短編
名前
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パパラチア
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朝から嫌な予感はしてたんだ
「○○、黒点だ…行こう」
『うん。ルチルはいいの?』
「あいつは働きすぎだ。今日は休ませたよ」
『…ふーん』
なんでかって言われるとわかんないけど
「っいつもより数が多い!」
『そうね…!』
『っ、パパラチア!上!』
なんとなく……かなぁ
「うおっ」
バキィンッ
咄嗟に前に出て、砕け散った僕の体がそこら中に落ちる
キラキラ雨みたいに降ってきて、自分のことながら綺麗だと思った
「ッ○○!!」
『だめ』
『走って、パパラチア』
彼の両腕は割れてしまって、僕のそばに落ちていた
このままでは、2人とも連れていかれてしまう
なら、
それならせめて貴方だけでも
「俺はお前を置いていけない!」
『駄目。貴方が連れていかれたら、誰がルチルを支えるの』
ルチルにはあなたしかいない
あなたにもルチルしかいない
僕はいつも入れない
ずっとあなたを見てきたのに
なのに
あなたはずっとあの子を────
『ねぇ、お願い…逃げて』
『僕は大丈夫だから』
『走って、先生を呼んできて』
本当は行ってほしくなんかない
大丈夫なんかじゃない
月になんか行きたくない
「ッ○○…ごめんな」
くしゃくしゃに顔を歪めて
君は走っていった
今まで見たこともないくらい速く
ああ、まって
やだ
『…ぃかないでっ』
体がふわっと宙に浮く
足が
手が
『やめて!それは持っていかないで!!』
『僕はどうなってもいいから!それだけはっ!!』
どんなに醜く喚いたって
届きはしない
ああ、君の綺麗な両腕が
だめ
だめだよ
『ごめんなさいパパラチア』
君の両腕を守りきれなかった
最後に君に、酷い選択をさせてしまった
あんな顔をさせてしまった
地面が遠ざかる
遠くから色とりどりのきらめきが見える
そんなに必死に走ってくれてありがとう
僕のために悲しんでくれてありがとう
どんなに離れてても見えるよ
君のことだけはしっかり
ない両腕を必死に伸ばしてくれた
もう届かないのに
「○○ッッ!!!」
『あは、』
必死に走って、僕の名前を呼んで、手を伸ばしてくれた
もう十分だ
ありがとう
『ねぇ…だいすきよ……』
きっともう2度と会えないよね
僕は君が好きだった
最後くらい伝えればよかったのに
いくじなし
そのうち視界は白んできて、君のことすら見えなくなった
さよならだ
叶うならば
僕の事を忘れないでいてくれたら嬉しいな
なんて思うのは
酷いことですか。