鬼滅の刃
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「全集中の常中ができるようだな!感心感心!」
「『煉獄さん…』」
突如かかった声に、炭治郎と○○は目を丸めた。
煉獄は気配もなく、いつの間にか二人の傍に立っていたのであった。
○○の顔を汚す紅に、煉獄は少し目を吊り上げた。
「…常中は柱への第一歩だからな!柱までは一万歩あるかもしれないがな!」
「『頑張ります…』」
厳しい言葉に炭治郎と○○は眉を下げた。
「腹部から出血している。氷鉋少年は呼吸ができている事から食道からの出血ではなさそうだな。十二指腸か」
状況判断が早い煉獄に○○は驚いた。
流石柱なだけある。
「もっと集中して呼吸の精度を上げるんだ。体の隅々まで神経を行き渡らせろ」
煉獄の言葉に二人は深く呼吸を始めた。
「血管がある。破れた血管だ」
炭治郎と○○は傷が傷んで苦しかった呼吸がどんどん楽になっていった。
いつの間にか無駄に入っていた力が抜けていた。
「もっと集中しろ」
ドクンと血の巡りが鮮明にわかるようになり、二人はそれぞれ破れた血管を見つけた。
煉獄にもそれが伝わり指示を出す。
「そこだ。止血、出血を止めろ」
○○は集中して深く呼吸をした。
すると、血が止まるのが分かった。
予知を使う時に集中するため、○○は人一倍集中力がすごかったようだ。
ぷはっと息を吐き、力を抜いた○○に煉獄が微笑む。
「おお、氷鉋少年はコツを掴むのが早いな。あっぱれだ」
『はぁ、はあっ、ありがとう、ございます…』
○○ができたのを見て、焦った炭治郎は力を入れるが、なかなか止血ができない。
○○の手を握る炭治郎の手にどんどん力が篭っていく事に気づき、○○もギュッと握り返した。
それを見た煉獄は、人差し指を炭治郎の額にトンと置いた。
「集中」
真剣な煉獄の目を見た炭治郎は力を込め直し、今度こそ止血を成功させた。
「ぶはっ!はっ、はぁっ…?」
「うむ、止血ができたな。呼吸を極めれば様々な事ができるようになる。何でもできる訳ではないが、昨日の自分より確実に強い自分になれる」
「『…はい』」
揃って返事をした二人に、煉獄はにこっと優しく笑うと口を開いた。
「皆無事だ!!怪我人は大勢だが命に別状は無い!君達はもう無理せず…」
ドオンッと何かが落ちた音に煉獄は言葉を止め、二人を守るように刀に手をかけ構えた。
土埃の晴れたそこには、全身に模様が入り、上弦の参と目に刻まれた鬼がいたのだった。
強く地面を蹴り、一瞬で炭治郎の前に移動した鬼は、迷いなく握り拳を振り下ろそうとした。
炭治郎も○○も、あまりの事に動く事ができない。
炎の呼吸 弐ノ型 昇り炎天
煉獄に振り下ろそうとした手を斬られた鬼は後ろへと飛び退いた。
素早く斬られた手を再生し、己の流れる血を舐めた鬼はやっと口を開いた。
「いい刀だ」
「なぜ手負いの者から狙うのか理解できない」
煉獄は顔にこそ出さないものの静かに怒りを感じていた。
「話の邪魔になると思った、俺とお前の。安心しろ、もう一人はあの方に連れて帰ろうと思うから、殺しはしない」
鬼の言葉に煉獄は目を細め、炭治郎は繋がっている○○の手を強く握った。
○○も固い表情でその手を握り返した。
「君と俺が話をする?初対面だが俺はすでに君の事が嫌いだ」
殺気のこもる煉獄の言葉にも動じることなく、鬼は淡々と話しだす。
「そうか。俺も弱い人間が嫌いだ。弱者を見ると虫酸が走る。」
「俺と君とでは物ごとの価値観が違うようだが」
「そうか。では素晴らしい提案をしよう」
鬼は一拍置いてから再び口を開いた。
「お前も鬼にならないか」
「ならない」
鬼の誘いを煉獄は間髪入れずに断った。
炭治郎と○○は鬼の言葉に動揺したが、煉獄は一切動じない。
これだけでも柱と隊士の力の差が簡単にわかった。
「見れば解る。お前の強さ、柱だな?その闘気、練り上げられている。至高の領域に近い」
「俺は炎柱、煉獄杏寿郎だ」
「俺は猗窩座。杏寿郎、なぜお前が至高の領域に踏み入れないのか教えてやろう」
猗窩座は煉獄を指さすと、常時貼りつけていた笑みを消した。
「人間だからだ。老いるからだ。死ぬからだ。鬼になろう杏寿郎。そうすれば百年でも二百年でも鍛錬し続けられる、強くなれる」
空気が変わった鬼に、炭治郎と○○は焦り身を起こす。
しかし、止血はしても二人とも傷が痛み、なかなか動く事ができない。
「老いることも死ぬことも、人間という儚い生き物の美しさだ。老いるからこそ、死ぬからこそ、堪らなく愛しく尊いのだ。強さというものは肉体に対してのみ使う言葉ではない。この少年は弱くない、侮辱するな。氷鉋少年も連れては行かせない」
炭治郎と○○はその言葉に顔を上げた。
煉獄はそれを気にすることなく言葉を続ける。
「何度でも言おう。君と俺とでは価値基準が違う。俺は如何なる理由があろうとも鬼にならない」
どこを見ているかわからなかった煉獄の目が、しっかりと鬼を捉えた。
「そうか」
鬼はにんまりと笑うと体術の構えをとった。
『煉獄さん!!』
一瞬の予知で血鬼術が見えた○○が咄嗟に煉獄に呼びかける。
危険が迫ると意識せずとも予知が見えるのだ。
その為、○○の頭は警鐘を鳴らしていた。
○○の叫びに察した煉獄は刀を構える。
《術式展開 破壊殺・羅針》
「鬼にならないなら殺す」
鬼が血鬼術を発動すると同時に煉獄も走り出す。
炎の呼吸 壱ノ型 不知火
お互いがぶつかり合い、ドォンッと轟音が鳴り響く。
「今まで殺してきた柱たちに炎はいなかったな!そして俺の誘いに頷く者もいなかった!!なぜだろうな?同じく武の道を極める者として理解しかねる!選ばれた物しか鬼にはなれないというのに!!素晴らしき才能を持つ者が見にくく衰えてゆく!!俺はつらい!耐えられない死んでくれ杏寿郎!若く強いまま!!」
《破壊殺・空式》
肆ノ型 盛炎のうねり
目で追えない二人の戦いに、炭治郎と○○は目を丸めるしかない。
「この素晴らしい剣技も失われていくのだ杏寿郎!!悲しくはないのか!!」
「誰もがそうだ!人間なら!!当然のことだ!!」
徐々に押される煉獄に加勢しようと、立ち上がろうとする炭治郎を○○は止めた。
『炭治郎っだめだよ…』
それを鬼と戦いながらもしっかり見ていた煉獄が叫んだ。
「動くな!!傷が開いたら致命傷になるぞ!!待機命令!!君は氷鉋少年を守れ!!」
強い口調に炭治郎は驚き、大人しく体勢を戻して鬼に狙われている○○の手をまた握るのだった。
「弱者に構うな杏寿郎!!全力を出せ!俺に集中しろ!!」
しつこい鬼に煉獄は深く呼吸をした。
《破壊殺・乱式!!!》
炎の呼吸 伍ノ型 炎虎!!!
またも激しくぶつかり合う二人に炭治郎と○○、そしていつの間にか戻ってきた伊之助は呆然と見つめるしかなかった。
「杏寿郎、死ぬな」
煙が晴れたそこには、胸から血を流す猗窩座と、ボロボロになり血だらけの煉獄の姿が見えた。
(隙がねぇ入れねぇ、動きの速さについていけねぇ。あの二人の周囲は異次元だ。間合いに入れば死しかないのを肌で感じる。助太刀に入ったところで足手まといでしかないとわかるから動けねぇ)
伊之助は殺気でビリビリと痛む肌に冷や汗をかいた。
○○は予知の反動で再び痛む十二指腸を無視して集中した。
彼は吐血するのも構わず、再び予知で見るつもりだったのだ。
どうか、彼の救われる未来を祈りながら。
(少しでいい…煉獄さんの無事を確かめるだけでいいから)
何をするかわかった炭治郎は○○の背を撫でた。
それを見た伊之助もしゃがみ、○○の背を支える。
○○は二人の手が震えている事に気づいた。
皆、煉獄を失うのが恐ろしかったのだ。
「生身を削る思いで戦ったとしても全て無駄なんだよ杏寿郎。お前が俺に喰らわせた素晴らしい斬撃も既に感知してしまった。」
鬼の言葉に三人は絶望した。
○○はぐっと目を瞑り集中を高める。
全身に汗の玉が浮かぶ。
(はやく…はやく!!)
「だがお前はどうだ。潰れた左目、砕けた肋骨、傷ついた内臓。もう取り返しがつかない。鬼であれば瞬きする間に治る。そんなもの鬼ならばかすり傷だ。どう足掻いても人間では鬼に勝てない」
再び笑みを消した鬼に、今度は煉獄が笑みを浮かべ炎を纏った刀を構え直した。
「俺は俺の責務を全うする!!ここにいる者は誰も死なせない!!」
炎の呼吸 奥義!!
「素晴らしい闘気だ…それ程の傷を負いながらその気迫その精神力!一部の隙もない構え!!やはりお前は鬼になれ!!杏寿郎!!!俺と永遠に戦い続けよう!!」
煉獄の殺気を受け、ビリビリと肌が傷んだ鬼は愉快そうに笑うと地面を強く踏み込んだ。
《術式展開》
玖ノ型・煉獄
《破壊殺・滅式》
三度目の激しいぶつかり合いは一層激しく、大きな土煙が上がり、なかなか二人の様子がわからなかった。
『!!!見え、た…ゲホッ』
ゼイゼイと肩で息をする○○を、炭治郎と伊之助は支える。
少量の血を吐き、目は血走り、血管は浮き出て大量の汗が流れる○○を、二人は心配そうに覗きこんだ。
「おい大丈夫か○○!!」
「どうだったんだ…?」
二人の問いかけに、ゆっくりと俯いた○○は首を小さく横に振った。
頬をつたって流れる雫は、汗なのか涙なのか。
この反応で、炭治郎と伊之助は察した。
「そんなっ…」
バッと顔を上げた炭治郎は、煉獄のいる方へと視線をやった。
伊之助も呆然と土煙の上がるそこを見つめる事しかできない。
やがて、土煙が晴れた。
そこには鬼の右腕が腹に刺さった、煉獄の姿があった。
三人から血の気が引く。
「死ぬ…!!死んでしまうぞ杏寿郎!!鬼になれ!!鬼になると言え!!お前は選ばれし強き者なのだ!!」
鬼は煉獄に向かって叫ぶ。
煉獄は少し固まった後、刀を握る力を強め思い切り鬼の頸に振り下ろした。
「かっ…!!」
鬼の頸は固く、その刃は少ししか通らない。
「オオオオオオオ!!!」
煉獄は叫び刀に力を込める。
ミシィッと音がし、鬼の頸に少し刃が通る。
それに鬼は焦り左腕で殴りかかるが、その手は煉獄の顔に届く前に止められた。
夜明けが近い事にさらに鬼は焦り、冷や汗を浮かべる。