鬼滅の刃
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隊士を庇ってかなりの高さから落ち、受け身を取れなかった○○は体全体と頭を打ち、血が流れる感覚に目を開いた。
腕の中で気絶した隊士を木に預けて、○○は立ち上がった。
呼吸で止血はしたが、頭から出血した事で視界が揺れている。
霞む視界で少し先に隊士がいる事に気づいた○○は、鬼の気配がしたことで急いでその隊士の元へ行き抱き上げた。
その場から後ろへ飛ぶと、一瞬の間に隊士が立っていた場所に大きな繭ができていた。
「うわあ!?何だっ!?」
『すみません!このままでいてください!』
隊士は○○の顔を見た瞬間胸を貫かれた。
一目惚れであった。
この村田という隊士は存外ちょろかった。
「いいや!君は俺が守る!君の方がボロボロなんだから!!」
『えっ』
村田は○○の腕から下りると刀を構えた。
つられて○○も刀を構え鬼の気配を探った。
鬼の気配が村田の方へ向かったのが分かった○○は、村田の前に移動すると飛んできた糸束を刀で受け止めた。
「チッ邪魔くさいわね」
女の鬼が姿を現すと、糸束が繋がった手を自身の方へと引っ張った。
当然○○はそれに引っ張られ、刀から手を離した。
少し血を流しすぎたのか朦朧とする。
○○の手から刀がなくなると、村田は片手で○○を腕に閉じ込め刀を鬼へと向けた。
「大丈夫だ…俺が守るから」
○○は困惑した。
なぜ男である自分をこんなにも密着して守るのか。
○○はまた女だと勘違いされている事に気づいていなかった。
鬼はそれを見て顔を顰めると、溶解の繭に二人共々閉じ込めた。
「『…!!』」
中の液体を飲まぬよう気をつけながら村田は刀で繭を刺した。
しかし、繭が切れる事はなかった。
○○は己が刀を奪われた事を後悔していた。
体の痛みで上手く頭が回っていなかったのだ。
溶解液に飲まれ、○○は意識を失った。
突然の息苦しさからの開放感に○○の意識が戻り、やっと呼吸ができて咳が出る。
『げほっげほっ!はあっ、はっ』
「助けるのが遅くなってすみません。大丈夫ですか?はいこれ」
繭から流れ出てきた○○の前に来た蟲柱、胡蝶しのぶはそう声をかけると○○の刀を目の前に差し出した。
『は、いっ大丈夫です…ありがとうございました』
ようやく顔を上げた○○を目に入れたしのぶは胸がキュンと高鳴ったのが分かった。
女子をときめかせる程に○○の顔は愛らしかった。
そして、所々破れた隊服が艶めかしくしのぶは目を細めた。
「こんなにボロボロになって…後で隠が私の屋敷まで連れて行ってくれるはずなので、今は休んでいてくださいね」
しのぶは美しい顔に柔らかな笑みを浮かべると、一瞬にして姿を消した。
○○は驚いて目を丸めた。
が、すぐに意識を戻し羽織を着て、気絶していた村田を先程の隊士同様木に預け寝かせると、炭治郎達を探しに歩きだした。
炭治郎達の事で頭がいっぱいだった○○は、村田が全裸である事に気づかなかった。
少し歩き、○○は髪がほどけている事に気づいた。
どうやら結紐が溶けてしまったようだ。
○○は邪魔な髪を耳にかけて宛もなく歩く。
すると、小さな話し声を耳が拾いそちらへと急いだ。
ガサッと聞こえた音に、しのぶと義勇は固め技を決めたまま音の原因を見た。
「あら?あなたはさっきの…」
『あの、言いつけを守らずすみません…えっと…大丈夫、ですか?』
○○は義勇に固められているしのぶを見て驚き、声をかけた。
その問いにハッとしたしのぶは足を高く上げ、草履から仕込み刀を出して刺そうとした。
だが自身を押さえる腕から力が抜けている事に気づき足を下ろした。
「冨岡さん?どうしたんですか急に。気味が悪いですよ」
しのぶの毒舌も聞こえないほど、義勇は○○に見入っていた。
優しげに垂れた目、利発そうな顔、綺麗な黒髪。
今は亡き最愛の姉に雰囲気が良く似ていた。
このとき○○は自分の顔を凝視し続ける青年に戸惑っていた。
「…………」
「……隊服がボロボロになっている少年を凝視するのは失礼ですよ」
その言葉に義勇はカッと目を開くと、ようやっと○○の顔から視線を外した。
全身を見ると、しのぶの言った通り○○の隊服は所々破れ、白い肌が覗いていた。
「…すまない」
『い、いえ』
視線が外れた事で、ようやく○○はホッと息をつくことができた。
「ところで、あなたはどうしてここに?」
『あの、友人を探しているんです。額に痣がある子と…』
○○の言葉にハッとして再び炭治郎を追おうとしのぶが動いた時、鎹鴉が叫んだ。
「伝令!!伝令!!カァァァァ!伝令アリ!!」
突然の伝令にしのぶはピタリと動きを止めた。
「炭治郎、禰豆子、両名ヲ拘束!本部へ連レ帰ルベシ!!」
「「!!」」
『本部…?』
繰り返される伝令に、しのぶと義勇は本部へ向かうため歩みを進める。
しかし、ふと何を思ったのか義勇は方向転換し○○の前まで来ると、自身の羽織を○○の肩にかけた。
『え…あのっ大丈夫です!』
「いい」
○○が羽織を返そうと手をかけるがその手を義勇が掴み下げさせた。
義勇は○○の手が男にしては柔っこく手触りがいい事に驚き、その手を凝視した。
なかなか手を離さない義勇に○○が困り果てているのを見て、しのぶが呆れたように声をかけた。
「冨岡さん、行きますよ。あまり人様に迷惑をかけないでください」
「………分かった」
義勇は名残惜しそうに○○を解放し、二人は今度こそ闇夜に消えていった。
その後、一人残された○○は隠によって保護されたのだった。
怪我をしているため背負われて蝶屋敷に着いた○○は、意識のない善逸と伊之助が治療を受けてベッドに寝かされているのを見て涙をこぼした。
ずっと会うことができず、不安で仕方がなかった。
二人共重症だが生きている事実を知り、ようやっと安心できた○○はゆっくりと目を閉じた。
次に目を開いたとき、伊之助を挟んで向こう側に寝ていた善逸が起き上がっているのが見えた。
『善い…』
「もっと説明して誰か!!一回でも飲み損ねたらどうなるの!?ねえ!!」
○○の呼びかける声は騒ぐ善逸によって掻き消された。
善逸に気づいてもらえなかった○○がしゅんとしていると、髪を二つに結った少女が善逸を叱りつけた。
「静かになさってください!!説明は何度もしましたでしょう!!いい加減にしないと縛りますからね!!」
少女はそれだけ言うと善逸から離れた。
怒鳴られた善逸はショックを受け布団に潜り込みシクシクと泣き始めた。
自業自得である。
その姿を苦笑して見ていた○○に、何者かが突っ込んできた。
○○はあまりの事に声が出ずベットへと沈んだ。
「善逸!!」
「ギャーーッ!!」
少しして、炭治郎の声が聞こえてきて○○は目を潤ませた。
全員が無事に戻ってこれた事に安堵したのだ。
「大丈夫か!?怪我したのか!?山に入って来てくれたんだな…!!」
「たっ炭治郎…」
善逸はボロボロと涙と鼻水を流すと、炭治郎を背負った隠に勢いよく抱きついた。
「うわああ炭治郎聞いてくれよーーーっ!!!くさい蜘蛛に刺されるし毒ですごい痛かったんだよーーーっ!!!さっきからあの女の子にガミガミ怒られるし最悪だよーーっ!!!」
「○○と伊之助は?村田さんは見なかったか?」
炭治郎の問いに善逸は隠の腹に埋めていた顔を上げた。
だるんと伸びた鼻水に隠の後藤は悲鳴を上げた。
「村田って人は知らんけど○○と伊之助なら隣にいるよ」
炭治郎が善逸の奥に視線を移す。
そこには○○のベッドに侵入し腹に抱きついている伊之助と、その頭を撫でて苦笑してこちらを見つめる○○の姿があった。
「あっほんとだ!!思いっきりいた!!というか何してるんだ!?」
炭治郎は隠の背中から下り、善逸のベッドに上半身を乗せると目を潤ませた。
「○○!!伊之助!!無事でよかった…!!ごめんな助けに行けなくて…!!」
『ううん、大丈夫だよ!気にしないで炭治郎』
○○の穏やかな声色と柔らかな笑顔に、炭治郎はついに涙をこぼした。
「イイヨ、キニシナイデ」
が、次に聞こえた伊之助の声に炭治郎はピタリと涙を止めた。
やっと伊之助の声を聞いた○○も目を丸くした。
声があまりにも低く、別人のようだったからである。
「わあああ!!!○○起きたの!?よかったよおおお!!!」
『あはは、善逸も元気そうでよかったよ』
ようやく○○が起きていた事に気づき、汚く泣き出した善逸に○○は優しく笑いかけた。
善逸の後ろにいた後藤はその笑顔に胸を射られた。
彼もまたちょろかった。
「ぐすっ…そういえば伊之助、なんか喉潰れてるらしいよ」
「『えーーーっ!?』」
炭治郎と○○は顔を青ざめさせ叫んだ。
それを気にせず善逸は続ける。
「詳しいことよくわかんないけど首をこうガッとやられたらしくて。そんで最後自分で大声出したのが止めだったみたいで喉がえらいことに」
『首をガッ…』
「自分で止め?」
炭治郎と○○は上手く頭が回らず、オウム返しをする事しかできない。
「落ち込んでんのかすごい丸くなっててめちゃくちゃ面白いんだよな。ウィッヒヒッ」
不気味な笑い方をする善逸に炭治郎は笑顔で尋ねた。
「なんで急にそんな気持ち悪い笑い方するんだ?どうした?」
悪意なき炭治郎の言葉にショックを受ける善逸に、○○はフォローもできずただ苦笑した。
診察を受けると、五人はそれぞれ怪我の具合が違っていた。
炭治郎。顔面及び腕、足に切創、擦過傷多数、全身筋肉痛。重ねて肉離れ、下顎打撲。
○○。顔面及び腕、足に擦過傷多数、後頭部、背中の打撲。
善逸。最も重症。右腕右足が蜘蛛化による縮み、痺れ、左腕の痙攣。
伊之助。喉頭及び声帯の圧挫傷。
禰豆子。寝不足。
五人は蝶屋敷でそれぞれが回復するための休息に入った。
禰豆子は寝まくり、炭治郎は痛みに耐えまくり、善逸は一人騒ぎまくった。
「飲んだっけ!?俺昼の薬飲んだ!?飲んでるトコ見た!?誰かーーーっ!!!」
後頭部、背中を打撲した○○はうつ伏せで寝るため首を痛めた。
「ゴメンネ、弱クッテ」
落ち込みまくる伊之助を
『伊之助は弱くなんかないよ!』
「がんばれ伊之助がんばれ!!」
「お前は頑張ったって!すげぇよ!」
三人で励ましまくる、そんな毎日だった。
そしてお見舞いも来た。
「あっ、村田さん!」
「よっ」
聞き覚えのある声に、うつ伏せていた○○は身を起こした。
炭治郎のすぐ側の椅子に腰掛けた男を見て○○は目を丸めた。
那田蜘蛛山で置き去りにしてしまった彼だったからだ。
(あの人、村田さんっていうのか。無事でよかった…)
○○は声をかけようとしたが、村田が炭治郎に愚痴を言い始めたのを見て話すタイミングを失ってしまった。
「そういえば、那田蜘蛛山でものすごく可憐な少女に会ったんだけど…」
村田はそう言いながらなんとなく炭治郎の隣のベットへと視線を移し、固まった。
村田の言う可憐な少女がそこにいたからだ。
だが、○○は男である。
目が合った○○は、にこりと笑って村田へと声をかけた。
『こんにちは、村田さん。ご無事でよかったです』
村田は顔を真っ赤に染めると、善逸と同じくらいの早さで○○の前に移動し両手を己の手で握りこんだ。
「ききききみはあの時の!!よかった!目を覚ましたら君がいなかったからもしかしたらって…!!」
早口で言い切ると同時に、滝のような涙を流し始めた村田を見て○○は感激した。
(あの場で会っただけの私をこんなに心配してくださるなんて…なんて優しい方なんだろう)
○○はどこまでも純粋であった。
下心丸出しで手を握られている事にすら気づかない。
「あのー、村田さん?○○は男ですよ」
「えっ」
半笑いで話に入ってきた善逸の言葉に村田は一瞬固まる。
その反応に○○がやっと勘違いされている事にに気づいた時、村田はズイッと身を乗り出すと赤らんだ顔のまま口を開いた。
「おっ男でもいい!○○君!!俺と…」
「あらあら、こんにちは。何をしているんですか」
突然聞こえてきたしのぶの声に村田は青ざめるとパッと○○の手を放した。
「あっどうも!何もしてないですさよなら!!」
青い顔のまま一息で言いきると、村田はそそくさと帰って行った。
取り残された○○は呆然として目を瞬かせた。
「あんなに慌ててどうしたのでしょうかねぇ…どうですか。体の方は」
『かなり良くなってきてます』
「ありがとうございます」
炭治郎と○○がしのぶに頭を下げると、しのぶはにっこりと可愛らしく笑った。
「ではそろそろ機能回復訓練に入りましょうか」
「機能回復訓練…?」
どうやら何か始まるらしい。
おまけ
「あっ○○君。羽織、返しておきましたよ」
『わざわざすみません!ありがとうございました』
にこりと笑顔を向ける○○に、しのぶはひそかにときめいた。
初めて恋柱の気持ちがわかった気がした。
おまけ2
「○○!笠ちゃんと拾っておいたぞ!残念だけど、風鈴は落ちた時に割れてしまったんだ…」
『わあ!ありがとう炭治郎!拾ってくれただけで十分だよ!』
にこりと笑顔になった○○に炭治郎はホワホワした。