短編
名前
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アンタークチサイト
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冬が来てみんな冬眠をしてしまった中、私はひとり校内を歩いていた
「お前、今年も寝ないのか?」
突如後ろからかかってきた声に、少し驚きながらも普通を装い振り返った
『はい、今年も貴方に会いたくなってしまって』
「なっなにを言ってるんだお前は!」
素直に思ったことを言っただけなのに、怒られてしまった
照れ隠しもここまでくると困りものだ
可愛いから許すけど
『今回も例年のアレをしてきたのですか?』
「!?なんで知ってるんだ!!」
『ふふふ』
「笑って誤魔化すな!」
やっぱりアンタークと話すと癒される
こんなにもいじりがいのある子はジェード以来かな
『そういえば、今年はフォスも一緒に仕事をするんでしょう?一人寂しくじゃなくてよかったですね』
「別に一人は寂しくない。それに、あいつがいても邪魔なだけだ」
『そんな事言って、寂しいくせに』
口に手を当ててぷぷぷと笑ってやると、今度は怒りで顔を赤くさせた
忙しいのねあなた
「さっきからなんなんだお前は!!今から仕事に行くからお前に構ってる暇はない!もう行くからな!」
ぷんぷんしながら私に背を向けた彼は、カツカツとヒールを鳴らして消えていった
あーあ、私もアンタークと一緒に仕事がしたいなぁ
硬度も靱性も弱い私が行っても、役立たずになるのはわかっているから口には出さない
フォスもアンタークも脆いけれど、あの運動神経ならば私より俄然役に立つ
『私も連れてってほしかった』
こんな事、アンターク達の前では言えないけど
『フォス…どうしたんですかその腕…!』
武器を作っていると、ボロボロになったフォスが先生に抱えられて戻ってきた
しかも、腕は合金になっている
「○○…ごめん…アンタークが月に…っ」
ゴトッ
『ぇ…』
思わず手に持っていた武器を落としてしまった
ああ、後少しで完成だったのに
フォスから告げられた言葉をうまく飲み込めなくて、下手くそな笑みを浮かべてしまう
『…そう、そうなんですね』
この感情はなんだろう
胸の奥から溢れてくるようなこれは
熱くて熱くて、たまらないこれはなんだろう
『そう、ですか…』
あまりの事にその場にへたりこんでしまう
顔を見られたくなくて、手で覆って隠した
どうして最後に喧嘩別れのようなことをしてしまったのだろう
最後くらい笑顔を見たかった
彼の美しく慈しむような、あの笑顔をもう一度向けてほしかった
「っアンタークが… ○○にごめんって…それと」
本当はお前と… ○○といた時間は寂しくなかったよ
今度こそ大声をあげて嘆いた
大好きな冬の石は、月に消えてしまいました