Episode 6
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ふと目を覚ますと、見知らぬ天井が広がっていた。
(ここはーーー?)
自分がベッドに居る事に気付き、ゆっくりと身体を起こした。
周りを見回すと、そこが病院ではない事がわかる。
自分が居るベッドとベッドサイドテーブル、そして白いラグだけが置かれたシンプルな部屋に、ますます首を傾げた。
そして自分の身の違和感にも気付いた。
急いで衣服を捲りあげて見ると、驚愕した。
(え?
傷が・・・消えている!?
一体どういう事?
確かに私はあの時、銃弾を受けたはずーーーー)
すると、その時この部屋のドアが開き、その向こうから長い黒髪の女が現れた。
その女の手には、トレーとその上に何やら湯気の立つモノが乗せられている。
「あ、起きました?
体調はどうですか?」
「貴女は誰なの?」
「私は神崎 凛です。」
「そう・・・
貴女が私の治療をしたのかしら?」
「えぇ。」
凛の言葉に、ピクリと反応を示した。
「・・・どうやって?」
「私は医療従事者としての経験があったので。」
凛は、その人物が起きるまでに必死に考えた嘘をシレッと答えた。
「・・・いくら医療従事者としての経験があったとしても、傷痕1つ残さずに治療する事なんて出来るはずがないわよね?」
(でっすよねぇえええええ!)
そればっかりはどう頭を捻っても考えつかなかった事に、凛は心の中で盛大に涙を流した。
「えーと、まぁ・・・
そこはまだ、非公開段階の皮膚移植でして・・・」
あまりにも無理ある嘘に、案の定その人物から疑いの目を向けられる。
(ーーーーっ
こうなればヤケクソだ!)
凛はその場で素早くカーペットの上に正座し、額を勢いよく床に付けた。
所謂、土下座だ。
「この度はぁぁぁぁっっ!
緊急事態だった故に、まだ非公開である皮膚移植の実験台にしてしまい、誠に申し訳ございませんでしたぁぁぁぁぁ!!
しかし、この移植方法は自分の身を持って安全である事は立証済みでして、拒否反応も見られない代物なのは確かでございますうううう!」
凛はもはや、自分でも何を言っているのかわからなくなってきていた。
すると、その場に笑い声が聞こえた。
恐る恐る凛が顔を上げると、目の前には盛大に笑う人物が居た。
「貴女・・・それ、私だからいいけど、他の奴らなら通用しないわよ。」
「え?」
「シャロン。」
「え?え??」
「私の名前。」
シャロンは笑いすぎて涙を浮かべた目尻を指先で拭うと、凛が持って来たトレーを指差した。
「あれは何?」
「あ、チキンスープとポリッジ・・・
食べます?」
「貴女、イギリス人なの?」
「日本人ですけど、イギリスに住んでいたのが長くて・・・」
「ふぅん?
いただくわ。」
シャロンは自分で言いながら驚いていた。
(まさかこの私が初対面の人から食事をもらうなんてね。
何故かしら・・・
そうしてもいいと思える程、この子の事は信じられそうな気がする・・・)
目の前に置かれたトレーの上にあるポリッジをスプーンで掬うと、口へ運んだ。
じわりと口内に広がるオーツ麦の香ばしさとリンゴとはちみつとミルクの甘さに、シャロンは口の端を持ち上げた。
「・・・美味しい。」
その言葉を聞いた凛も、嬉しそうに微笑んだ。