鬼滅の刃
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(何で俺は勝てないのだろう。俺とあの二人の何が違う?)
負け続けて十日も経ってしまった。
早く強くならなければ。
まず反射速度が全然違うんだ。
俺が万全の状態でも○○には負けるし、きっとカナヲにも負ける。
二人とも匂いからしてまず違う。
この前会った柱の人達に近い匂いがする。
「炭治郎さん…あのぅ…」
そこで俺はやっと呼ばれていた事に気づいた。
振り返るとなほちゃん、きよちゃん、すみちゃんが俺を見上げていた。
「わっびっくりした!ごめん!どうした?」
俺の言葉に三人はしばらくもじもじすると、震える手で手拭いを渡してくれた。
「手拭いを…」
「わあ!ありがとう助かるよ!優しいねぇ」
気を使ってくれた事がとても嬉しくなり、自然と笑みが浮かんだ。
妹のようで可愛らしい。
「あの、炭治郎さんは全集中の呼吸を四六時中やっておられますか?」
「……ん?」
きよちゃんの言葉が一瞬理解できなかった。
四六時中…?
「朝も昼も夜も、寝ている間もずっと全集中の呼吸をしてますか?」
「…やってないです。やったことないです…そんなことできるの!?」
なんだそれは、初耳だ。
これは驚きだぞ。
「はい。それができるのとできないのでは天地程の差が出るそうです」
「全集中の呼吸は少し使うだけでもかなりきついんだが…それを四六時中か…」
考えただけでも冷や汗が出た。
そんな事ができるのか…
「できる方々は既にいらっしゃいます。柱の皆さんやカナヲさん、○○さんです。頑張ってください」
そうか…!だから○○はあんなに強いのか!俺も○○を守れるくらい強くならなきゃ!!
「そうか…!!ありがとう!やってみるよ!!」
全っ然できない!できなーい!!
あまりのきつさに膝をついた。
苦しい!肺が痛い!!耳も痛い!!
あっ!!!
違和感に両耳を押さえた後、その手を確認した。
びっくりしたーー!!!今一瞬耳から心臓出たかと思ったーーー!!!
『わっ!た、炭治郎?どうかしたのかい?』
「○○…」
いつの間にか耳に馴染んでいた優しい声に振り向いた。
そこにいたのはやはり○○だった。
○○の顔を見て酷く安堵した俺は事情を説明した。
『なるほど!常中の練習をしていたんだね。私が教えればよかったのにごめんね』
「いやいや!!いいんだ!知らなかった俺が悪い!気にしないでくれ!」
しゅんとした○○に心が痛くなり否定を示すと、○○はぽかんとした後ににっこりと笑った。
あっ今の顔可愛い…
相変わらず可愛らしい○○に自然と頬が上がる。
『ありがとう炭治郎…私も手伝うよ』
「えっ本当か!ありがとう○○!!」
どうしよう、嬉しさのあまり両手を握ってしまった。
豆が潰れていても○○の手は柔らかかった。
大きさも禰豆子と同じくらいだろうか。
『じゃあ炭治郎、ちょっと準備があるから縁側に座って待ってて!』
○○はむんっと鼻息を荒くすると、やんわりと俺の手を解いて行ってしまった。
準備?
少しすると、○○はなほちゃん達を連れて瓢箪とおにぎりを手に戻ってきた。
「瓢箪を吹く?」
「そうです。カナヲさんに稽古をつける時のしのぶ様はよく瓢箪を吹かせていました」
変わった稽古だなぁ。
肺活量を増やすためか?
「へえー。おもしろい訓練だねぇ、音が鳴ったりするのかな?」
「いいえ。吹いて瓢箪を破裂させました」
「へえー」
あれ、今なんて?
「えっこれ?これを?この硬いの?」
「はい、しかもこの瓢箪は特殊ですから通常の瓢箪よりも硬いです」
そんな瓢箪をあんな華奢な女の子が!?
「だんだんと瓢箪を大きくしていくみたいです。今カナヲさんが破裂させているのはこの瓢箪です」
でっっか!!頑張ろ!!!
あれから十五日後、炭治郎は布団たたきを持って縁側に座っている○○の元を訪れた。
「○○。今から俺が寝ている間全集中の呼吸をやめたら布団たたきでぶん殴ってくれないか」
『こ、心苦しいけど…わかった。まかせて!』
○○はむんっと意気込むと、炭治郎の手を引き寝室へと向かった。
こんなに面倒を見られたことがなかった炭治郎は嬉しさから頬を染めた。
少しだけ、いつも構ってもらえる伊之助が羨ましくなったのは秘密だ。
最初はしっかりと呼吸ができていた炭治郎だったが、やがてそれは穏やかな寝息に変わる。
気持ちよさげに眠る彼に○○は叩くのを渋ったが、炭治郎の為を思いなんとか叩き起した。
そんな日々を続けて十日後。
炭治郎、○○、なほすみきよは庭に立っていた。
炭治郎は大きく息を吸い込むと、目の前の大きな瓢箪に向かって思いきり息を吹き込んだ。
ブオッと音がし、炭治郎の顔が徐々に赤くなっていく。
酸欠状態が近い。
手に汗を握って四人が応援する。
それに一層炭治郎が息を吹いた時、瓢箪が大きな音を立てて破裂した。
「割れたーーー!!!」
「キャーッ!」
『おめでとう炭治郎!!やったね!頑張ったね!』
○○がよしよしと炭治郎の頭を撫でると、炭治郎は次第に目を潤ませ○○に強く抱きついた。
「ありがとう! ○○が根気強く手伝ってくれたおかげだ!!」
『ううん、炭治郎が頑張ったからだよ!凄いなぁこんな短期間で!』
○○も嬉し涙に目を潤ませると、炭治郎の背中に手を回して抱き返した。
それから再び訓練が始まり、炭治郎はカナヲを追いかけていた。
カナヲと○○のどちらかに勝てば合格である。
カナヲが先攻であった。
(すごい炭治郎…ちゃんとカナヲを追えてる…!)
○○は無意識に胸の前で両手を握り、祈るように炭治郎を見つめた。
その時、炭治郎がガシッとカナヲの手を掴んだ。
炭治郎と○○は驚いた表情から明るい笑顔に変わる。
「『わーーーっ!!!』」
喜びに炭治郎は高く飛び上がり、○○も両手を握りしめてその場でぴょんぴょんと跳ねた。
反射訓練でも炭治郎はカナヲについていけており、今までのようにすぐ薬湯を被ることはなかった。
『頑張れ…!』
祈るように○○が小さく呟いた瞬間、炭治郎は湯飲みを取った。
そしてそれをカナヲの頭にそっと置いた。
湯呑の水をかける事に躊躇したのだろう。
「勝ったーーー!!」
「勝ったのかな?」
「かけるのも置くのも同じだよ!」
『合格だー!』
呆然とするカナヲを置いて四人は喜びあった。
その様子を戸の隙間から覗いていた善逸と伊之助は冷や汗をかいた。
裏山で遊んだり、盗み食いをしたり、二人は戻ってくるのが遅すぎたのだ。
次の日、訓練に戻った二人は苦戦していた。
そこにしのぶが現れ、炭治郎と○○の肩を掴み、笑顔を浮かべた。
炭治郎と○○は、しのぶの近い距離に頬を染めた。
「炭治郎君、○○君が会得したのは全集中・常中という技です。全集中の呼吸を四六時中やり続けることにより、基礎体力が飛躍的に上がります。これはまあ、基本的の技というか、初歩的な技術なのでできて当然ですけれども。会得するには相当な努力が必要みたいですよね」
それだけ言うとしのぶは伊之助の前に移動し、肩をぽむっと叩いた。
「まあできて当然ですけれども。仕方ないです、できないなら。しょうがないしょうがない」
負けず嫌いの伊之助はその分かりやすい煽りに当然耐えられず、怒りをあらわにした。
「はあ"ーーーん!?できてやるっつーの当然に!!舐めんじゃねぇよ乳もぎ取るぞコラ!!!」
『こら伊之助っ!女性になんてこと言うんだ!!しのぶさんすみません!!』
伊之助大奮起。
○○は伊之助の頭に手をやり下げさせると、己も頭を下げて土下座した。
完全に保護者である。
形はどうあれ久しぶりに構ってもらえた伊之助は、額を地面に擦り付けたままホワホワしてやる気をだした。
「大丈夫ですよ、○○君。顔を上げてください」
しのぶはそう声をかけると、次に善逸の手を両手で握り可愛らしく笑顔を浮かべた。
「頑張ってください善逸君。一番応援してますよ!」
「ハイッ!!!」
善逸大奮起。
相変わらずな善逸に、炭治郎と○○は苦笑した。
その後、九日かけて二人は全集中・常中を会得したのだった。
「やってやったぞゴラァ!!」
「俺は誰よりも応援された男!!」
『おめでとう二人とも!』
「よく頑張ったなぁ!」
しのぶと○○は教えるのが上手かった。
そして炭治郎は人に何かを教えるのが爆裂に下手だった。