。
そして伊之助は、もう一度最初に見た部屋へと戻った。
「……ぶっ殺す!!!」
やっと隅に隊服と雪模様の羽織が畳まれていることに気づいた伊之助は、青筋を立て目を血走らせながら殺気を放つ。
○○を迎えに来るのが遅かったことを、伊之助は悔やんだ。
騒がしい音に○○は目を開いた。
体は動かず目を泳がす事しかできない。
見える範囲、全部が土なのを認識して、地下にいる事を把握した。
「オラアアア!!! ○○どこだァ!!」
どこにいるのかは分からないが、ずっと己を呼ぶ伊之助の声が響く。
声を上げたいのに喉がつっかえたようになり、息を吐くだけで言葉にはならなかった。
何度も口を開くのを繰り返すが声は出ない。
何もできず歯がゆくなり、○○の目にじわりと涙が滲んだ瞬間。
突然体が重力に従い落ちていく。
よく分からなかったがようやく体が動くようになり、難なく地面に着地すると、いくつもの長い帯に人が閉じ込められている光景が目の前に広がった。
○○はようやく、自分も帯に閉じ込められていたことに気がついた。
『これが、食糧庫…』
「あああぁぁあ!! ○○見つけたぞ!!」
伊之助の声に顔を向けると、二刀流で次々と帯を斬っている伊之助の姿があった。
よく見ると、器用に人と人の間の帯を斬っているらしい。
○○はこの状況に気づき、運良く攫われた時から握ったままだった刀で帯を斬った。
『ごめんね伊之助!捕まってしまって!!』
「許す!!!!次からは気をつけろよ!」
『はい!』
伊之助と○○は背中合わせに次々と帯を斬っていくが、急に斬る事ができなくなった。
獣の呼吸 陸ノ牙 乱杭咬み!!
雪の呼吸 壱の型 雪吹雪!
「アタシを斬ったって意味無いわよ、本体じゃないし。それよりせっかく救えた奴らが疎かだけどいいのかい?」
「『!?』」
斬りかかろうとするが、鬼の言葉に二人の刀はピタッと止まる。
「アンタ達にやられた分はすぐに取り戻せるんだよ」
ギュルっと鬼の帯が救った女達に伸びるのを見て、○○はそちらに走るが間に合いそうになかった。
諦めかけた時、どこからか苦無が飛んできて帯に刺さり、帯は地面へと落ちた。
「蚯蚓帯とは上手いこと言うもんだ!そっちの子も可愛らしい顔してやるじゃない!」
「ほんと気持ち悪いですほんとその通りです!!天元様に言いつけてやります!」
肌を隠す面積の少ない着物を着た女二人が、苦無を構えて伊之助と○○に声をかけてきた。
「あたしたちも加勢するから頑張りな!猪頭!お嬢ちゃん!!」
『あっありがとうございます!』
○○はお嬢ちゃんではないが緊急事態のため訂正は諦めた。
懲りずに倒れている女に伸びる帯を、二人の女は苦無で弾く。
疑問に思った伊之助は二人に向かって叫んだ。
「誰だてめェら!!」
「宇髄の妻です!アタシあんまり戦えないですから期待しないでくださいね!!」
「須磨ァ!!弱気なことを言うんじゃない!!」
もう一人の女が須磨と呼ばれる女の尻を引っぱたく。
すると須磨は涙を流しながら必死に叫んだ。
「だってだってまきをさん!あたしが味噌っかすなの知ってますよね!?すぐ捕まったし!!無茶ですよ捕まってる人皆守りきるのは!あたし一番に死にそうですもん!!」
帯は須磨の叫びにニタリと笑うと、更に数を増やした。
「そうさ、よくわかってるねぇ。さあどれから喰おうか」
戦いに終わりが見えず、伊之助と○○が焦り始めた時。
二人は横をすり抜ける黄色い人影に気づいた。
瞬間、雷のような轟音が鳴り響き、人影は帯をバラバラに斬った。
しかしすぐに帯は再生する。
『善逸!!よかった!』
「あいつずっと寝てた方がいいんじゃねぇか…」
喜ぶ○○を見て伊之助はぽつりと呟いた。
まあ、大半が思う事である。
「あの子も鬼殺隊?なんであんな頓珍漢な格好してんの!」
「わかんないです!」
須磨とまきをの言葉に、○○はなぜ自分はお嬢ちゃんと呼ばれたのか未だに理解していなかった。
同じ様な格好をしていても結局世の中顔で判断されるのである。
帯が一瞬固まって上を見上げた瞬間。
ドゴォンと上から大きな音がして、地上から地下に風穴が空いたのが分かった。
「何だァ…?」
『伊之助、ワクワクしないの』
○○は注意した後、伊之助が見る方向へと顔を向けた。
土煙でよく見えないが、その人影は大きい。
『宇髄、さん?』
その姿は間違いなく宇髄天元であった。
煙が晴れた瞬間、宇髄は深く呼吸をするとぶら下がっていた帯を全て斬り落としてしまった。
「天元様……」
まきをが呆気に取られながらも名前を呟く。
「まきを、須磨。遅れて悪かったな。こっからはド派手に行くぜ!!派手にやってたようだな、流石俺の女房だ」
宇髄にぽんぽんと頭を撫でられ泣きだした須磨を、○○は微笑ましそうに見つめる。
しかし、突然声を上げた伊之助によって和やかな雰囲気が壊れた。
「オイィィ!!祭りの神テメェ!!蚯蚓帯共が穴から散って逃げたぞ!!」
「うるっせええ!!捕まってた奴ら皆助けたんだからいいだろうが!!!まずは俺を崇め讃えろ!話はそれからだ!!」
目を剥き出しにして怒る宇髄に伊之助は驚いた。
さっきまでの威勢はどこにいったのか、苦笑する○○の背にそっと隠れた。
「天元様、早く追わないと被害が拡大しますよ!」
「野郎共追うぞ!!ついて来いさっさとしろ!!」
まきをの言葉を聞いて宇髄は早口で指示をし、一人飛び出して行ってしまった。
「どけどけェ!!宇髄様のお通りだ!!ワハハハ!」
素早く屋根を駆けてく宇髄に、伊之助達は追いつくことができない。
豆粒くらいにしか見えないほど離れた距離に、伊之助はイラついた。
「くそォ速ェ!!」
イラつきながらも必死に追いかける伊之助に、○○は微笑んでその隣で共に後を追った。
宇髄を見失い、なんとか宇髄が走っていった方向に向かった伊之助達は、炭治郎と禰豆子の姿が見えて走る速度を上げた。
「俺が来たぞコラァ!!御到着じゃボケ!!頼りにしろ俺をォォ!!」
声を張り上げた伊之助に炭治郎は驚いて振り返った。
その腕には小さくなった禰豆子が抱かれている。
「伊之助!! ○○!!善逸!!寝てるのか!?」
寝たまま伊之助と○○と共に走ってくる善逸に、炭治郎は目を丸めた。
「宇髄さんを加勢してくれ!!頼む!!」
『もちろん!!任せてくれ!』
「任せて安心しとけコラァ!!大暴れしてやるよ!この俺様伊之助様が!!ド派手にな!!」
宇髄の影響を受けて口癖をまねた伊之助が可愛らしく、○○は思わず笑った。
「すまない!俺は禰豆子を箱に戻してくる!!少しの間だけ許してくれ!!」
「許す!!」
「ありがとう!!」
禰豆子を背負って去っていく炭治郎を見送り、伊之助と○○、善逸は、鬼と戦い動き回る宇髄を必死に追いかけた。
ようやく宇髄が一箇所に留まったのを見て近づくが、宇髄のいる建物からの突然の爆発に三人は軽く吹っ飛ばされた。
「うおっあぶねっ!! ○○大丈夫か!!」
『大丈夫っ!』
寝たままの善逸を庇いながら飛ばされた○○に、伊之助は心配になった。
三人は爆発の衝撃で開いた穴から中を覗いて、助太刀のタイミングを計った。
なかなか入れずイライラする伊之助を○○はなんとか宥めた。
二度も宇髄に頚を斬られて喚く堕姫の声を聞き、伊之助、○○、善逸は刀に手をかけた。
「お前、もしかして気づいてるなぁ?」
堕姫の兄・妓夫太郎の恨めしそうな声に、宇髄は冷や汗を垂らしながらニヤリと笑った。
「何に?」
「……気づいた所で意味ねぇけどなぁ、お前は段々と死んでいくだろうしなぁあ」
とぼける宇髄に、ムカついた様子の妓夫太郎が頬をボリボリと掻く。
「こうしている今も俺たちはジワジワ勝ってるんだよなああ」
「それはどうかな!?」
妓夫太郎の言葉に伊之助は刀を掲げ声を張った。
突然現れた三人に堕姫が目を見開く。
「俺を忘れちゃいけねぇぜ!!この伊之助様とその手下がいるんだぜ!!」
誇らしげにする伊之助に○○は苦笑した。
「何だ?コイツら…」
意味がわからず妓夫太郎が顔を顰めた時、上の階から炭治郎が宇髄を守るように前に飛び降りた。
「下っぱが何人来たところで幸せな未来なんて待ってねえからなあ。全員死ぬのにそうやって瞳をきらきらさすなよなあぁ」
露骨にイラつきだす妓夫太郎は、ボリボリと強く頬を掻いた。
いつの間にか鬼が二人に増えている事に、炭治郎は驚きを隠せなかった。
「勝つぜ!俺たち鬼殺隊は!!」
「勝てないわよ!頼みの綱の柱が毒にやられてちゃあね!!」
強く言い放った宇髄に堕姫が噛みつく。
堕姫の言葉に、炭治郎は目を見開いて宇髄を振り返った。
宇髄はそれを気にせず得意気に笑う。
「余裕で勝つわボケ雑魚がァ!!毒回ってるくらいの足枷あってトントンなんだよ!人間様を舐めんじゃねぇ!!こいつらは四人共優秀な俺の"継子"だ!逃げねぇ根性がある!」
「フハハ!まぁな!」
宇髄の言葉に、伊之助は満足気に笑うと○○の肩を組んだ。
○○は宇髄に、煉獄と同じものを感じて目頭が熱くなる。
柱とは皆、こういうものなのだろうか。
「手足が千切れても喰らいつくぜ!!そしてテメェらの倒し方は既に俺が看破した!同時に頚を斬ることだ!二人同時にな、そうだろ!!そうじゃなけりゃそれぞれに能力を分散させて弱い妹を取り込まねぇ理由がねぇ!!ハァーッハ!!チョロいぜお前ら!!」
「グワハハハ!!なるほどな簡単だぜ!俺たちが勝ったも同然だな!!」
宇髄の言葉に鼓舞された伊之助が鼻息強く豪快に笑い、刀を構えた。
「その"簡単なこと"ができねぇで鬼狩りたちは死んでったからなあ、柱もなあ。俺が十五で妹が七、喰ってるからなあ」
「そうよ!夜が明けるまで生きてた奴はいないわ!長い夜はいつもアタシたちを味方するから!!どいつもこいつも死になさいよ!!」
堕姫はそう言うと同時に、帯を広げて屋根の上に逃げる。
その後を轟音を立てながら善逸が追いかけた。
「善逸!」
一人で行ってしまった善逸を案じて炭治郎が声を上げるが、もう届かない。
その姿を見て待ちきれないとばかりに伊之助が声を張る。
「蚯蚓女は俺と○○と寝ぼけ丸に任せろ!!お前らはその蟷螂を倒せ!!わかったな!!行くぞ○○!!」
『うんっ!炭治郎また後でね!!』
「気をつけろ!」
「おうよ!!」『うん!!』
炭治郎に力強く返事をすると、二人は屋根の上に姿を消した。
伊之助と○○が屋根に上ると、堕姫が甲高い声で笑う。
「アハハハハッ全部見えるわアンタたちの動き!兄さんが起きたからね!!これがアタシの本当の力なのよ!!」
「うるせぇ!!キンキン声で喋るんじゃねぇ!!」
堕姫の額が縦に割れて目が現れる。
三人は刀を構えた。
迫り来る無数の帯を三人で捌くが、キリがなく体力がすり減らされるばかりであった。
帯は斬っても斬っても伸び続け、ついには屋根に攻撃し、屋敷が倒壊する。