Episode 34
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凛が夜空を高く飛行していると、突如光の点が現れた。
それは、大気圏に突入したはくちょうの本体だった。
猛烈な高音にさらされた機体は、一際大きな流れ星の如く輝いていた。
満月を超える明るさで周囲の雲を照らしたかと思うと、光の束が分かれて光の粒となり、やがて消滅した。
本体の部品が溶けてバラバラになり、燃え尽きたのだろう。
すると、光の束が消えた虚空の真下に、別の光跡が横切っていくのが見えた。
それは本体から分離され、高温のプラズマに包まれたカプセルだった。
(あれか!)
凛はすぐさま、その光に向かって飛んだ。
危機管理センター内にある緊急災害対策本部に居た黒田は、ポケットからスマホを取り出すと会議室から出た。
スマホ画面には凛の番号が並んでいる。
黒田は通話ボタンをタップすると、スマホを耳に当てる。
「たった今、高度3万メートルを通過した。」
「そうみたいだね。
私もカプセルを視界に捉えてるよ。」
「どうする気だ。」
黒田の言葉に、凛はニヤリと口の端を持ち上げた。
「兵ちゃん、私の正体を忘れたの?
私は魔女だよ。
カプセルに思いっきり魔法ぶっ放して、パラシュートを開けるようにする。
それより、もし私が映像に映ったら証拠隠滅の方よろしくね!」
小さく頷いた黒田が、フッと微笑んだ。
「わかった・・・
ぬかるなよ。」
「了解!」
凛は通話を切ると、ポケットにスマホを入れながら落下するカプセルに近付いて行った。
落下する火の玉を待ち受けるようにして杖を構えた凛は、険しい表情でゴクリと生唾を飲んだ。
杖を構える右手に力が入る。
そして、1つの光に向かって呪文を唱えた。
『コンフリンゴ!(爆発せよ)』
凛が放った魔法は光の玉に当たり、爆発した。
猛烈な爆風でカプセルのヒートシールドが外れてパラシュートが開いたかと思うと、爆発の衝撃波にのまれて飛ばされて行った。
危機管理センター内の緊急災害対策本部では、総理や各大臣たちが大型スクリーンでカプセルの映像を観ていた。
そこに黒田の姿もある。
突然の爆発に誰もが驚いていると、白煙の中からパラシュートを出したカプセルが飛び出して行くのが見えた。
「パラシュート・・・開きました・・・」
担当参事官が呟き、一同が唖然とスクリーンを見つめる中で黒田1人だけが口の端を持ち上げていた。
耳に差し込んだワイヤレスイヤホンを押さえていた降谷が、コナンに視線を移して口を開いた。
「凛が成功したって。」
「良かった!」
コナンがホッとしていると、日下部を連れた大谷と松原が来た。
「降谷さん。
日下部を逮捕、連行します。」
「あぁ。」
頷く降谷の横で、コナンは彼の表情を見やる。
彼の表情は未だ晴れる事なく、夜空を見上げたままだ。
きっと降谷は今もあの夜空に居るであろう凛の姿を捜しているのだろう。
カプセルからパラシュートを開く事に成功したとはいえ、凛の身が無傷であるとは限らない。
そんな不安を降谷を蝕んでいる。
コナンはその事に気付いていた。
「ねぇ、安室さん・・・
もしかして安室さんと凛さんって・・・」
コナンが2人の関係性について尋ねようとした時、降谷のスマホにさらなる非常事態を知らされる一報が入った。
「・・・何!?
カプセルが!?」
降谷の不穏な声に、コナンは嫌な予感がした。
その頃、凛は夜空を猛スピードで飛んでいた。
手に持つスマホで通話をしながら、動揺を必死に抑えようとするが、抑え切れずに半ばパニック状態だ。
「え、ちょ・・・待って!?
なんで!?ねぇ、どうしてなの!?」
「落ち着いて、凛。」
凛のスマホの通話相手はキュラソーだった。
「落ち着いてられないって!
どうして私がぶっ放したカプセルの新しい落下予測地点が避難民が多いエッジ・オブ・オーシャンなのよ!!
どうしてこんなにも広い地形で、あえてそこに落下するのよ!?
どんな運命の悪戯なのよ!?」
パニック状態の凛は、わんわんと泣きながら通話相手のキュラソーに泣き付く。
それに対してキュラソーは、パソコンを操作しながらシレッと答えた。
「さぁ?
その落下地点であるエッジ・オブ・オーシャンの避難民の中に、例の死神くんが居るんじゃないかしら。」
「えぇ!?
コナンくんは零と一緒に警視庁の屋上ヘリポートに居るはずーーーー」
凛はそこまで言ってハッとした。
「絶対蘭ちゃんがカジノタワーに避難してるわ!!」
「あら、まさかの死神くんのガールフレンド。」
「とっとにかく!
私は今からエッジ・オブ・オーシャンへ向かうから、キュラソーは都度カプセルの報告お願い!」
「えぇ、任せてちょうだい。」
凛はスマホをスピーカーモードに変えた状態でポケットに入れると、エッジ・オブ・オーシャンに向かって急いで翼を動かした。
