Episode 47
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凛の自宅であるマンションに着いた2人を出迎えたキュラソーは、降谷の存在に首を傾げてた。
「あら、2人ともおかえりなさい。
バーボンはどうしたのかしら。」
「ただいま、キュラソー!
零も調合したいんだって~。」
「ふぅん・・・」
キュラソーは興味なさげに呟くと、調合部屋へ入っていった。
そのキュラソーに続いて2人も調合部屋へと向かうと、どうやら彼女は自室へ入ったようだ。
ちょうどキュラソーの自室のドアがパタンと音を立てて閉まった。
調合部屋の隅に置かれた調合台の前まで歩を進めた凛は、呼び寄せの呪文で"魔法薬全集"の本を呼び寄せた。
そして隣に立っている降谷の前に置いて、索引ページを開きながら尋ねた。
「零は何を調合したい?」
索引ページをパラパラと捲っていた降谷は、どの魔法薬の名前も興味津々で見ていた。
「確か・・・魔法薬によっては時間が掛かるものもあるんだったよな?」
「そうだね。
何日も何ヶ月も掛かるやつもあるよ。」
「なら、そういったものは避けて・・・」
ふと赤井は何を調合していたのかが気になった降谷は、凛に聞いた。
「赤井は何を調合しようとしたんだ?」
「秀一はねぇ・・・」
凛は魔法薬の調合の仕方が書かれたページを開きながら言った。
「これ。
縮み薬。」
降谷はザッとそのページの内容を読むと、口の端を持ち上げた。
「へぇ・・・面白そうな魔法薬じゃないか。
俺もこれを調合してみたいんだが・・・大丈夫か?」
「OK.」
凛は再び杖を振って呼び寄せの呪文を唱えると、縮み薬に必要な材料を調合台の上に呼び寄せた。
そして大鍋に向かって杖を振ると、大鍋の下に青い炎がゆらりと揺れ動いて点いた。
「どうする?
魔法使うところ以外は1人でしてみる?
それとも私が隣で手伝う?」
「んー・・・どこまで俺の力だけで調合出来るのか試してみたいから、1人でやってみるよ。
魔法が必要になったら手を貸してくれるか?
あと、俺が失敗しそうだと凛が判断すれば、すぐに鍋の中身は消して欲しいから隣には居て欲しい。」
魔法薬全集に視線を向けたままで目を輝かせて話す降谷に、凛は微笑みながら 了解 と言って頷いた。
降谷はさっそく魔法薬全集の縮み薬のページを見て、手を動かし始める。
当然調合方法もすべて英語で書かれたページを、何1つ苦にする事なくスラスラと読み進めていく。
(えーと・・・
まずは2つの萎びたイチジクの汁を絞り・・・
その血の色の液体を大鍋に入れる。)
口の端を持ち上げて楽しそうに調合を進めていく降谷を見ていた凛は、目を細めてその彼の姿を眺めていた。
(零・・・とても楽しそう。
零がもしホグワーツに通ってたら、こんな感じかなぁ。
一緒の調合台で・・・あ、でも零は正義感が強いからスリザリンよりグリフィンドールっぽいや。
ふふ、俺は赤が嫌いだ!って言って拒否してそう。
知識も豊富で知能レベルが高すぎるからレイブンクローも有り得るなぁ。
零に青のローブは似合いそうだ。)
調合台の上に頬杖を着きながら、降谷の顔をうっとりとして眺めていた凛は、妄想が捗り引き続きその妄想に耽る。
(零の幼少期の頃の記憶もチラッと見ちゃったけど・・・
あぁぁぁぁ、ちっちゃい零も可愛いしカッコよかったぁ。
尊すぎるぅぅぅっ!ちっちゃい零、天使すぎるでしょっ!
・・・という事はだよ?
もちろんホグワーツでも、すっごく女の子たちにモテるワケじゃん?)
凛の脳内では、ホグワーツの制服を着た降谷が、へのへのもへじ顔の女性たちに囲まれて困ったように微笑んでいた。
そのへのへのもへじ顔の女性たちは、困る降谷にお構い無しに触れまくり、そして愛の妙薬入りの菓子を押し付けている。
「・・・そっ、そんなのダメえええええええ!!」
突然の凛の叫びに、右手にカンロレードルを持って大鍋の中身を激しく掻き混ぜていた降谷は肩をビクゥッと大きく揺らした。
「すっすまない!
何処が間違っていたんだ?」
「へぁ!?
ちっ違うよ!
調合は合ってる!今のところ本当に完璧だよ!」
その言葉に降谷は、ホッと安堵の息を漏らした。
そして魔法薬全集に再び視線を移して続きを読む。
(次は・・・
4匹のヒルを絞り、その汁を加えるーーーーヒルを絞る!?)
降谷は調合台の上に並べられた瓶の中で、ウネウネと動き回っているヒルに視線を移した。
「・・・凛。」
「んー?」
「ヒルって・・・そのヒルだよな?」
降谷が指差したものは、もちろんヒルがウネウネと動き回っている瓶だ。
「もちろん。
あ、素手はやっぱ抵抗あるよね。
ガーゼ使う?」
「あ、あぁ・・・ありがとう。」
降谷は右手のひらの上にガーゼを広げ、その上にピンセットで摘んだ1匹のヒルを乗せた。
手のひらの上を動き回るヒルの不快さに、僅かに眉間に皺が寄る。
降谷はギュッと右手を強く握りしめた。
グチュリ・・・と手の中で感じる感触に、ゾワゾワとしたものが一気に身体を駆け上った。
「ーーーーっ」
「零、大丈夫?
代わりに私が絞ろうか?」
「いや・・・大丈夫だ。
これくらい出来る。」
そう言うと、降谷は凄まじい速さで右手のひらにヒルを乗せては握り潰し、乗せては握り潰すを繰り返した。
そして無事に4匹のヒルを絞り終えた降谷は、すぐに手を洗いたくて一目散に走ろうとしたが、笑っていた凛によって綺麗に清めてもらえた。
その後、順調に調合を進める降谷の隣で見ていた凛は、大きく頷いた。
「いいね!
素晴らしい出来栄えだよ!」
「そうか?」
「うん!
あとはここに特有の方法で杖を振るとー・・・」
凛がそう言いながら大鍋に向かって杖を振った。
すると、大鍋から小さなキノコのような形をした白い煙がポフンと音を立てて出た。
「はい、完成~!
すごいよ、零!
人生初の調合で一発で成功させるなんて!」
凛はカンロレードルで鍋の中身を掬って小瓶に入れながら感嘆の声を漏らした。
小瓶の中に入った緑色のトロリとした液体を、目の位置の高さまで持ち上げて確認する。
「色味、粘度共に完璧だよ!」
「へぇ・・・これが縮み薬か。」
隣に立つ降谷も、凛と同じように小瓶の中に詰められた緑の液体を興味深く見た。
「さぁて・・・では、零の人生初のこの魔法薬を頂きまぁす!」
右手に持った小瓶を凛の口に付け、腰に左手を当てて飲もうとしている彼女の右手を、降谷が慌てて握った。
「な!?
何しているんだ!?」
「へ?
何って・・・飲まなきゃ、魔法薬の意味ないよね?」
「何も必ず飲まなければいけない物じゃないんだろ!?」
「そうだけど・・・
せっかく零が調合した縮み薬を味わいたいなぁと。」
「たかがマグル如きが調合したものを、君が飲むんじゃない!
万が一、君の身に何かあったらどうするんだ!」
凛は至極嬉しそうな顔をしながら、降谷の肩にポンッと左手を置いた。
「No problem・・・
零のこの初めてを私が頂けるなんて、この上ない至福なのだよ。」
(Problemしかないじゃないか!)
降谷の心配を他所に、凛は意地でも彼が調合した縮み薬を飲むつもりのようだ。
それを何としてでも阻止したい降谷も、意地でも彼女の掴んだ右手を離そうとはしない。
「ねぇ、早くちょうだい!」
「こんなもの飲むんじゃない!」
「いいの!
早く零のが飲みたいの!」
「ちょっと待て!
言葉だけ聞いていると、色々ダメだろ!」
「?
何言ってるの?」
「~~~~っっ
気にするな。」
調合台の近くでギャイギャイと言い争っていると、調合台の脚に凛の踵が引っ掛かった。
「わっ!」
凛は調合台の脚に踵が引っ掛かった事で後ろに倒れ込み、その彼女の右手を握っていた降谷も引っ張られて前に倒れ込む。
さらに凛の右手に持っていた小瓶が必然的に傾き、傾いた中身が彼女の口に入った。
降谷は咄嗟に凛を抱き抱え、彼女の頭を護るようにして掻き抱きながら身体を反転させて自身の背中で来る衝撃に備える。
凛をそうして掻き抱いた事により、飛び出していた小瓶の中身が降谷の口にも入った。
「ーーーー!?」
降谷は口の中に広がった未知なる味に、思わず眉根を寄せた。
