Episode 34
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バシッ!!
凛が東京地検の近くに姿現しをすると、辺りに人の気配はなくやけに静かだった。
(・・・誰も居ない?
なるほど・・・彼がここに入ってくる人を止める為にIoTテロでも起こしたのか。
お陰でやりやすい。)
凛は警視庁へ向けて歩を進めようとしたその時、隣に並ぶ植え込みから ぐあっ!と言う声とガサッと植え込みに何かが落ちる音が聞こえた。
そしてその直後、何かが植え込みを転がって凛の居る歩道へ落ちてきた。
「わ!?
って日下部さんじゃん!」
突然目の前に転がり落ちてきた日下部に、凛は驚いて目を見張った。
さらにら植え込み横の車を踏み台にして、大きくジャンプしてきた降谷が、歩道に居る凛を見付けて目を大きくする。
植え込みを高く飛び越えた降谷は、歩道を走って来た日下部の前に着地した。
「クソォ!」
足を止められた日下部は、降谷に殴りかかった。
しかし、降谷は素早くかわし、日下部の肘と肩を押さえて歩道に倒した。
そして両腕を後ろ手に締め上げる。
「日下部検事。
貴方がテロを起こした動機は、本当に公安警察なのか!?」
痛そうに顔を歪めた日下部は、ゆっくりと口を開いた。
「・・・サミットの会場が爆破され、アメリカの探査機が東京におちれば、公安警察の威信は完全に失墜する。」
「何故そこまで公安警察を憎む?」
日下部は背後の降谷に顔を向けて強く睨み付けた。
「お前らの力が強い限り、我々公安検察は正義を真っ当出来ない!」
「正義の為なら人が死んでもいいっと言うのか!?」
追い掛けて来たコナンが、声を荒らげて問い掛ける。
「民間人を殺すつもりはなかった!
だから公安警察しか居ない時に爆破し、死亡者が出にくいIoTテロを選び、カプセルを落とす地点もあそこを選んだ!
それにも関わらず、サミット会場の爆破では死傷者どころか重傷者すら出なかった!」
日下部は警視庁を見上げながら声を荒らげる。
「それでも、誰かが犠牲になる可能性は充分にあったはずだ!」
力なく項垂れた日下部にコナンが言うと、日下部はコナンを睨んだ。
「正義の為には多少の犠牲はやむを得ない!」
日下部の言い分を静かに聞いていた凛は、あまりにも自分勝手な言動行動の数々に苛ついた。
気が付けば勝手に足が日下部の方へ赴いていた。
地面に膝を着いてこちらを睨み上げる日下部の胸倉を掴み、勢いよく持ち上げる。
凛の突然の行動に、日下部だけでなく降谷とコナンも驚きの表情を浮かべる。
「貴方の自己陶酔でしかないくだらない正義論なんてどうでもいい!
こんな事、羽場さんは何も望んじゃいない!!」
凛が言い終えた時、降谷は彼女の肩に優しく手を置いた。
凛は小さくごめん、と謝ると日下部の胸倉から手を離した。
ガクリと地面に膝を着いた日下部の横を通り、警視庁へ向けて歩を進める。
「凛さん待って!
何処に行くの!?」
コナンがその凛を呼び止めると、凛は振り返ってコナンの背に合わせてしゃがんだ。
「コナンくんはNAZUに不正アクセスして変更したコードを日下部さんから聞き出して。」
凛はそれだけ言うと、立ち上がってその場から去って行った。
警視庁の屋上のドアを開けた凛はそのままヘリポートへと上って行く。
凛はHマークの丁度真ん中に立つと、夜空を見上げた。
夕方まで雨が降っていた空は、雨は止んだものの相変わらずどんよりとしている。
目を凝らしてみるものの、探査機が視界に入る事はない。
「・・・零とコナンくん、間に合ったかな。」
ポツリと呟いたその時ーーーー
「羽場!
何処だ!?」
日下部が息を切らしながら、警視庁の屋上ヘリポートへと駆け上がってきた。
そして先にヘリポートのHマークの真ん中に立っていた凛を見付けると、彼女の肩を鷲掴んですごい剣幕で詰め寄る。
「おい!羽場は!?
羽場を何処にやった!?答えろ!」
「は!?
ちょ、いきなり何!?離してよ!
こんなところに羽場さんが居るワケないでしょ!!」
続けて降谷とコナンも日下部を追い掛けて屋上ヘリポートへ駆け上がってきた。
降谷は凛と日下部の姿を見付けると、すぐに凛の肩を鷲掴みにしている日下部の手を叩き落として睨み付ける。
「彼女に八つ当たりをするな。」
「・・・どういう事だ!?
羽場は何処に居る!?」
「彼はここには居ない。」
降谷の言葉に日下部は耳を疑った。
「だっだが・・・携帯では確かにーーーー」
「貴方が見ていたのは、合成映像だ。」
「なっ!?」
「ドローンで撮影した映像を使って、あたかも警視庁のヘリポートに居るように合成したんだ。
彼は今、安全な場所に居る。」
「そうか・・・」
日下部はホッと息をついた。
コナンは降谷の名前を呼んだ。
「安室さん。
起動修正出来てないとしたら、落下位置はやっぱり・・・」
「あぁ。
4メートルを超えるカプセルが、秒速10キロ以上のスピードで、ここに落ちて来る。」
降谷は巨大なカプセルが警視庁に直撃するのを想像して、眉間に皺を寄せた。
凛は2人の会話から、不正アクセスして変更したコードは聞き出せたものの、間に合わなかった可能性を悟った。
静かに右手を上に上げた凛は、口を開く。
「万が一間に合わなかった時を考えて、私もここに居るんだけど・・・
それ、私に任せてくれない?」
凛の言葉に、降谷とコナンは目を見開く。
「えっ・・・それってどういう事?」
コナンの問い掛けに、フッと口の端を持ち上げた凛は魔力を解放した。
眩い光に包み込まれ、次第に光が落ち着くとそこには大きくて真っ白な翼を携えた凛が居た。
辺りに無数の羽根が舞い散り、風に乗って飛んでいく。
「大丈夫だよ。
私が居る限り、誰1人として傷付けさせない。
警視庁も護るから。」
凛はそう言うと、大きな翼を一振り動かしてその場から飛び去ろうとする。
その凛の手を、眉根を寄せた降谷が掴んだ。
「・・・凛、行くな。
君を危険な目に遭わせたくない。」
「零・・・大丈夫。
私を信じて欲しい。」
凛は柔らかく微笑むと、降谷は掴んでいた手をゆっくりと離した。
それを合図に、凛は夜空へと一気に飛び立って行った。
彼女が飛び立った後、ヒラヒラと無数の白い羽根が降谷とコナンの近くに舞い落ちてきた。
「・・・安室さん・・・」
コナンが降谷の名前を呼ぶが、降谷は暗い闇を見上げたままだった。
彼の表情はひどく悲痛な色で染まっていた。
降谷のその表情から、コナンはある可能性を見い出した。
