Episode 34
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
少し先を歩く降谷の背中が視界に入る。
変わらず握られた手は離されないままで、降谷の体温が手を伝って感じられる。
無言のまま手を引く降谷の背中に向かって、凛はポツリと言葉を投げ掛けた。
「・・・透、ごめんなさい。」
振り向いた降谷は、眉を下げて微笑んだ。
「それは何に対しての謝罪だ?」
「私が嗅ぎ回っているから・・・」
「裏の理事官からの任務だろ?
知ってる。」
「・・・ごめんなさい。」
「次のそれは、キュラソーを鑑識官に変装させて国際会議場へ送った事への謝罪か?」
「え、どうしてその事を・・・」
含み笑みを浮かべる降谷に、その理由を知った凛は納得した。
「・・・なるほど。
コナンくんにも盗聴器を仕掛けてたのね。」
降谷は無言のまま再び凛の手を引いて歩き始めた。
その無言が肯定と捉えられる。
どんよりとした曇り空からポツポツと雨が降ってきた。
雨が川の水面に落ちて、無数の波紋に広がっていく。
凛は袖口から杖を取り出すと、杖先を上に向けた。
すると杖先からキラキラと白い光のような線が現れ、それが傘の形へと変わっていく。
傘に変わった杖を降谷が濡れないよう、そちらへ傾けた。
降谷は凛の手から杖を取ると、凛の方へ傾けた。
「・・・透が濡れちゃうよ。」
「君が濡れる方が俺は嫌だから。」
しばらくお互い無言で歩いていると、ふと大型量販店のテレビが視界に入った。
テレビ画面に映っていたのは、緊急速報のニュースだ。
「繰り返しお伝えします。
本日行われている東京サミットの為、厳戒態勢が敷かれている東京都内で、次々の起きている不可解現象について・・・」
アナウンサーが読み上げる画面の下に、電化製品が次々と発火というテロップが流れた。
スマホ、エアコンの室外機、電子レンジ、ドラム式洗濯機、電気ポットなど様々な電化製品から煙や炎が上がっている。
近くを消防車がサイレンを鳴らしながら走って行った。
凛はそのテロップの文字を目で追っていると、キュラソーの言葉が頭を過ぎった。
"スマホから圧力、温度、時間を設定するだけでスープなどの調理が出来る・・・"
(・・・スマホで圧力、温度、時間を設定・・・
IoT圧力ポット・・・)
「・・・IoT・・・」
凛がポツリと呟いた言葉は、隣に居た降谷の耳に届いた。
「凛?」
「・・・透、今都内で起こってるこの不可解な現象・・・
IoTテロだよ。
このテロの始まりが国際会議場の爆破だった。
ネットでガス栓を操作して、現場をガスで充満させてからIoT圧力ポットを発火物にして国際会議場を爆破させた・・・
そして今、犯人はネットにアクセス出来る電化製品を無差別に暴走させてるんだよ。
だから、ネット接続を切ればーーーー」
「暴走は止められる。
・・・そういう事か。」
凛はスマホを取り出し、コナンの番号をタップした。
数コールで通話に出たコナンに、凛は先程降谷に話した事を伝える。
「凛さんも気付いたのか!?」
「うん。」
「だからおっちゃんには出来っこないんだ!
俺は今からこの事を目暮警部に伝える!」
「お願いね。」
凛は通話を切ろうとした、その時ーーーー
「待って!」
「どうしたの?」
「凛さんは今何をしているの!?
なんで安室さんは凛さんを連れて行ったの!?
凛さんは一体安室さんの何なの!?」
矢継ぎ早に質問をするコナンになんと答えようか渋っていると、隣から伸びてきた降谷の手によって凛のスマホが奪われた。
降谷に視線を向けると、スマホを耳に当てた降谷が不敵な笑みを浮かべていた。
「・・・凛と僕の関係を知りたいなら、後で教えてあげるよ。」
降谷はそれだけ答えると、まだ受話口からコナンの声が聞こえていたにも関わらず通話を切った。
そしてスマホを凛に返した。
日本橋船着場から日本橋へ続く階段のたもとに、傘を差した風見が立っていた。
彼は片手に持ったスマホでニュース番組を観ていた。
「まさかIoTテロとはな。」
声がした方へチラリと視線を移すと、そこには降谷と凛が近くに居た。
風見は凛を見ては少し驚きの表情をするが、すぐに表情を戻した。
スマホをポケットに入れて、凛と降谷に背を向けて少し離れる
「流石ですね。
そんな手口を特定するなんて・・・」
「特定したのは僕じゃない、凛だ。
まぁ、お陰で事件化には成功した。」
降谷はそう言うと、その場から歩き始めた。
彼に続いて凛も歩き始める。
「よって我々がした違法作業にカタをつけたい。
協力者の解放だ。」
「その前に、現段階でゼロが掴んでいる情報を教えてください。」
「あぁ。」
降谷は隣に立つ凛にチラリと視線を移しながら答えた。
「NAZU!?」
「この情報をサイバー犯罪対策課に流し、捜査会議で刑事部に報告させる。」
「・・・刑事部に華を持たせるんですか?
我々公安部から報告すべきです。」
風見の言葉に、降谷は軽く笑った。
「ご褒美だよ。
爆破テロが事件化出来たのは刑事部のお陰だ。
それに、この情報がゼロからだって事は裏の理事官には伝わっている。」
風見は小さく息をつき、降谷をチラリと見た。
「・・・降谷さんが怖いです。」
すべてが降谷の思惑通りに事が進み、風見は恐怖すら覚えた。
「・・・風見。
僕には、僕以上に怖い男が2人居るんだ。
その内の1人は、まだほんの子どもだがな。」
言っていて自分でも可笑しく思ったのか、降谷はフッと笑った。
「今、降谷さんと同じ子どもを思い浮かべましたよ。」
風見が振り返ると、そこに居たはずの降谷と凛の姿は消えていた。
驚いてすぐに周囲を見回したが、行き交う人々の中に2人の姿を見付ける事は出来なかった。
人通りの少ない道に入った時、凛は降谷の腕を軽く引っ張って呼び止めた。
「透。
私、一度戻るよ。」
「何かあったのか?」
「少し・・・気になってる事があって。」
降谷は探るような視線を向けたが、すぐに口の端を持ち上げて手に持っていた杖の傘を凛に返した。
「あまり無茶はしないでくれ。」
「・・・それ、透が言う?」
笑って杖を受け取ると、凛は降谷に向かって杖を振って防水魔法を施した。
そしてその場から姿くらましを使って消えた。
