Episode 1
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「アンッ!」
「こら、ハロ!
あまり遠くへ行くな!」
まだ陽が完全に昇りきらない早朝の4時過ぎーーーー
わずかにその姿を見せる陽の光によって、辺りの視界に鮮やかな色を付け始めている。
とある河川敷に流れる低水路横の川表を綿あめのような真っ白でふわふわな仔犬が元気よく駆け走る。
その仔犬を"ハロ"と小声で呼び掛けながら、その姿を追い掛けるカスタードクリーム色の金髪を持つ1人の男が居た。
ハロはしばらく川表の砂利道を駆け走っていると、突然立ち止まり鼻をヒクつかせた。
ヒクつかせた鼻は懸命に砂利道を辿り、次第に砂利道から草が生い茂る道を辿る。
その中でも大人の腰程ある背の高い草むらの前で1度顔を上げると、迷う事なくその草むらへと頭を突っ込んだ。
ハロを追い掛けて来た男は、仔犬がこちらに尻を向け、頭のみ草むらに隠す姿に首を傾げた。
しかもその尻にある尻尾が、千切れんばかりに左右に振られている為、より首をひねる。
その行動を不思議に思い、男も草むらに近付き、ハロが頭を突っ込んでいる草むらを軽くかき分けようとしてその手を止めた。
かき分けて見るまでもない。
ハロが頭を突っ込んでいた草むらの中には、1人の女が倒れていた。
長い黒髪は草木にの上に散らばり、真っ黒なローブを身に付け、目は閉じられているが、顔造りからは東洋系のように思える。
その人物の手足や顔などには、近くで見なくてもわかる程にいくつもの傷を負っており、出血はひどくないが痛々しい程に青黒く変色していた。
ハロはその女の手を頻りに舐めていたのだ。
死体か!?と思った男は、急いでハロを抱き抱えて女から離した。
そして、手を伸ばして女の首筋にソッと触れて脈を確認した。
トクン・・・
トクン・・・
女の脈がある事にひとまず安堵した男は、倒れているその女の周りをサッと軽く調べた。
(・・・良かった、脈はある。
衣服が乱れていないから暴漢にあった訳ではなさそうだが・・・このいくつもの傷は一体・・・
彼女の持ち物は、恐らくこの小さめの鞄と・・・これはなんだ?木の枝か?
ただの木の枝にしては、あまりにも精巧な作りだが・・・
とにかく救急車を早く呼ぶか・・・)
男は手にしていた木の枝のような棒を元の位置に戻し、ポケットからスマホを取り出した。
その時ーーーー
『うっ・・・』
「!?
大丈夫ですか!?」
女は意識が戻ったのか、呻き声をあげて小さく身じろいだ。
それに気付いた男はすぐさま女に声を掛けた。
先程よりさらに陽が顔を出し、辺りは淡い陽の光で照らされている。
その陽の光に女は眉間に皺を寄せて目を細めた。
『ーーーーっまぶ、し・・・』
(英語!
日本人ではないのか!)
『大丈夫ですか!?
僕の声がわかりますか!?』
女の口から出た言葉は英語だった。
その為、男は英語で再度安否の確認を女に投げ掛けた。
『あー・・・はい、わかります。
大丈夫です・・・』
右手で目の前を覆いながらゆっくりと気怠げに身体を起こした女に、男はとりあえず彼女が意識を取り戻した事に安堵の息を漏らした。
すると、女は勢いよく顔を上げた。
慌てて立ち上がり、自身の袖口を漁り、服の端を持ちながら上下にバサバサと豪快に揺する。
さらには近くの草むらを遠慮なく乱暴にかき分け始めた。
男は女が何をしているのかがわからず呆然として
、その姿を見ている事しか出来なかった。
やがて女は木の枝のような棒を見付けると、すぐさまそれを拾って自身の胸元でギュッと握り締めた。
本当に大切な物を扱うかのように服の袖口に入れられた木の枝のような棒から、男は視線が外せなかった。
しかし、女は突然勢いよく立ち上がった事で目眩がしたのだろう、ぐらりと身体が大きくフラついた。
身体が反射的に動いた男は女の身体を支えて、再度安否の言葉を投げ掛ける。
『大丈夫ですか!?
急に立ち上がってはいけません!』
『すみません・・・』
男に支えられながら、必死に脚へと力を込めた女は、一つ小さく息を吐いた。
そしてそこでようやく周りを見回した。
『・・・ここは、どこ?』
ポツリと女は呟いた。
