宝石の国
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フォスがみんなを起こしに行っている間、私は医務室の整理と図書室の整理。
各部屋の整理に回っていた。
冬の間に散らかしたからなぁ、急がないと。
「あ、ガーネットおはようございます」
『おっ!おはようルチル。よく眠れた?』
「はい、アンタークやあなたが流氷を処理してくれたおかげですね。例年通りぐっすりです」
フォスからアンタークのことを聞いたのか、目を伏せながら寂しそうに笑うルチル。
気遣わせちゃったかな。
『…そっか、よかったあ』
「…私も手伝います。ぱっぱと終わらせて朝礼に行きましょう」
『うん』
「あ、ガーネットだ!おはよ〜」
「おはようガーネット〜」
『はいはい、みんなおはよう!起きて早々元気だなぁ』
ルチルと朝礼に向かうと、既に集まっていた宝石達からのおはようコールがすごい。
おお、囲むな囲むな。
『ふは、なんかやっと肩の荷がおりた気がするなぁ』
「お疲れガーネット」
「頑張ったのね」
年長組はよしよしと私を撫で回し、弟達はひしっと抱きついてくる。
嬉しいけど窮屈ですとても。
お兄ちゃん割れちゃう。
「みんなおはよう」
「「「おはようございます。先生」」」
みんなでじゃれていると、先生が来て1人1人の顔を見回していく。
私と目が合うと優しく笑った。
やっぱりみんなのお父さんだなぁ。
「22日目にアンタークチサイトが連れ去られた。彼はガーネットと共に善戦したが、助けが間に合わなかった。すまない…アンタークの後任は」
「すいません、遅れました!」
凛とした声が響き渡り、全員が振り返ると、そこには冬の間に変わってしまったフォスの姿があった。
みんな困惑しているのか、ざわざわしはじめる。
「アンタークの後任は、アルマンディンガーネット、フォスフォフィライトが務めた。」
「「「「えっ」」」」
「フォスフォフィライト。アンタークが連れ去られた詳細を述べよ」
「はい」
先生は私に気を遣ってか、フォスに説明させるよう昨日のうちに話を聞いた。
両腕と片足をなくしたことで、その分記憶も無くしているだろうと先生は言った。
正直あんまり気にしていない。
私は素材過多だから。
まだ全身ちゃんと、アルマンディンガーネットで構成されてます。
「雰囲気が?」
「ああ……ガーネット」
『また後で詳しく言うよ』
「アンタークは僕を庇って連れ去られた。状況を説明する」
ヒュルッと腕の合金を伸ばし駒を置いていくフォス。
みんな気味の悪いものを見るような目で見ている。
可哀想だからやめてあげて。
「見たことないひとまわり大きな月人が8体いてええと……そうだな。このくらい、器を囲むように座し矢を放ってきて…」
フォスが合金であの時の月人の形を再現すると、みんなは怯えてイエローとボルツ。
私、先生の後ろに隠れて様子を見ている。
おい、邪魔だぞお前ら。
「フォスそれ……腕…?なの……?」
「あっ、ああ。流氷に両腕を取られて代わりに運良く金と白金の合金がついたのでそのまま使ってる。き、危険なものでは、ないと……」
フォスが合金をかわいらしい花の形に変えると、驚いたヘミモルが転けて割れてしまった。
し、仕事が増えた…
医務室でヘミモルを治して白粉を作っていると、フォスが訪ねてきた。
「今まで気にならなかったけど。全身ハデで恥ずかしくなってきた…ああ、腕はいいや。どうせ伸びて白粉落ちるから」
「ハイハイ」
ルチルに白粉を塗ってもらって、フォスが立ち上がる。
「シンシャ、元気だった?」
「別に、いつも通りでした」
『気になるなら、直接会ってみれば?』
「…いや、話すことないし……」
フォスが気まずそうに目をそらした時、フォスの後ろから木の枝が伸びてきたのが見えた。
出たな好奇心旺盛な宝石共。
フォスの話題でみんなが騒がしくなってきた時、ルチルが棚から物騒なものを取り出してフォスを追いかけて行ってしまった。
はあ、また散らかして…
医務室は整理整頓って言ってたのはどこの誰だよ。
医務室の片付けが終わって、会議室を通りかかるとジェードが先生に抱っこされていた。
え、なんで。
次の日の朝、ルチルとジェードと話していると遠くからユークが走ってくる。
ああ、フォスの事かな。
「ガーネット!ルチルにジェードも!もしかしてボルツとフォスに組む許可を?」
「ええ。ただ、例によって先生のお休み中のみ有効です」
「あくまで仮の決定だ。先生なら新しい試みは必要と仰ると意見が一致した」
『ま、今だけ限定って事よ』
私達の言葉を聞いたユークは顔を顰めた。
「ダイヤはなんて?」
「大丈夫」
「あっ、いたのね」
「うん、ボルツは決して間違わない。あの子の判断はいつも正しくて…ほんと、イヤになるわ」
綺麗に花を飾った花瓶を抱いて、小さく笑ったダイヤは無理をしているように見える。
ダイヤ以外のみんなと顔を見合わせて、どうするか話しているとアレキに呼ばれた。
ひどい顔だなお兄ちゃん。
「ふあ〜あ、ごめん。ありがとガーネット…昨日分の月人報告まとめるのに、朝までかかっちゃって…修正手伝ってくれてほんとありがと〜」
『気にしないで。アレキは今のうちに少し寝なよ、起きたら散歩にでも行こうか』
「うん〜」
アレキが寝転がったのを見て毛布をかけてやろうとすると、部屋の前をダイヤと謎の大きな月人が横切って行った。
と思ったら、それを追っていたのかすぐにボルツとフォスが顔を出した。
「『は』」
「ガーネット!アレキ!」
「なにあれ…!」
「興奮するな月人マニアめ!見たな!どこいった!」
『向こう!』
ダイヤが走っていった方向を指さすと、ボルツはすぐにそちらに走りながら指示をした。
「ガーネット、アレキ、フォスはやつに見つからないよう校内を捜せ!残っている者がいたら合流しろ!僕は外からやつを捜す!」
『あ!待ってボルツ!ダイヤが追われてんのはお前の作戦?』
ボルツは目を見開くと、イエロー並の瞬足で消えて行った。
作戦じゃなかったのか…
ダイヤ、無事でいてくれ。
3人で校内を回っていると、目の前を少し小さくなった月人が飛んできて壁に激突した。
うおおおお!?びっくり!!
「あれ!なんか雰囲気ちがくない!?」
『フォス!』
「きゃっ」
月人が苦手なアレキちゃんを下がらせると、月人はフォスに攻撃を仕掛けてきた。
ああ、剣がこんなとこまで飛んできて…
「ふっ!け、けっ剣…だっ、だめだ持ち上がんない!合金足りない!ガーネットかアレキ斬って!」
「むっ、ムリムリムリムリ!あたしホントは月人見るのもだめだって先生に…!」
「んじゃあガーネット!!お願い!」
『おう!ちょっと待ってあれええええ!!???』
「「ガーネット!?」」
フォスに言われて剣を握ると、外から来た別の月人に腕を掴まれて吹っ飛んだ。
あっぶな!割れちゃうだろうがよ!!
咄嗟に持っていた剣をアレキの前に投げて、私は自分の剣で月人を抑える。重いなこいつ!!
『っごめんアレキ!フォスをお願い!!』
「ガーネット!…うっ、し、仕方ない!」
アレキの声が聞こえて、抑えながらそちらを見ると綺麗な水色が真っ赤に染まり始めた。
きたか。
スイッチが入ったアレキちゃんは秒で月人を刻むと、ぼああああああという謎の奇声をあげて興奮状態に入った。
いつ見てもクレイジーだな。
『ああっ!しつこいなあ!もう!!』
私が苦戦していると、上から3体の月人に襲われているボルツが降ってきた。
あっちのが大変だった。
「ガーネット!ボルツ!」
フォスが私の方の月人と、ボルツの月人3体をまとめてアレキの前に突き出す。
それを見たアレキは、さっき同様一瞬で切り刻んでしまった。
「ああ、赤い方のアレキか。相変わらずイカレてるな」
『お前が言うな』
「2人とも知ってた?」
「『月人を見るとああなる』」
アレキが倒れたのを見て、起こしに行こうとするとボルツに腕を掴まれた。
「まだだ」
『うそぉ』
ボルツの腕を優しく外して剣を構えると、小さく刻まれた月人が形を変え始めた。
変形型?やっかいね…
『ほえ??』
走り出そうとすると、月人達は前世での子犬のような生き物に変化した。
え、か、かわいい。
目を怒らせた月人は、私達3人にポコポコと体当たりしてくる。
はわわ、かわいいいい…
「これを…刻むのはちょっとねぇ……」
『か、かわいくて斬れないぃ…』
「あ、ガーネットはわかってたけどボルツでもムリなんだ……お?」
フォスの腕からするっと下りた月人達は、一斉に外へ走り出してしまった。あーあー。
「に、逃げた!」
「しまった!そういう作戦か!」
『…あれ、でもこいつら逃げないな』
私の言葉でバッと振り返った2人は、私の手や足や頭に引っ付いている月人を見て、無言で顔を見合わせ頷いた。
そして急にボルツが私を抱えて外に走り出した。
その後ろをフォスがついてくる。
ええええなにこれええ…
外へ出て、イエロージルコンペアの見回り区域につくとボルツが声を張った。
「イエロー!この辺でふわふわの!それだー!!」
イエローがポンと頭の上に月人を乗せると、よほどイラついてるのかボルツの額が割れた。
え、お前が割れたの私初めて見た。
イエローの頭の上にいた月人は、私を見るなり一目散にこちらに駆けてきて腕に収まった。
わあ可愛い。
「これで4匹か…次行くぞガーネット」
『おー!』
『誰かー、出してくださーい』
あの後学校へ行くと、みんなが走り回って月人達を捕まえていた。
それを見たボルツは私を中心に捨て置き、見事私は餌にされたのだった。
なぜだか知らないけど、私と目が合うと一目散に駆けてくる。
これがこの世界での私の特殊能力なのか。
だからクラゲも虜にできるのか、なるほど。
まあ、それは置いといて。
月人をなんとかして捕まえたかったみんなは、月人達が私に群がっている間に柵を作って出れないようにしたのだ。
あの、出してください。
「ガーネット…せめて先生が来るまで我慢して…」
「おい離せ、今すぐガーネットを出してやらないと」
「はい、議長ストップ。そこの年長組もおとなしく!先生が来るまでだから!」
「107…これで全部、と思いたい」
「いいでしょう」
まあ、先生が来るまでならいっか。
このモフモフに包まれるのも前世以来で、特段悪い気はしない。
「やれやれ……アレキ、見て平気?」
「これならちょっと……薄目で見れば…。出現時からの状況をまとめたいわ」
「あーっとね。最初は…」
『は?あ、えっ!?ちょっと!!?ぶわっ!』
月人が急に合体を始めたかと思うと、どんどん大きくなり最初の形態に戻って柵を壊した。
あの、服離してくだビリビリッ……つらい。
「ワン!」
「なんか、叫んだ……」
「ていうか、ガーネット!むっちゃ服裂かれて掴まれてんだけどあれ大丈夫なの!?」
「ああああ!!?おい!お前ら俺のかわいいかわいいガーネットを見るな!!やめろ!!!」
「イエローうるさい」
『ひゃ〜たすけて〜!』
上の服はビリビリに裂かれて、足は掴まれて宙ぶらりん。
そして問題なのはほぼ見えてること。
そろそろ恥で自壊しそうなので離してください。
おいガン見するなお前ら!!
『ぎゃっ!!あっぶな!』
急になにを思ったのか、月人はわらわらと逃げる宝石を見て手を振りかざした。
いや振動やば。
てかみんなに手ェ出してんなよわんころ。
「アレキ!変身してもういっちょ!…のっ!」
「ハズレの方のアレキだ」
「にゃっ!」
「うっ!くっ、ガーネット…!」
悲鳴と呻き声が聞こえた方に視線をやると、私と全く同じ状態のオブ子と何故か腹を潰されているジェードが逆さの視界に映った。
ジェード、こんな時まで私に手を伸ばしてくれるのか…大好きだぞ弟よ。
でも今ほぼ裸だから見ないで。
「まて!私が相手だ!かかってこい!」
キラッキラの合金を使い、みんなの姿を催した囮を作り出したフォスも、呆気なく月人に取り込まれてしまう。
ただオブ子とジェードが解放されたのはよかった。
フォスも多分大丈夫だろう。
『きゃっ!!?』
急に激しく揺れだして一瞬わからなかったが、どうやら今来た先生に向かってコイツは走り出したみたいだ。そんな…!
「「「『先生!』」」」
思わずグッと目を瞑ると、急ブレーキがかかって一瞬意識が飛んだ。あ、あぶねぇ。
「おすわり。ふせ。あご。いい子だからガーネットを離してあげなさい」
「わう!」
『ぐあっ!!?』
先生の声に合わせて月人が動く。
先生なんで犬に教える芸知ってるの…
ていうか先生受け止めてくれてありがとう。
フラフラしながらみんなのもとへ戻ると、全員から抱きしめられるという新手の攻撃をされた。嬉死。
「散々だったわね、ガーネットも…はい!これあげる!明日からこれ着なさいね!」
『はは、ありがとうベリル…』
みんなが学校の修復に回っている中、私はベリルの服飾室で予備の夏服を受け取っていた。
ビリッビリに裂かれたもんなぁ。
あの犬…かわいいが許さんぞ。
途中から修復作業に加わった私は、イエローやスフェンなどのお兄様たちにわしゃわしゃともみくちゃにされ、あのデカイ犬の尻尾の上に投げられた。
あ、ふわふわ。
みんな先生が手懐けたのを見て怖くなくなったようで、続々と犬のそばで眠りにつきだす。
まあ、今日はよく頑張ったし…いいか…おやすみ。