宝石の国
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あれから300年。
私は800歳になりました。
フォスの教育係に任命された私は絶望しましたが、フォスはかわいく、素直でいい子だったので世話のしがいがありました。
結果、何もできない弱い子へと育ちました。
もともとの硬度が低くて戦争は無理。
医務、戦略計画、服飾織物、意匠工芸、武器制作 他、彼は何物をも通さない堅牢無比な不器用。
の癖に度胸だけは余ってて、憎らしさはありつつもやはり可愛い可愛い末っ子なのに変わりはありません。
ゴーーン ゴーーン
『…鐘』
持っていた布と針を置いて、代わりに武器を持ちレッドベリルと共に外へと走る。
みんなが集まっているところまで行くと、モルガとゴーシェが倒れているのが見えた。
あちゃー報告無しだったのかな
「…敬老の精神か」
「っくる!下がれぇ!!」
いち早く良くない気配に気づいたジェードの合図で全員が後ろへと避難する。
あ、フォス。
「まだ、早いわバカモノ!」
先生の怒号でそばにいたフォスが粉々に砕け散る。
あーあーもー、またルチルの仕事増やして。
『ルチル、フォス治ったよ。今度はモルガの方するね』
「ああ、ありがとうございますガーネット。助かりました」
モルガが座っている前にしゃがんで欠片を受け取る。
「わりぃ、ガーネット。さんきゅー」
『あんまりやんちゃしちゃ駄目だって。先生も歳なんだから心配かけさせんなー』
「もうっ失礼だよガーネット」
『ムキになるなよゴーシェ、冗談だって!』
モルガの足を治してポンポンと白粉を叩いてやる。
『はい、おしまい』
「ありがとな。よし、持ち場に戻るか」
モルガとゴーシェが走り出すと、フォスがその手をパシッと掴んだ。あぶなっ
「つれてっ「断る」」
「断られない!僕が先生にチクんなかったら2人とも今頃月だぞ!わかってんのか!」
「ルチルーガーネットー。こいつの心と体の硬度入れ替えれない?」
「今の医療ではちょっと」
『ふむ、難しい問題だ』
「ガーネットまでそんなことを!どうにかしてこのしょっぱい仕事から僕を逃しなさいよ!」
暴れだしたフォスを全員が冷めた目で見ていると、優しいゴーシェがフォスを宥めに行った。
いい子だなぁゴーシェは。
「始まる前から僕らを助けたすっごい仕事じゃない?僕と替わる?」
言い淀んだフォスへと、ゴーシェが剣を持った手を伸ばす。
あ〜なんていい子なんだ。
ごめんねゴーシェ、あとで厳しく言っとくから。
「ひ、ひとのものをとるほど軟弱じゃない。…とでも言うと思ったか!甘いわね!」
ポイッと画板を捨てるとゴーシェの剣を勢いよく奪ったフォス。
ちょっとは痛い目見て反省なさいよ。
鞘からすっぽ抜けてフォスの頭に落ちた剣は、運良く投げた画板越しに刺さった。わお。
「あっ開いてない!よかった〜〜ほんとに取るとは思わなかったよ〜ゴメンね。」
「へぇ」
「おや」
『わあ』
「おい、当たれと思ったろ」
「わりぃ」
てへ、バレちったか
「んもー、わかったよ仕方ないなあ。僕の味方はおまえだけだよ」
いじけたフォスは先生からもらった画板を抱きしめ呟いた。
まったくもー
『…はあ、ほらほら出てった出てった。今回はもう手伝わないからね』
「えーーー!ガーネットのアホ!ケチ!クラゲバカー!」
いかにもな捨て台詞を吐いてフォスはどこかに走っていった。
アホ、ケチ…お兄ちゃんちょっと傷ついた…
「なっ!?ちょっとガーネットになんて事言うんですか!ちょっ、お待ちなさい!!」
『いーよ、ルチル。しばらくほっといてもまたケロッとして帰ってくるから。モルガもゴーシェも怒んないの!私は平気だから!あっ、こらモルガ!…はぁ、まあいっか』
白粉を棚にしまってから、今度はペリドットの紙制作を手伝いに行く。
はあ、毎日充実してるわ。
『やっほーペリドット。お手伝いに来ましたよー』
「お、ありがとうガーネット!そういえばさっきフォスが来たぞ。博物誌に書けるような新しいものないかって」
『ばっかだなぁ、あいつも。少しは自分で動いて調べないと、そんなもの見つかんないのに。育て方間違えたかな…』
「お前は昔も今までも、優秀な教育係だよ。こればっかりはフォスの気持ちの問題だ。ガーネットは悪くない」
『お兄様、結婚しましょう』
「けっこん?なにそれ?」
ペリドットお兄様一生推す。
「ガーネットー!新しいものなんにも見つかんないよ〜!」
『あれ、フォスにしては続いてるのね。偉いぞー』
久しぶりにクラゲを見に来ていると、どこからか来たフォスが隣に座り込んだ。
「えへへ、ちょっと頑張ってみようと思って」
いい子いい子してあげるとニコニコと笑うのが可愛くて、どうしても甘くなってしまう。
ダメ兄貴だなぁ私。
「クラゲの観察か?博物誌頑張ってるな。でもガーネットを巻き込むのはどうかと思うぞ」
通りかかったジェードがわざわざ声をかけてきた。
なんだよムスッとしちゃって、可愛いな〜流石私の弟。
「いや、水に映る僕もかわいいと思って。なんてなー!見りゃわかんだろ途方に暮れてんだよ!やべーなんも思いつかねーよ!ジェード議長さんよー!」
フォスはジェードを振り返ったかと思うと、ガシッとジェードのおみ足に飛びついた。
あ、ずるい。
「なっ、ばかっ!危ない!」
フォスが割れないよう気を使って座り込んであげる議長優しい。キュンとくるわ。
「アイデア、待ってます」
「なんのだ」
「それは言えない」
「それじゃわからんだろ」
あーだこーだ言う可愛い弟達をニコニコ見ていると、後ろから持ち上げられた。
『わっ!』
「発見への道は継続だ」
「「『先生』」」
私を抱き上げたのはやはり先生だった。
なんで抱っこしてんの、嬉しいからいいけど。
「少し本堂にいる。何かあったらすぐ知らせるように」
「はい!」
「へへー先生昼寝っすかー?」
「瞑想と言いなさい」
先生は片手で私を持ち直し、少ししゃがんでフォスの頭を撫でた。
「くれぐれも無茶はしないように、よいな」
「へーい」
…私いつまでだっこされてるんだろう 。
「それからガーネット。最近さらに仕事を頑張っているようだな、いい子いい子」
『んへへ、それほどでも〜』
「あまり根を詰めすぎないように頑張りなさい」
それだけ言うと、私を地面に下ろし本堂へと歩いて行った。
「いーなーガーネット。僕も抱っこしてほしかった」
『じゃあお兄ちゃんが嫌になるまで抱っこしてあげるー!』
そう言ってフォスを抱き上げるときゃらきゃら笑った。
やっぱ末っ子かわいいー
「…フォス、そろそろ仕事に戻れ」
「えー!ううぅ…」
「ああ、ようするにアイデアがでなくて唸ってるんだな。うーん…最近なにか」
ジェードが顎に手を当てて、思い出そうとしているところにルチルが来た。
あ、トンカチ持ってる。
キンッ
「きっ!!」
お、その悲鳴ひさびさ聞いた。
「ルチル…なんのつもりだっ…」
よほど響いたのかしゃがみこんで耐えるジェード。
うんうん、キツイよねそれ。
「衝撃テストです」
長々とした説明だったので要約すると、100年に1度の靱性調査をしているってだけの事だった。
「ご協力を」
うわルチル強いな。足払いうますぎだろ。
キンッ
「さすが堅牢のジェード!音が違う!やはり一級ですね」
「ヤブ医者め…」
おー、ボストンクラブだ。流石。
「んっ!」
「あなたは結構です。断トツ最下位なので」
フォスが注射の時のように腕を差し出すが、呆気なく断られていた。
しょうがないよフォス。
ルチルはお前を治すのがめんどいんだよ。
「ガーネット。腕出してください」
『ええー私も?』
「大丈夫です。あなたには優しくしますから」
『うっ、そんな事言ったってなびかないわよ…』
ルチルに長い手袋をスルスルと脱がされる。
うわぁよして〜
「ほらほら大丈夫ですよ〜」
『やあん、えっち〜!』
カンッ
パキッ
『いっ』
「ふむ、大丈夫ですね。こればっかりは裂開があるのでしょうがないです」
『全然優しくないじゃん嘘つき』
「それはすみません…さっきから何なんですかそこの2人は」
ルチルの言葉で2人の方を見ると、頬をポッと赤らめて照れていた。
お兄ちゃん達いかがわしくてごめんね!
「ガーネットのえっち〜で胸キュンがとまらない。いかがわしすぎる」
「あんまり変な声出さないでくれるか…」
「『ごめんあそばせ〜』」
じゃあねルチルと手を振ってからフォスの話に戻す。
こうやって年下からかうの好きなんだよね。
シンシャとかボルツあたりにやった時も面白かったよな〜
「ああそうだ。思い出した」
『ん?』
「アイデアといえば最近ダイヤモンドが新しい戦い方をしていたな。よくあんなこと思いつくものだ」
『ああ、あれね』
「おお!叩けば出てくるもんだな!」
「それで思い出したわけではない!」
きゃんきゃんと言い合う2人のなんて可愛いことか。
やっぱ可愛いよな〜弟。
「ダイヤ組は見回り中だ。邪魔するなよ」
ジェードが釘を刺すも、フォスは適当な返事をしてさっさと行ってしまった。
こら、人の話はしっかり聞きなさい。
『困った子だよまったく。ねえジェード?』
「そうだな」
そういえば、ずっとジェードに構えてなかったんだよね。
今がチャンスか。
『おりゃ〜』
「わっ!ななななんっなん、なんだガーネット!?」
座り込んでるジェードの長い足の間に入って抱きつく。
あ〜いいわこの反応かわいい。大好きだわ議長。
『っよし!チャージ完了!じゃあな議長!仕事行ってくる!』
「ヘ?あ、頑張れ??」
『おう!』
ぽかーんとしているジェードを置いて仕事に向かう。
今日は見回りに出てるスフェンに代わって椅子作んなきゃ。
『んーやっぱここもう少し削った方が…』
バキッ
ガンッ
『おおおおおおなになになに』
大きな音がしたかと思うと同時に地面がぶるぶると揺れた。なんだなんだ。
……
…………
………………。
『いや何もないんかい』
まあいいや、椅子作っちゃおう。
ここをこーしてあーして
よし、できた。
『次、医務室か。ルチル起きてるかなぁ』
白粉作んなきゃ。
末っ子のせいで消費すごいからな。
いやほんとに。
『ルチルー』
あ、やっぱ寝てる。
ここんとこ忙しかったからな。ゆっくり休…
「急患!」
「『ハイ!』」
かわいそうなルチル…
「ハイハイハイ。さっき誰かはしゃいで池に落ちたでしょ?どうせフォスでしょうけど」
『大丈夫?やっぱ割れちゃったー?』
ひょこっとルチルの後ろから顔を出すと、そこにはピンク色のウミウシのような生物がいた。
……ん????
「もう大丈夫よ。ルチルならなんとかしてくれるわ。ガーネットだっているんだし、ね。フォス!しっかり!」
ちょっとダイヤちゃんが言ってることわかんないかな〜
ちらっとボルツを見ると、目を伏せて首を横に振られた。
え、えー。
「さすがダイヤモンド属。冗談も尖ってますね」
「ほんとよ!」
『議長、状況説明』
ジェードに話をふると、待ってましたとばかりに口を開いた。
「月人が落とした巨大カタツムリにフォスが吸われた。だがこれしか残ってないのだ。殻は空だった」
「『カラだけに?』」
「あなたの冗談は心底つまらな」
「状況説明!!」
ガチめにダジャレ言われたのかと思った。
お兄ちゃんちょっと寒かったよ。
「とりあえず、バラしますか」
『えっ』
「まって!」
まあ、そっちはルチルに任せていいや。
あの子フォスじゃないし。
『ダイヤ、腕貸して。ちゃっちゃと治そ』
「あ、うん。ありがとうガーネット」
ダイヤを椅子に座らせてから腕を治す。
ダイヤと話したり治したりするのほんと緊張する。
美人すぎるからなこの子。
「ありがとうガーネット、ルチルも。ごめんなさい。僕仕事の邪魔しちゃったわ」
『ダイヤは悪くないんだから気にしないで』
「そうですよ。元はと言えばフォスが悪いんですから」
じゃーねーと手を振ってからダイヤはウミウシを連れて出て行った。
ダイヤ、それ絶対フォスじゃないって。
「そろそろ日が暮れますね。ガーネット今日は私とどうです?」
『いいね〜おいでおいで』
今のはルチルが一緒に寝たい時に言う誘い文句だ。
この女医とてもいかがわしい好き。
「ガーネット!ルチル!フォスはさっきの生き物の殻になっちゃってるみたいなの!剥がして持ってくるから修復の準備お願い!」
ダイヤが走ってきたかと思うと、それだけ言ってまた戻って行ってしまった。
あ〜これは。
『徹夜コースっすね』
「はあ…次から次にまったくもう!」
よしよしと頭を撫でてやってから落ち着かせる。
うんうん、頑張ろうな。
「色の違う所はこれで全部!」
ダイヤがバケツリレー方式で持ってきたフォスは本当に粉々だった。
いやキッッッツいわ。
「……」
『ほらルチル寝ないの。早くやるよ!』
カチカチと手分けしてフォスの欠片をはめていく。
これはここで、そっちはここに。
それから〜あ〜頭痛い〜
『…できた』
「よし、さっさと白粉塗っちゃいましょう」
結局1晩かかってしまった。
ほんと問題ばっか起こすんだからこの子はも〜
ああ、朝日が眩しい。眠い。
「あっ」
ユークの声で落ちかけてた意識を浮上させると、フォスが起き上がったのが目に入った。
「きさまかーー!!!」
「おやめなさい!治したばかり!」
何をとち狂ったのか、ウミウシに飛びついたフォスを羽交い締めにして動きを止めさせる。
あれれえフォスちから強くない??お兄ちゃんびっくりー。あっ、まって真面目にやばい。
「今よ!さん、はい!ごめんなさい!」
ダイヤの声に反応したウミウシはペコリとフォスに向かって頭を下げた。え、かわいい。
「フォスより賢い!」
「フォスよりかわいい!」
「うるせー!そんなんで済ませられるか!」
『もうフォス!おとなしくしなさい!』
興奮してまたもやウミウシに飛びかかろうとするフォスを必死で止めるが力が敵わない。
あれれ〜??
「だからって目の前のもの食べていいってことないだろ!だめーそんなの言い訳になりませんー嬉しくない!」
『え、ちょ、ちょっとフォス…』
「誰と話してるの?」
「え?」
【悲報】ついにうちの末っ子ちゃんの頭が壊れた模様。