お粗末!
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「どどどどどどどうしよう○○!汗止まんない…俺達何でトト子ちゃんの部屋にいるんだろう!!」
『兄さん落ち着いて。その汚い汗拭いて、はい深呼吸』
「すーはー!すーはー!」
おそ松兄さんと私は二人、トト子ちゃんの部屋へと招待されていた。
おそ松兄さんは、もしかしたら何かあるのかもしれないと大きな勘違いをし、緊張のあまりか大量の汗をかいていた。
トト子ちゃんはニートに興味無いよ馬鹿。
「何で○○と一緒に呼び出されたんだろう、ダメだとわかりつつも妹を含んでいけない事が起きてしまうんじゃないかと変な期待ばかりしてしまう…」
『あはは、トト子ちゃんとそんな関係になれるわけないじゃん!馬鹿なの?』
「イタタタ!心が痛い!ひどく!!…にしても何でこう女の子の部屋って可愛いんだろう…マジ良い匂いするし置いてある全ての物が愛しい…消しゴムさえ…なんか、可愛い…○○の部屋とは違って」
『失礼だなあ。生活できたらそれでいいんだから。私は可愛いものとかに興味ないし』
「ま、そうだよなあ。○○だし」
『あ、なんかムカッと来た。覚悟』
デリカシーのない兄にヘッドロックをかますとジタバタと暴れ出す。
わはは、いいぞ。いいぞ。
「いだっ!いだだだだだ!!苦しっ、アッ、アーーーーッ!!足!足つった!!」
『あはは〜兄さんマジヤバイね!』
「ごめん!まじごめん!!お願いだから話し方も力も十四松に似てこないで〜!!」
つった足を抑えながら、頭を下げるおそ松兄さんの姿を見て、しょうがないと首から腕を外した。
その時、扉の向こうから階段を上がる足音が私達の耳に入った。
「き、来た!普段通り、普段通り…!俺ならできる!」
『もう、汗拭いてもキリがないなぁ』
ハンカチでおそ松兄さんの汗を拭いてやりつつ、扉が開かれるのを待つ。
そして扉が開かれ、二人でゴクリと生唾を飲み込んだ。
扉を開けた人物、それは――…十四松兄さんだった。
「は…」
『わ〜っ』
「お前かっ!」
部屋に入った十四松兄さんは、おもむろにバットを取り出し素振りをし始めた。
相変わらず読めないし可愛いなあ。
ってそうじゃない!
『十四松兄さん!人の家で素振りしちゃダメ!』
「あいあい!!」
「あーなんだよ!呼ばれたの俺と○○だけじゃなかったんだ…トト子ちゃん、何でこの三人を?」
「野球すんのかな?」
十四松兄さんが嬉しそうに振り向き言う。
多分違うと思うと私は首を振ったが、十四松兄さんは「絶対野球だー!」と言いながらおとなしく座る。
その時、再び扉の向こうから足音が響く。
今度こそ本人かなと期待していると、扉を開けたのは――…決めポーズをしているトド松兄さんだった。
『おお』
「はっ…!?」
「あれ?」
『トド松兄さん、トド松兄さんってば』
「うああん!わああん!!」
トド松兄さんも十四松兄さんと同じように素振りをし始めた。
だが十四松兄さんとは違い、トド松兄さんは涙を流しながら、やけくそに素振りをしていた。
だから家の中でやるなよ。
「泣くなよ、いやわかるよ?俺もそういう事かなと思ったよ、でも違うから」
「期待したーーー!!」
「わかんないなートト子ちゃん何する気だろ?」
「野球かな!?」
『もうみんな静かに〜』
騒いでいるとまたまた部屋の向こうから足音が聞こえる。
今度こそ、今度こそトト子ちゃんが来るはずだ。
本人に自分達を呼んだ理由を聞こう、そう思っていたのだが扉を開けたのは――…某ロックバンドのギタリストのような風貌をした一松兄さんだった。
『おっふ』
「がっ…!」
「あ……」
「これはやばい…!」
そして一松兄さんは部屋に入り、隅っこの方で完全に目が据わった状態で座り込んでしまった。
いいねいいね!似合ってるよお!
短い眉がかわいいよお
「なぁ○○、トド松。どうしたらいい?すっげー見てくるんだけどいじっちゃダメだよね」
「絶対ダメ!殺しに来るよ」
『ん〜、話したいけどここはそっとしておいた方がいいよね…ほら十四松兄さん見ないの』
「っていうかトト子ちゃんは?」
「知らない…とりあえず部屋で待っててって言われた」
一体何を考えているのだろうか。
顔を見合わせ話していると、再び足音が聞こえる。
次こそはトト子だと思っていたのだが、扉を開けたのは――…ワイン片手にバスローブを着込んでいるカラ松兄さんだった。
『「「うっわー…!」」』
「……○○、トド松どうする?警察呼ぶ?」
「怖いよね~!」
『あんなのが兄さんってだけで涙が出るよ』
「怖いよ!妹静かに泣かせてる上に家に呼んだだけで風呂上がりのバスローブ姿で来るんだよ?オカルトだよ。ああ、○○ほら!これで涙拭いて!」
よしよしと宥められ、ようやっと落ち着く。
うんうんと頷くトド松兄さんだったが、そういえばチョロ松兄さんが来ていないと部屋を見渡した。
一体どうしているんだろう、と思っていると同時にまた足音が聞こえた。
きっとチョロ松兄さんだと思ったトド松兄さんとおそ松兄さんは、きっとダサい格好して来ると吹き出し笑っていた。
そして扉が開かれたのだが、部屋に入り込んできたのはチョロ松兄さんではなかった。
誰だか知らないが、ものすごい数の人達が大勢入ってきたのである。
「どゆこと!?なんかすげー来た!」
「野球!?」
「なんかカメラもいるし!」
『んー…これだけの人数を集めたとなると…』
「野球!?」
「野球じゃないよ十四松兄さん」
「え゛ーーー!!野球じゃないのお!?」
野球をしないと言う事実をやっと受け止めた十四松兄さんは、ショックのあまり私に抱きつき「野球がしたい!野球がしたいー!」と子供のように駄々をこねて泣き出してしまった。
可愛い。
どうしよう、このままじゃ鼻血出る。
『ね〜野球したいね〜帰ったらキャッチボールしようね〜』
「うん!やる!!」
「あっ!クソッ十四松抱き着くとか羨ましいな…!ってかやっぱチョロ松だけ呼ばれてないのか」
「ねー。十四松兄さん後でそこ変わってねー」
そして再び扉が開かれる。
そこには遂にトト子ちゃんの姿があった。
しかし、その傍には何故かスーツを着ているチョロ松兄さんの姿があった。
トト子ちゃんが部屋に入ると、無数のシャッターが切られる。
まるでその様子は、テレビでよく見る記者会見のようだった。
何なんだこれはと首をかしげていると、チョロ松兄さんが口を開く。
「えー、本日は皆さんお忙しい中、トト子ちゃんの為にお集まりいただき、誠にありがとうございます。マネージャーのチョロ松です」
「マネージャー!?」
「本日はトト子ちゃんから皆さんに重要なお知らせがあります、それじゃ…」
「はい…」
トト子ちゃんは涙を流しながら、皆さんに隠していたことがあると告げる。
「AVに出てたの?」
「こら!」
「っだあ!」
十四松兄さんの邪魔が入ったが、トト子ちゃんは気に止めずに言葉を続けた。
「実は私…アイドルを始めたんです!!」
まさかの言葉に、全員がぽかーんと口を開けトト子ちゃんを見上げる。
チョロ松兄さんは補足として説明をしだす。
トト子ちゃんはただ趣味でアイドルをやっているのではなく、両親の魚屋が少しでも有名になればとお店の宣伝も兼ねてアイドルの道を選んだのだという。
いわば美しき親孝行の形なのだ、と。
「しかし、この度大きな問題が浮上した…そうだね?」
「はい…実は私…近々デビューライブを控えているのですが…その、えーっと…ああーっ!ダメチョロ松さんとても言えないわ!!」
「頑張れ!自分の口で言うんだ!!」
二人はチラリと自分達を見上げる私達を見た。
一体何を見せられているんだ。
セリフを忘れたのか、遂に二人は手の裏に隠したカンペを見ながら、棒読みで話し始めたのである。
なんだこれ。
「でも、チョロ松さん」
「大丈夫、皆さんきっとわかってくれるよ」
「わかりました。トト子皆さんを信じます」
カンペ見てるよ!
完全に芝居だよこれ!
「実は…その、デビューライブのチケットなんですが…全然売れてないんです!!!」
「え……そういう事……?」
どうやら私達を呼んだ理由は、この売れていないチケットを買わせるためのようだ。
しつこくチョロ松兄さんはトト子ちゃんのお店の為、彼女の両親の為で自己満足のアイドル活動ではないのだとアピールしてきた。
そして結局私達はと言うと――……
*
「ふざけんなよチョロ松!!チケット代すっごい高いし!!8500円て!!タオル2万て!!これただの店の手ぬぐいだろ!!」
「カラ松兄さんに至っては10万くらいいかれたよ!!」
「まぁこれはこいつがバカなだけだけど…」
「え、皆自分の意思で買ったんでしょ?」
そういうチョロ松兄さんに、おそ松兄さんは無理矢理買わされたんだと言う。
だが彼女の両親の為だから良いじゃないかと言うが、トト子ちゃんの両親はベンツに乗っていることから、そこそこ繁盛しているだろうと反論した。
『あれ、なんか私だけみんなと違くない?』
周りを見渡して気づいた私はチョロ松兄さんに問いかける。
私は頭に犬耳を付けさせられていたのである。
私猫派だけど、猫耳だったらにゃーちゃんと被っちゃうよね。
「ああ、それは○○専用のトト子ちゃんグッズ」
『そうなの?』
「犬耳で可愛らしく応援された方が、トト子ちゃんも喜ぶだろ?あと語尾は"わん"ってつけないとダメだから」
『よくわかんないけどわかった』
「○○…」
『なあに!一松兄さん!』
「ほんと駄犬だな…今語尾にわんって付けろって言われたばっかだろ。可愛いんだから自信もってやれやコラァ!!!」
『ありがとわん!了解だわん!!』
血走った目の一松兄さんに怒鳴られ、私はそれに萌えながらこくりと頷いた。
「はぁ…チョロ松兄さん、ほんと女の子の絡むとポンコツになるよね…」
「ちょっと待って、怪しいな…お前なんかお礼してもらってるだろ」
「そうなの!?」
「正直に言え!協力する代わりにお前トト子ちゃんに何してもらった」
「べっ、別に何も?」
「十四松、卍固め」
おそ松兄さんはチョロ松兄さんにやれと言ったつもりだったのに、何故か自分がされる羽目になってしまった。
トド松兄さんはそれで本当に何をしてもらったんだと問いかけると、チョロ松兄さんは頬を染めながら「一回だけ、背中トントンしてもらった」と話した。
ハッ、くだらな。
「あ!来たよ!」
「トト子ちゃんだ!トト子ちゃーーーん!!」
スポットライトに照らされ、軽快な音楽と共にトト子ちゃんが魚の被り物を纏いステージに現れた。
「ウロコを剥がさないで~胸がいっぱい~」
「イカはいっぱい!!」
「恋はマボロシ~」
「一夜干し!!」
「人類みな、エラ呼吸~~」
「パクパクパク!イェアーーー!!うわーーーー!!可愛くない!?」
トト子ちゃんの歌に完璧な合いの手を入れたチョロ松兄さんは興奮気味に振り向く。
それに続くように兄達も「すっげー可愛い!」と言いながらステージの傍に走って行き、オタ芸をやり始めた。
『…平和だわん』
私は遠い目をしながら、はしゃぐ兄達を見つめた。
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