Episode 1
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ここは、どこ?ーーーー
確かに聞こえた凛の言葉に、男は答えた。
『ここは杯戸町ですが・・・』
『はいどちょう・・・え、日本?』
『?
はい、ここは日本ですから・・・』
男が日本である事を伝えた瞬間、凛は手を顎に添えて考え始めた。
その様子をしばらくジッと見ていた男は、再び口を開いた。
『あの、僕の名前は安室 透って言います。
安いの"安"に室町の"室"、そして透けるという字で"透"です。』
凛はここが日本なら日本語でもいいかと思い、日本語で答えた。
「私は神崎 凛です。
えと・・・字はーーーー」
そして言葉より書く方が早いと判断した凛は、その場にしゃがみ、砂利道に小石で漢字で名前を書いた。
「神崎さん、ですね。
神崎さんは日本語の読み書きが堪能ですが、育ちは日本ですか?
てっきり外国育ちかと思っていました。」
「ただ両親が日本人で、私が11歳までは日本に居たので、一通りの読み書きが出来るだけです。」
「そうですか。」
安室はポケットからスマホを取り出しながら続けた。
「今から救急車を呼びますね?」
「?救急車?」
「えぇ、病院へ行きましょう。
あと、事件の可能性も考えられるので、警察にも。」
安室はそう言いながらスマホの画面に"11"とタップした所で、凛によって勢いよくスマホを持っていた手を叩かれた。
スマホは草っ原に落ち、安室はゆっくりと視線を凛に移した。
凛はハッとして、気まずそうに小さく両手を軽く上げた。
「・・・あ、いきなりすみません。
病院は大丈夫です。」
「・・・ですが、貴女は先程まで意識がなく、そして身体中傷だらけです。」
「傷はすぐに治ります。」
凛はそれだけ言うと、落ちていたスマホを拾い上げた。
(何この薄い板みたいなもの・・・
この人はこんなモノで病院と連絡を取ろうとしていたの?)
凛は訝しげにスマホを見た後、安室の手の上にそれを置いた。
「・・・本当に大丈夫ですか?
僕としては、ちゃんと病院と警察へ行って欲しいのですが・・・」
「本当に大丈夫です。
事件でもないので。」
頑なに病院へ行こうとしない凛を怪しんだ安室は、少し考えた後に再び口を開いた。
「何故・・・そのように傷だらけなんですか?」
凛は少し考えた後、眉を下げて河川敷の方を指差した。
「・・・考え事をしながら歩いていたんです。
お恥ずかしながら踏み外したようで、そこから転げ落ちてしまいました。」
誰が聞いても嘘だと思えるような返答に、安室はますます疑心が深まった。
「では、せめてその傷だけでも僕に手当てさせてください。」
「手当て?」
「えぇ。
すぐそこにコンビニがあるので、そこで手当てに使う物を買いましょう。」
(えーーーーーー??
"こんびに"って何なのよーーーーっ!)
凛の心の声などもちろん聞こえない安室によって、凛は強制的に手当てをしてもらう事になったのであった。