仲間
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あれから部屋に戻ってきた私は、クラゲの本を読み漁っていた
『んー…』
ラピスがくれたどの本を見ても、クラゲについて詳しくは書かれていなかった。
海で浮遊しているとか、体が半透明で柔らかいとか…
曖昧なことばかりで専門的言葉は一つもない。
『これは自分で地道に調べるしかないか…』
前世では淡水、海水に浮遊しているゼラチン質の生物って事しか調べてないし…
先が思いやられる…
『とりあえず、ここに書いてあること全部紙にメモしとくか…』
さきほどペリドットから貰ってきた紙、スフェンから貰ってきた紙を挟める板、鉛筆。
ん?これ鉛筆どうやって作ってるんだ?すげぇ
これ書いたら今日は休もう…
部屋には明かり一つなくて暗い。
布団まで歩くので精一杯だ。
医務室もいつも真っ暗だし廊下だってそうだ。これは、私が明かりを発明するしかないのだろうか…
『…ちょっと外、出てみようかな…』
今まで字面と向き合って、疲れた気持ちを入れ替えたくて外に出ることにした。
部屋や廊下は暗くても、少し外に出れば月明かりくらいはあるだろうと外へ出た。
朝行った池まで歩くと、池の底がぼんやりと色とりどりに光っているのが見えた。
『えっ』
まさかと思い、白粉が剥がれるのも構わず顔をつっこんだ。
その衝撃で生まれた水泡がなくなり、やっと池の底が見える。
あまりに綺麗な光景に息が漏れた。
『こぽっ…』
どうやら明かりの正体はクラゲだったみたいだ。
夜はいつも底に沈んでいたから、まったく気が付かなかった。
もしかしなくても、この子達を繁殖させて学校の各地におけば、それなりに明かりを確保できるんじゃないだろうか。
『…ぷはっ!』
ようやっと顔を池から出して、犬のように首を振る。
水が切れたのがわかって、立ち上がった私は明日からクラゲを繁殖させることを胸に誓い、部屋へ戻った。
明日からがんばるぞ!
『…よし、やるか』
朝礼が終わって許可をもらった私は、真っ先に池に来ていた。
わくわくとした心を落ち着けて、対塩樹脂をまんべんなく塗ると池へと飛び込んだ。
朝。やはり顔の白粉が剥がれていた私は、早くに医務室に行き、こっそり白粉を塗って朝礼に出た。
ルチルあたりにバレたら怒られるからな。
出くわさなくてよかった。
池は思っていたより深くて少し驚いた。
宝石になって水の中に入るのは初めてだ。
体は重く浮かないから、前世より楽に動けるのが不思議だった。
一番底も、地上を歩いているみたいにすいすい歩ける。
あまり数がいないな…
これはやはり2匹くらい持ち帰って研究した方がよい?
繁殖ってどうしたらいいんだろう…
オスメスの見分けもつかないのに。
…というか性別ってあるの??
本に書いてたかもしれないな…
後でもっかい調べよ。
とりあえず近くにいたクラゲを2匹手に抱えると、水面へ上がって水を張って用意していた器に入れた。
『へへ、やっぱりかわいい…!』
サイズはそこまで大きくないが、この器に2匹は窮屈そうだったので、スフェンからもう一つ器をもらい1匹ずつに分けて入れた。
部屋に持ち帰って、スフェン作の机に器を置いて本に向き直る。
さーて、いい情報はあったかしらね。
『有性生殖と無性生殖…なるほどね』
さっき連れてきた2匹のクラゲの模様を見ると、1匹は紫、1匹は茶色である。
これってオスメスで違うのかしら…
『…ふぅ、もっかい池行くかぁ。すぐ戻ってくるからねー』
2匹の傘をちょんとつついてやると、模様を除いた傘の部分がぽうっと桃色に変わった。
え、何これすごい。後で調べよ。
先ほどと同じく、池に飛び込んだ私はクラゲの群れに突撃した。
わー思ったよりいるー
何匹か手繰り寄せて、腕の中に閉じこめてからじっくり観察する。
またまた桃色に色が変わった。
これどういう原理なんだろう。
あっ、やっぱり紫と茶色だ。
あれ、でも緑もいる。黄色も。
これは無性生殖で分裂させれば、明るくて暗いところの明かりにいいかもしれない。
とりあえず器がないから、この子達はまた今度の機会ということで。
『んー、どっちがメスでオスなのか見当もつかないわ…とりあえず同じ器に入れて1日見てみようかな』
さっき窮屈だからって、分けたばっかなのにごめんな。
『ただいまクラゲ〜』
またまたスフェンの工房に失礼して、2匹余裕で入る器を貰ってきた。これでいいだろう。
余る二つの器は明日用に布団の横に置いとこ。
『おっ』
2匹を同じ器に入れると、さっそく紫が近づいていった。
しばらく茶色にくっついていたかと思うと、急に白い液体を噴き出した。わお。
水面に浮いてきたそれを、茶色が取り込んでいく。
あ〜多分今の精子だな。じゃあ紫がオスか。メモらねば。
茶色が取り込んだ直後に、濃い桃色にぽっと光った。
それが移ったかのように紫も桃色に光る。
多分これ照れてるな。メモらねば。
ということはさっきのは私に対して照れたのか。なんだかわいい奴め。
実験第一号ってことで名前つけてあげよう。
『んー……おいもとチョコ…おいしそう。いや実に。もうこれでいいや』
これから頼むよ仲良くしてね〜
ちょんとつついたら真っ赤になった。
愛おしい…あ、おいもは紅いもから取ったよ。
原型ほぼなくなったけど。
んー…暇になった。
余った器持って今日中にカラフルなクラゲ連れてきてみるか?
もう池行くの3回目だよ。楽しいからいいけど。
『っし、もっかい池行ってくるね。チョコもおいももいい子にしててね〜』
3回目ともなると、もう騒音とか気にせずに思いっきりダイブしてみた。
ばっしゃーん。
あ、クラゲびびってる。ごめんね。
お目当ての子をひょいひょいと小脇に抱えて陸に上がった。
お目当てだったのは先ほどの緑色と黄色の子。
この子達は別々の器に入れて、無性生殖で分裂させてみよう。
『ここが今日からお前達のお家だよー。狭くてゴメンね』
よしよしとつついてやってから、机に隣同士で並べる。
つつくと緑色と黄色の光がぽっと強くなった。
うーん、かわいい。
というかこの子達は、遥か昔からいるんだから前世よりもいろいろ進化しているのかもしれない。
明日には少しでも繁殖しないだろうか。
『やっぱ非現実的だよねー…期待したってしょうがないか』
ちなみにこの子達はライムとレモンと名付けた。愛い。
クラゲ研究にのめり込んでいたせいでもう夜だ。本を読み漁っていたのが良くなかったか。
『もう今日は寝ようね。おやすみ〜』
布団に潜ると、机が朝のように明るくなっている。いや眩しいわ。
かわいそうだが机から下ろして部屋の隅に寄せた。
明日机上に戻してあげるからね。