Episode 47
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今現在、凛の目の前に立つキュラソーは彼女ににーっこりとした笑顔を向けていた。
そのキュラソーの右手には、可愛らしい洋服が持たれている。
白いふわふわ素材に、フード部分に長い耳が付いたウサギの洋服だ。
その洋服を見せられている凛の目は、キラキラと輝いている。
「ほーら・・・凛。
ここに可愛いお洋服があるわよ~?
着たくない?」
「お、おおぅ・・・
しかしアラサーが着ていいものじゃないぞ・・・」
ゴクリと喉を鳴らした凛に、キュラソーはもう一押しする。
「・・・バーボンにもあるのだけれど。」
キュラソーは左手にはいつの間に取り出したのか、茶色のふわふわ素材に、フード部分に丸い耳が付いたクマの洋服を持っていた。
その洋服を見た瞬間、凛の目がギラリと光った。
「着る!
それに今の姿なら合法だもんね!」
凛はキュラソーから幼児用パンツとウサギの着ぐるみを受け取ると、ソファの後ろへ移動した。
その姿を見届けたキュラソーは、バーボンの前にクマの着ぐるみを見せ付けながらニヤリと笑みを浮かべた。
「ぼっ僕は着ませんよ!!
アラサーにもなって、そんな恥ずかしい格好っ!」
降谷が言うと、ソファの後ろで着替えていた凛から不満の声が上がった。
「ちょー!
そんな事言ったら私どーなんのさ!
アラサーがウサギの着ぐるみ着てるんだけどー!」
「凛は可愛いからいいんだ!!」
降谷が叫ぶと、ソファの後ろから着替えて出て来た凛が眉を下げてウルウルと目を潤ませながら降谷の手をキュッと握った。
「・・・れい 一緒に着よ?」
小さくなっても降谷の方が少し身長が高い為、必然的に上目遣いで見つめられた降谷は、その凛の破壊力抜群の可愛さに秒でノックアウトした。
「ーーーーくっ!
キュラソー!今すぐに僕にもその服を渡してください!」
「はいはい。
ほら、男の子用のパンツもちゃーんとあるわよ。」
(ーーーーくっ屈辱的だ。)
降谷はギリィッと奥歯を噛み締めながらも、キュラソーからクマの着ぐるみと幼児用パンツを受け取ってソファの後ろへ移動した。
その降谷の姿を緩んだ顔で見送っている凛の服を整えているキュラソー。
そのキュラソーを静かに見ていた風見は、心の中で彼女にサムズアップサインを繰り出した。
まさか自分の上司がクマのもこもこの服を着た姿を拝む事になるとは思っておらず、素早くスマホの充電残量をチェックした。
無事に着替え終えた降谷が、ソファの後ろからおずおずと出て来た。
その降谷の姿に、凛と風見は心底悶えた。
「ひゃーーーーっっっ!
可愛い!れい すっごく可愛い!!」
「~~~~っ!
ふっ・・・かっ・・・(訳 : 降谷さんっ可愛いっ)」
顔を赤くしてプルプルと身体を震わせている降谷に、凛と風見はさらに悶える。
キュラソーは腹を抱えて笑いながら、降谷にスマホを向けて連写している。
降谷の元へヨタヨタと歩を進めた凛は、彼にむぎゅーと抱きついた。
その瞬間、キュラソーと風見のスマホから連写する音が激しく鳴り響いた。
「れい 可愛いね。」
「凛の方が可愛いに決まってる。」
「んー くまさんのれい 可愛いよ。
だいすき。」
降谷の頬に擦り寄る凛が可愛すぎて、降谷は頬を染める。
ふとキュラソーに目をやれば、彼女は目を血走らせてスマホを凝視していた。
降谷の視線に気付いたのか、スマホ画面から降谷に視線を移した。
「バーボン。」
「な、何ですか。」
「ちょっと凛の頬にキスしなさい。」
まさかの要望に、降谷は思わず素っ頓狂な声を上げた。
「はぁ!?
何故、貴女に言われてしなければいけないんですか!」
その言葉を聞いていた凛は、眉を下げて降谷の顔を覗き込んだ。
「・・・れい ちゅーしてくれないの?」
「するに決まっているさ。」
降谷はコンマ秒で即答すると、凛を優しく抱き寄せた。
そして彼女の頬にキスを落とす。
すかさず2台のスマホから鳴り響く連写音に、降谷は 俺は一体何をやってるんだろうかと遠い目をした。
その後、キュラソーと風見によって2人は様々なポーズの要望が入り、その都度鳴り響く連写音に降谷はゲッソリとしていた。
恐らく彼は過去一写真を撮られたと言っても過言ではないだろう。
そんな降谷が己をこのように疲弊させた人物であるキュラソーと風見に視線を向けると、2人はなんとそれぞれのスマホ画面を覗いていた。
「・・・公安が撮ったそのアングルの凛、いいわね。
送っておいて。
あと、それとそれも。」
「なら、お前が撮ったその降谷さんと交換な。
あとその降谷さんも送っておけ。」
降谷はキッと鋭く睨みながら、風見とキュラソーに向かって声を上げた。
「2人とも!
撮った凛の画像はすべて俺のスマホへ送っておけ!!
同じような画像も残さずだ!」
「私も れいのがぞー 欲しい~!
送っといてー!」
「もちろんです、降谷さん。」
「もちろんよ、凛。」
凛がわぁいと両手を挙げて喜んだ、その瞬間ーーーー
ボフンッ!!
「わっ!?」
「!?」
薬の効果が切れたのか、凛と降谷の身体の大きさが一瞬にして元のサイズに戻った。
凛と降谷が着ていた幼児サイズの服は一瞬にして、パァァァン!!と激しい音を鳴らして弾け散る。
降谷は凄まじい速さで近くに落ちていた自身のグレーのスーツのジャケットに手を伸ばし、素っ裸である凛の身体に被せるとその彼女を抱き寄せ、自身の身体で隠すようにした。
降谷と同時に動いていたキュラソーは、凄まじい速さで風見の顔面に拳を突き入れていた。
降谷がチラリと背後を見た時、キュラソーによって顔面に拳を突き入れられた風見は後方へ吹っ飛んでいた。
そのキュラソーと降谷は目が合った。
「・・・公安の顔を殴って悪かったわね。」
「いや・・・今回は礼を言う。」
風見がハッとして意識を取り戻して上体を起こすと、目の前にはグレーのスーツを身に纏い、ドス黒い笑みを貼り付けた降谷がしゃがんでいた。
「風見、大丈夫か?」
「は、はい・・・」
その降谷の様子に、風見は冷や汗が流れる。
「大丈夫なら良かった。
・・・少し聞きたい事があるんだ。」
「な、なんでしょう・・・」
降谷は目をスゥ・・・と据わらせると、自身の太腿の上に頬杖を着いた。
「・・・どこまで見た?」
何を?と聞くまでもない。
降谷が聞く、"どこまで見た"とは凛の身体の事だ。
見たのは不可抗力とはいえ、目の前で魔法薬の効果が切れて元の姿に戻っていたのだ。
風見は慌てて頭を左右に振った。
「みっ見てません!!」
降谷は風見の左手首に長い指を這わせた。
(ーーーーっ
こっこれはっっ
降谷さんに脈拍を確認されてーーーーっ)
「風見・・・嘘はよくないな。」
さらに目を据わらせた降谷に、風見は半泣きになりながらも必死に弁明する。
「本当です!
降谷さんがすぐに神崎さんを隠していたので、降谷さんの裸しか見ていません!
神崎さんを見たのは膝から下の足の部分だけです!
断じて神崎さんの身体は一瞬たりとも見ていません!!
神崎さんの膝から下を見た後はすぐにキュラソーの拳が視界を埋め尽くしていたので、本当に見ていません!!」
風見は嘘をついていない。
その事を降谷は、彼の左手首に這わせた指から感じ取っていた。
風見の左手首から指を離した降谷は、ニコリと微笑んだ。
「・・・ならいい。
君が嘘をついていない事は確認出来たからな。」
(もうホントこの人怖いっっっ!!)
風見は改めて降谷 零という人間を恐れた。
