Episode 34
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国際会議場の上空に辿り着いた凛は、忙しなく辺りを見回した。
背後には建設途中のビルが建っている。
「どこ!?
カプセルはどこなの!?」
数分前にキュラソーから知らされたカプセルの落下地点は、サミット会場の様々な建物がある中でカジノタワーである事を告げられていた。
夜空を目を凝らして見回し、落下してくるカプセルを探す。
すると、高速で落下してくるカプセルを見付けた。
「見付けた!!」
凛がカプセルに向かって杖を構えた。
その瞬間ーーーー
背後に建っていた建設途中のビルのコンクリート壁に勢いよく何かがぶつかる激しい音が聞こえた。
その音に釣られて振り返ると、コンクリート壁を突き破って、RX-7が飛び出してきた。
「!?」
突然現れたRX-7に驚いた凛は、咄嗟に横にズレて車を避けた。
まさか凛がこの場に居ると思っていなかったのか、車内に居る降谷とコナンも驚いて目を大きく見開いていた。
凛の横スレスレを通り抜けていったRX-7の車内から飛び出してきたコナンは左手首に巻いたシートベルトを掴み、右手でベルトの射出ボタンを押した。
そして、バックルから飛び出したサッカーボールをキック力増強シューズで思い切り蹴る。
「行っけえええええ!!」
RX-7のエンジンが爆発して大きな炎が噴き出した。
炎の中から飛び出したボールは夜空を一直線に突き進み、高速で落下するカプセルに迫る。
巨大な2つの物体が激突した瞬間、夜空に鮮明な光が放射状に広がった。
カジノタワーの上空に、大輪の花火が咲く。
コナンが爆炎の中を落ちていく。
その瞬間、車から飛び出してきた降谷がコナンの襟首を宙で掴んで抱き寄せた。
同時に拳銃を構えて国際会議場の大屋根を囲むガラスの壁に3発の銃弾を放つ。
降谷がしようとしている事を瞬時に理解した凛は、滑空するスピードを上げながら杖を降谷の方へ向けた。
『アクシオ!(呼び寄せよ)』
「ーーーー!?」
呪文によって凛の元へ勢いよく引き寄せられた降谷は、そのまま彼女の腕の中へとダイブした。
しっかりと降谷を抱え込んだ凛は、そのままヒビが入ったガラスへと滑空する。
(やばっ
止まれないーーーーっ)
止まれないと悟った凛は、空中で身体を反転させ、大きな翼で降谷とコナンを護るようにして覆い隠した。
そしてそのままのスピードで、背中からヒビの入ったガラスに飛び込んだ。
「ーーーーっ!」
割れたガラスが凛の背中の肉を裂き、鮮血が飛び散る。
傾斜したガラス張りの大屋根に着地し、そのまま転がるようにして滑り落ちていった。
凛がゆっくりと翼を広げて2人の安否を確認する。
「大丈夫?」
「ーーーーっ」
膝を着いてこちらの安否を確認する凛の膝元には、背中から流れ出た鮮血が溜まっていた。
それにすぐに気付いた降谷は目の色を変えた。
「凛・・・っ
出血が・・・っ」
動揺の色を含ませた瞳で見る降谷とコナンに、凛は強めの口調で言った。
「コナンくん、カプセルは?」
ハッとしたコナンは起き上がると、すぐにメガネのレンズをズームアップしてカジノタワーを見た。
展望台の下端とワイヤーが何本か切れて煙が出ていたが、恐らく中に居る人たちは無事だろう。
「大丈夫だよ!」
コナンの声に、凛はふぅ・・・と息をついてその場に座り込んだ。
「あーーーーっ、良かったぁ!
私がぶっ放したカプセルが、カジノタワーに墜落するって言うから慌ててこっち来たら・・・
背後からRX-7さんが飛び出して来るんだもん。
本当にビックリしたよ。」
ケラケラと笑う凛に、顔色を変えたコナンと降谷が詰め寄る。
「凛さんっ血が・・・っ」
「早く・・・っ
出血が酷い・・・っ
早く出血を止めなければ・・・っ」
降谷が着ていたサマーニットの前身頃辺りを裂くと、凛の背中にある裂傷に巻き付ける。
その手は降谷にしては珍しく震えている。
「あ、ちょっと!
服が勿体ない!
てゆーか、服が血で汚れる!」
「早く・・・っ
このままだと凛まで俺の前から居なくなってしまう・・・っ」
降谷は凛の声が聞こえていないのか、目の色を変えて必死に止血を試みていた。
凛はその降谷の様子に溜息を小さく漏らした。
瞳孔が開ききった降谷の頬を両手で包み込むようにして添えた。
「れーい、聞こえてる?」
頬を包んで凛と目線を合わせられた降谷はようやく我に返ったのか、小さく返事をした。
「落ち着いて。
私は零の傍から居なくならないし、この傷も魔法で治るから。
何も心配しなくていい。」
「あ、あぁ・・・」
「魔法だけで出血止まりそう?
結構深いみたいだけど・・・
本当に大丈夫なの?」
凛の隣へやって来たコナンが、痛ましげな表情で問い掛ける。
コナンの方へ視線を向けた凛は、親指を立てて頷いた。
「こんな傷くらい余裕だよ。
確かに魔法じゃ出血を止める程度しか無理だけど、後は帰ったら魔法薬で傷口も綺麗さっぱり治せるから。」
凛がそう言うと、コナンはホッと息をついた。
凛が杖を振って背中の裂傷の止血をした後、降谷の破れたサマーニットにレパロと唱えて元通りにした。
そして元の姿へと戻る。
「後はこっちで処理する。
君もすぐに行くんだ。」
降谷はコナンに言った。
立ち上がったコナンは、降谷と向き合った。
「まだ謎は解けてないよ。
どうして小五郎のおじさんを巻き込んだの?」
降谷はフッと口の端を持ち上げた。
「・・・僕は立場上、公に捜査出来ないし、彼を事件に巻き込めば君は必然的に"協力者"になる。」
「!?」
「そうすれば、君の本気の力が借りられるだろ?」
降谷は苦々しく笑いつつも、その表情はどこか晴れ晴れとしていた。
「・・・買いかぶりすぎだよ。」
コナンも肩を竦めて苦笑いした。
2人はしばらく無言のまま見つめ合っていたが、背中を向けて別々の方向へ歩き出す。
降谷は凛の肩に腕を回すと、自身の方へ抱き寄せるようにしてその場を後にした。
「自宅まで送ってくよ。」
「本当?
実は長距離を猛スピードで飛び回ってたからクッタクタだったの。」
隣で笑う凛の笑顔に癒されるのを感じながら、降谷も微笑み返した。
その降谷に、凛は あ!と言った。
「まずは可哀想なRX-7さんの救出からだね。」
「・・・直るのか?
迎えを寄越そうとしていたんだが・・・
その、俺の車は・・・」
気まずそうに頬を掻きながら目線を逸らす降谷に、凛が首を傾げる。
そして先程の映像が脳内に再生された。
「・・・RX-7さん、燃えてたもんね。」
凛がそう言うと、降谷は苦笑いした。
