日常
名前
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入ってくる朝日の眩しさに目を覚ます。
もう朝か…
まだ寝ていたくて毛布ごと寝返りを打つと、ボフッと何かに当たった音がして目を開けた。
『ん、なに…あ』
毛布から出て起き上がり、音の正体を確認すると意識が覚醒した。
「あ〜!うっ!」
『そっか…ジェード私の部屋で寝たんだ、忘れてた…』
音の正体はジェードで、どうやら私を起こす為にわざわざ上の布団から下りてきてくれたようだ。
這って来たんだね。ありがとうジェード。
あ、そうそう。そうなんです。
昨日同じ布団で寝たはずなのですが、如何せんジェードの寝相が悪かったため下、つまり床に緊急避難したんですね。
あのままでは二人仲良く割れて救助を朝まで待つ羽目になりますからね。
賢明な判断だと思いますよ私は。
あ、床は冷たかったのでちゃんと毛布にくるまりました。
冷たいっていう感覚はあんまり無いけど。
『起こしに来てくれたの?』
「?」
『あー…おはようジェード』
「あー!おあお!」
舌っ足らずかわいいよー
イエローのように先に手袋だけつけてジェードの頭を撫でる。
…ふむ、確かにこの頭の丸さ、私譲りかもしれん。
早くしないと朝礼遅れちゃうかな…
今ならイエローの気持ちがよくわかる。
先に私が全裸になった方が早い。
スルッと服を脱いで制服に着替える。
あ、ニーハイ履かなきゃジェードがひっつく時割れるよな。履いとこ。
『ジェード、おいで』
言葉の意味はわかってなくてもジェスチャーで理解したらしく、ハイハイで寄ってきた。
ああ、懐かしいこの感じ…
『パパッとやっちゃうね〜』
ジェードの腰紐を解いて合わせに手をかけ一気に下ろす。楽だなこれ。
シャツを着せてズボンを履かせ、ネクタイを締めてやる。
あとはベルトを着けてやってベストを着せて…よし、完璧。
『ジェード〜ばんざ〜い』
「ばんあー」
両手をあげたジェードの腕に長い手袋を着け、断りを入れて寝転ばせてからニーハイを履かせた。
この服まじで楽ちんだな。着脱めっちゃしやすい。ベリル天才じゃん。
『はぁい、じゃあ行くよー。よいしょっ』
自分の剣をベルトにくっつけてからジェードを抱き上げた。
軽くはないけど腕が割れる程でもない。
『おはよーございます』
「おあおーおあいあー」
ジェードを抱っこして会議室に入ると、みんな笑顔で迎えてくれた。
「おはよう。ガーネット、ジェード」
『おはようございます先生!』
よしよしとジェードと共に頭を撫でてもらって、前にいるユークの隣に並ぶ。
「みんなおはよう。今日は先に昨日来たばかりの新しい宝石を紹介するわね、この子の名前はジェード。イエローとガーネットが緒の浜の見回りに行った時に生まれていた子よ。もう私の仕事に興味を示したから将来は有望よ!きっと賢く強くなるわ!」
チラ、とユークが目配せしてきたので一歩前に出て、ジェードがみんなから見やすいよう顔を上げさせる
『えっと、昨日からジェードの教育係に任命されました、ガーネットです。ジェードは私の言葉を真似して話すことが出来るので、きっとすぐ言葉も覚えられると思います。まだ歩くこともできないので手助けをしながらゆっくりと見守っていこうと思います。…えっと、なかよくしてね』
話の閉め方がわからず、ジェードの片手をヒラヒラさせて腹話術みたいになってしまったが、まぁいいだろう。
されるがままのジェードにみんなが笑って手を振り返してくれた。
「では、朝礼を始めます。本日の天気は────」
『はあ…』
「うー?」
『あ、え、ありがと』
医務室のベッドの淵に座って項垂れているとジェードに心配された。
ええ…なんて優しいんだ。
私が疲れている原因を今から説明しましょう。
まず、朝礼が終わったらいつもは解散するのに、ジェード諸共みんなに囲まれた私は最初何が何だかわからなかった。
「議長より工芸に興味ないかジェード!」
「紙製作は楽しいぞジェード」
「私の助手!もしくはモデルになりなさいジェード!」
「ねえ、月人には興味ある!?一緒に研究しない!?」
「僕と一緒に議長の仕事するんだよね?ジェード!」
「いいえ、僕達と一緒に本の管理をしましょうジェード!」
「ガ、ガーネット!是非とも今日は僕と図書し「俺たちと一緒に見回りするんだよなぁ?ジェード!」」
『そ、そんなこと今のうちに言われてもジェードわかんないから!…って、あ!?』
「うっ、う、うえ〜!あ゛ぇええ!!ぶぁああ!」
みんなに取り囲まれてびっくりしたのか大声で喚き出したジェード。
泣き声ブサイクすぎてお兄ちゃんちょっと、いや、かなりびっくりしたかな。
あとラピスのは何だったんだ。またイエローが遮ったけど。
まあこんな感じで泣き出したジェードを宥めるのに時間がかかり私はぐったりしているのです。
泣かせた本石達はそそくさと自分の仕事に戻って行った。
チッ、割れろ。
今はすっかりケロッとしてしまっているジェードの髪を結んでやる。
うーん、ポニテでいいか。大きくなったら自分の好きなように結ぶだろうし。
『はい、できたっ!お昼からは授業だから可愛くしなくちゃね』
よしよしと頭を撫でると、ベッドに寝そべっていたジェードは私の膝の上に上半身だけ乗せてきた。
うん、なになに?
「あーう!あ!」
『どした〜?』
必死に何かを私に伝えているがさっぱりわからない。
ごめんねジェード、私察しが悪いの…
「あーえ、えっと!あーっと!」
『あーえ、えっと??なんだ?』
「うあー!!」
私が理解できてないのがわかったのか、ひときわ大きく唸ると不貞腐れて私の膝に顔を埋めてしまった。
え、えー…
『よしよし、ごめんね』
頭を撫でていると落ち着いたのか、安らかな寝息が聞こえてきた。
……子育て!大変!!
小さくため息をつくと、不意にある物に目が止まった。
パパラチアの入ったまるで棺桶のような箱。
見つめていると寂しくなって弱音が出る。
『…いつになったら起きるの、パパラチア。あれから30年経ったんだよ…私もうとっくに戦えるようになっちゃった…それに、聞いてほしいことあるの…たくさんあるのよ』
膝に乗っていたジェードをゆっくり下ろして、パパラチアの入った箱を引っ張り出す。
相変わらず綺麗な瞳を閉じて、穏やかに眠っている。
『私、お兄ちゃんになったよパパラチア。きっと君よりずっと頼れないお兄ちゃんに……ねえ、いつ起きるの?起きてよ…』
感情が抑えられなくて、声も手も震えて顔にヒビが入った。
駄目だ、自壊なんかしちゃ…みんな心配する。
止まって、止まれ。
「う…う?あーえと?」
『!』
ジェードの声でやっと我に返り自壊が止まる。
あ、あれ何してるんだ私。急に弱気になんかなって。
パパラチアの箱をしまい振り返る。
『ご、ごめんジェード…』
「!あ、あー!!うー!」
ジェードは私の顔を見ると、目を見開いて慌ててベッドから下りた。
『ま、待ってジェード!割れっ』
カアアァァンッ
『ひぃっ!!』
慌ててジェードに手を伸ばしたが、あと一歩が足りずジェードは顔から床に落ちてしまった。
ウワア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!ごめんなさい先生イイイイイ!!!!!
顔を真っ青にし頭を抱えている私のなんて滑稽なことか。
急いでジェードを起き上がらせると、顔にヒビ一つない。
あ、あれっ割れてない!!なんで!?
「きいぃぃ…」
『ふ、不思議な悲鳴だなジェード。大丈夫?ごめんね』
顔を覗き込むとジェードは私に抱きついた。
っぶねぇ!また割れるかと思った!
「ガーネット。そろそろジェードの授業を…そのヒビ…」
『あ、先生…』
ジェードを抱えて尻餅をついたままでいると、先生が医務室に顔を出した。
あー自分で治す前に見つかっちゃった…
近寄って来た先生はジェードごと私を抱えるとベッドに座らせた。
棚から白粉を持ってくると、先生は私の顎を持ち上げポンポンと顔にはたく。
うーん、先生に治療されるのなんか好きだな。
「自壊、しようとしたのか…」
『全然するつもりはなかったんですけど…でも、パパラチアの事思い出したら…なんか…自然にぱきぱき〜っと』
「…寂しいのはわかるが、気長に待つのも大事だガーネット。あの3日間でお前はひどく懐いていたからな、無理もないが。」
『…でも、30年ですから、寂しいです』
先生はよしよしと私を撫でると、私にひっついていたジェードを無理矢理剥がしてベッドを立った。
あ、あの先生。ジェード大泣きなんですけど…
「お前は今日は見回りに行かなくていいからゆっくり休みなさい。代わりにアレキを見回りに行かせよう。それとジェードは今日は私が預かる」
『あ、はい。ありがとうございます』
私の返事を聞いて満足したのか、先生は踵を返して奥へと消える。
ジェードは最後まで私に手を伸ばし大泣きしていた。
ごめん、ほんとは付き添う予定だったのに!
また明日ね!