Episode 34
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警視庁周辺の高速道路に車はほぼなく、RX-7は猛スピードで走っていた。
時折事故車両が路上に停まっているが、降谷はスピードを緩める事なく、ギリギリのところを通過していく。
「この先は渋滞だよ!」
助手席に座るコナンが、スマホを見ながら叫んだ。
「避難誘導が上手くいってないのか?」
降谷はカーナビの画面をチラリと見た。
この先、高速道路はモノレールゆりかもめの高架を避けるように右に大きくカーブし、高架と並行して埋立地まで続いていた。
カーブを曲がったところから渋滞を示すラインが明滅している。
降谷はニヤリと笑みを浮かべると、アクセルをさらに踏み込んだ。
スピードメーターの針が180キロを超えて振り切る。
降谷はカーブを曲がった渋滞の後尾に居る車両を積んでいないキャリアカーを見付けた。
猛スピードで直線道路を駆け抜けた降谷は、急ハンドルを切り、RX-7は片輪走行で渋滞に突っ込んだ。
そしてキャリアカーの荷台を猛スピードで駆け上がって大きくジャンプした。
側壁を超えてゆりかもめの車両の上に着地する。
さらにゆりかもめの上を走ったRX-7は、反対方向の走行路に飛び降りた。
コナンは助手席の窓を開けて顔を出し、埋立地の方を見た。
様々な建物が建ち並ぶ中、一際高い螺旋状のタワーが見える。
(あれがカジノタワーか!)
「降谷さん!」
スピーカーから風見の声が聞こえ、コナンは頭を車内に引っ込めた。
カーナビの画面にはハンズフリー通話中の表示がされており、風見から電話が掛かってきた事がわかる。
「カプセルのパラシュートが外れて加速しています!」
「!?それで?」
「NAZUから予測落下地点が出ました!
このままじゃ、あと5分でカジノタワーに落下します!
データを転送します!」
コナンは耳を疑った。
カジノタワーには蘭や小五郎、英理たちが居るのだ。
通話が切れ、コナンはすぐにスマホを見た。
「クソッ!
どうする!どうする!?」
コナンが必死で考えを巡らせようとした時、前方から走って来るゆりかもめのヘッドライトが見えた。
「安室さん!」
降谷は窓から顔を出したコナンの襟首を掴み、座席に引き戻した。
「しっかり掴まってるんだ!」
「安室さん!どうするの!?」
このまま走行していると、ゆりかもめとRX-7は正面衝突してしまう。
コナンが運転席を見ると、ハンドルを握った降谷は覚悟を決めた笑みを浮かべていた。
降谷はシフトチェンジをしてアクセルを思いっ切り踏み込んだ。
コナンの目にヘッドライトが眩しく映った。
(ぶつかるーーーーっ!)
コナンは思わず目を閉じた。
すると、RX-7は正面衝突する寸前でゆりかもめの左側に回り込み、片輪で側壁の上を走った。
「ここだ!」
降谷はハンドルを思い切り左に切った。
側壁から飛び降りたRX-7は、すぐ下を通る別の走行路に着地した。
しかし、その後ろからは別のゆりかもめが迫って来ていた。
「くっ!」
降谷は素早くRX-7の体勢を立て直すと、アクセルを踏み込む。
衝突寸前でRX-7が加速して、ゆりかもめを引き離していく。
コナンはその様子を見ながら冷や汗を拭って息を着いた。
(死ぬかと思ったぜ・・・
・・・にしても、スゲェな。)
コナンは運転席の降谷をチラッと見た。
「で、どうする?」
降谷に問い掛けられて我に返ったコナンは、スマホを操作して高層ビルを検索した。
「この建築中のビルに向かって!」
コナンは降谷にスマホ画面を向けた。
そのスマホ画面には、爆破された国際会議場の写真が映っていた。
その国際会議場の脇に建築中のビルが映っている。
「よし!」
コナンの意図を瞬時に理解した降谷はニヤリと笑みを浮かべ、猛スピードでRX-7を走らせた。
エッジ・オブ・オーシャンに到着したRX-7は、建築中のビルに向かった。
そして資材運搬用エレベーターに車ごと乗り込んだ。
「間に合うのか?」
「このビルの高さと、カジノタワーまでの距離を考えると・・・
あと1分後にここから加速出来れば・・・」
コナンはそう言って、スマホのタイマーを1分でセットしてスタートをタップした。
(一か八か・・・頼む!
間に合ってくれ!)
「・・・蘭・・・!」
気が付けば、コナンは絞り出すような声でその名前を呟いていた。
降谷がそのコナンに視線を移す。
「何?」
「・・・愛の力は偉大だな。」
「え?」
コナンは思わず間の抜けた声を漏らした。
怪訝そうに降谷を見ていると、資材運搬用のエレベーターが最上階に着いた。
降谷はエレベーターから出て左に曲がったところで車を停めた。
ヘッドライトが真っ暗なフロアを照らした。
まだ建設途中のフロアには壁がなく、鉄骨が剥き出しになったところにネットだけが張られている。
RX-7の低いエンジン音が響く中、コナンはメガネとスマホをチェックした。
「・・・さっき聞きたかった事なんだけど、安室さんって凛さんと付き合ってるの?」
降谷はフッと鼻を擦った。
そして右手をハンドルに柔らかく添えて、左手でギアを優しく包む。
「僕の恋人は・・・」
降谷はニヤリと微笑んだ。
「凛とこの国さ。」
降谷はブレーキを踏んだ右足の踵でアクセルを踏み込んだ。
RX-7の後輪だけがギャギャギャ・・・と悲鳴を上げて空転する。
「行くよ・・・安室さん。」
「1ミリでもいい。
ズラせるか?」
「そのつもりさ。
ーーーー5!」
コナンがカウントダウンを始めた。
「4!
3!」
空転した後輪からは大量の煙がもうもうと立ち昇る。
「2!
1!」
ジッと前を見据えた降谷が、チラリと舌を覗かせる。
「「ゼローーーー!」」
コナンと降谷が叫ぶと同時に、車が飛び出した。
