仲間
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ルチルと見回りを始めて2日目。
緒の浜でまたまた新しい命が生まれていた。
私のように赤黒い宝石の周りには、なにか銀色のものがぷかぷかと浮いていた。
不思議に思い触ると、手袋が破けてしまったので慌ててルチルと一緒にこの子を運んだ。
「これは…」
先生は難しそうな顔をすると、その子を抱えて部屋に消えた。
「あの宝石。毒か何かを放っているのかしら…」
『どーだろう…でもそしたらあの子、生きづらくなっちゃうね』
「…ガーネット、手は大丈夫ですか?レッドベリルに頼んで手袋を直してもらいましょう」
『ああ、だいじょーぶだいじょーぶ。手袋なんか自分で直せるよ。心配しないで!』
不安そうな顔で見てくるルチルの頭を撫でて、見回りへ戻るため手を引いて外へ出た。
夜。ルチルに無理矢理先生の部屋へ連れていかれ、私は腕を削られた。
水銀は何をしても取れることは無かったからだ。
先生は悲しそうな顔をして私の頭を撫でた。
次の日の朝、先生は朝礼で昨日の宝石の説明をした。
あの子はシンシャというらしい。
たしか辰砂…水銀を発する宝石ではなかっただろうか。
「あの子は体から水銀がとめどなく出ている。私にはまったく害はないが…お前達には毒になるかもしれない。実際、昨日シンシャを運んでくれたガーネットは水銀によって手袋が破れ、手についた水銀は取れなかった。削ることで何とかなったが、その分記憶はなくなってしまう」
『毒…』
「そんな…じゃあシンシャはどうなるんですか?」
「先生は大丈夫なのに、どうして僕達は駄目なんだろう」
「じゃあ話すこともできないのかな」
「シンシャは話す歩くなど、初歩的な事を覚えるまで私の部屋で預かる。解決策はまたみんなで考えよう。解散」
「「「「『はい、先生』」」」」
見回りに行こうとすると、ジェードに呼び止められた。
振り返ると、誰も仕事には行っていなくて私に注目していた。
え、何か付いてる?
「ガーネット。手は大丈夫なのか?」
『あー大丈夫だよ』
「削った欠片はどうしたの?」
『もう使えないから捨てちゃった。…え、なになに?どうしたのみんな』
削った欠片を捨てたと言った瞬間にみんなが泣き始めた。
涙でないけど。
「ガーネット〜俺のこと忘れないでよ〜意匠工芸一緒にやるって言ったじゃん〜」
「ガーネット…紙制作はどうなるんだ。それも忘れてしまったの?」
「あんたモデルになるって言ってから忙しくてまだ1回もできてないじゃない!忘れるなんて許さないわよ!」
「ガーネット〜僕まだまだ君に武器を作ってあげたいんだよ〜!」
「まだまだ月人のこと全然教えられてないわ!」
「僕と一緒に天気の予測しようって言ったじゃないガーネット!」
「まだまだ私はガーネットに恩を返せていない!忘れるなんて許さない!」
「ガーネット…僕の中の子も、まだ君と話せてないのに…こんな事って…」
「ガーネット!君は僕と一緒に過ごした時間をすべて忘れてしまったのかい!?」
「俺のかわいい弟がこんな事になるなんて…」
好き勝手喋る宝石達についにルチルが切れた。
残念、この状況ちょっと面白かったのに。
「さっきからあなた達は何を言ってるんですか!ガーネットはほんの少し削っただけで何も忘れてることなんかありませんよ!」
「「「「「えっ」」」」」
『何を不安になってるのか知らないけど、みんなの事覚えてるよ?約束だって忘れてないし』
その言葉で泣きやんだ彼らは、しばらくきょとん顔で固まるとすぐに解散を始め仕事に戻っていった。
なんなんだお前等。
愛されてるのはよくわかったけど釈然としない。
「まったく馬鹿ばっかりなんだから…ガーネット、見回り行きますよ」
『はぁい』
ルチルと見回りを始めて1週間。
イエローが成長したダイヤを連れて、見回りの仕事に戻ってきた。
「見てくれよガーネット!ダイヤめっちゃかわいいっしょ!」
『うわ〜まじじゃん…ダイヤ私の事覚えてる?』
「はい!イエローお兄様と一緒に、僕を運んでくれたガーネットお兄様!」
お兄様なんて言われたの初めてだ。
むずがゆ。
しかもこんな美少女から。
『ガーネットでいいよダイヤ。お兄様は私照れちゃう』
きゃっと両頬を手で包んで照れてみると、ダイヤからはかわいいと賞賛の嵐だった。
どう考えたってキモイだろ。
ダイヤのがかわいいに決まってるだろ。
イエローもルチルも真顔でガン見するな怖いから。
「じゃあ、私はもう用済みですね」
『その言い方はよくないぞルチル。すごい助かったよ、手伝ってくれてありがとう』
こっそり見回り中に摘んで作った花冠を、隠していた服から出してルチルの頭に乗せる。
見事にルチルの頬が赤くなった。
このツンデレ照れてる!!かわいい!!
「キザすぎますよあなた。ウザイです…」
『そこは素直にありがとうでいいの!ほら、医務室戻りな』
「…ありがとうございます。それではまた」
ルチルの背中に手を振って、イエローとダイヤに振り返るとイエローは顔を顰め、ダイヤは頬を赤らめうっとりしていた。
ダイヤちゃんかわいい。
「ダイヤ…こいつには気をつけろ」
「ガーネット…素敵」
「ダイヤ!戻ってこい!」
『うるせえよ見回り行くぞ』
イエローの首根っこを掴んで、ダイヤとは手を繋いで見回りに出た。
ダイヤはずっとニコニコしながら話しててかわいい。とても。
これはアイドルですわ。
「そういえばシンシャ…もう立派に歩けるし話せるみたいだな」
『そうなんだ。仕事どうなるんだろう』
「シンシャって、お兄様がこの間言ってた僕と同期の宝石ですよね?」
「そーそ、仕事なー…うーん」
3人でシンシャの話をしながら白粉花の実を摘む。
ルチルが来てから、白粉をいっぱい作ってくれているからとても助かる。
滅多に割れたり剥がれたりしないので、白粉は今ではストックがたくさんだ。
でも念には念を。
しっかりと集めますよ。
今日はダイヤの初見回りデビューであったが無事成功した。
さすがダイヤモンド。それなりの硬度のため、ちょっとやそっとじゃヒビが入りにくい。
そして月人に狙われる狙われる。
今日は月人が2回出現してどっと疲れた。
ダイヤが見回り組に入ってくれたため、私は念願のクラゲ研究の許可が下りたのだった。
ありがとうダイヤ様。
さっそくクラゲを入れる器をスフェンから貰い、明日からのクラゲ研究の準備はバッチリだ。ああ、楽しみ。