Episode 34
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その頃、エッジ・オブ・オーシャンがある埋立地の周囲水域では、警視庁の警備艇や公安部の刑事たちが巡回していた。
国際会議場内にも公安刑事の姿があり、ビル内を巡視している。
風見は大谷、松原と料亭を出ると、他の刑事たちと合流してビルの外に出た。
するとその時、とてつもない轟音と共に凄まじい爆風が巻き起こり、国際会議場のガラスや壁が吹き飛んだ。
一瞬にして国際会議場は業火に包まれ、黒煙がもうもうと立ち昇った。
その中から傷だらけになった降谷がよろめきながら出て来た。
ふらついた足取りで道路まで進むと振り返り、無惨な姿となった国際会議場を呆然と見上げる。
すると、炎に包まれた鉄柱が音を立てながら降谷を目掛けて倒れたきた。
間一髪のところで避けた降谷は、右腕を抑えながらその場から走り去って行った。
灰原は、ぼんやりとテレビを観ていた。
テレビのワイドショーは、宇宙探査機のニュースを伝えている。
「無人探査機"はくちょう"が火星からサンプルを採取を終え、いよいよ地球に帰ってきます。
帰還する際は、探査機本体から直径4mの地球帰還カプセルを切り離し、大気圏に突入させます。
その後はパラシュートで降下し、日本近海の太平洋上に着水する予定です。
探査機本体は大気圏突入時に燃え尽きます。」
「へー!火星!」
灰原が座っていた隣に腰掛けた凛は、テレビを観ながら感嘆の声を上げた。
灰原はその凛の方をチラリと見やると、その口元に笑みを浮かべた。
「あら、興味があるの?」
「あるある!
昨日の夜にやってたテレビ番組でさ、火星には火星人が住んでるって言ってたんだよねぇ。
って事はさ、この"はくちょう"は火星人と逢ったって事でしょ!?」
至極真面目な顔をして話す凛に、灰原はなんと声を掛ければいいのかわからず当たり障りのない返事をした。
「火星人なんて居るワケねェよ。」
「コナンくんったら、夢も希望もなーい。」
凛が声の主であるコナンにつまんなさそうに声を出す。
今しがた庭からソファへと戻って来たコナンは、呆れた笑みを浮かべながら凛の方を見た。
「つーか・・・
凛さんって意外と、んな事信じてんだな。」
「えー、だって居るって自信満々で言ってたんだよー?」
その2人に向かって灰原は声を掛ける。
「あら・・・私たちが知らないだけで、本当は居るかもしれないわよ?」
「あ?
灰原まで信じてんのか?」
灰原はクスッと笑うと、隣に座っている凛の手を握って持ち上げた。
「だって、魔女も居るんだもの。」
「ハッッッ!
そうだよね!?確かに!」
「おいおい・・・
凛さんはまた違うだろ。」
コナンが乾いた笑みを浮かべたその時ーーーー
「番組の途中ですが、たった今入ったニュースです。」
テレビから司会者の緊迫した声が聞こえてきた。
「お伝えします。
来週、東京サミットが行われる国際会議場で、先程大規模な爆発がありました。
その時の防犯カメラの映像です。」
テレビ画面がスタジオから国際会議場の防犯カメラの映像に切り替わると、ズドォォォン!と凄まじい音と共に国際会議場で爆発が起こり、瞬く間に粉塵で覆われて画面が真っ白になった。
「ーーーー!?」
凛は先程の防犯カメラの映像に、目を大きく見張った。
「これは・・・!」
衝撃の映像に、コナンは思わず身を乗り出した。
そして、阿笠博士を呼びに庭へ向かった。
ソファに残った凛と灰原は、ジッとテレビを観続けた。
「現場となった統合型リゾート"エッジ・オブ・オーシャン"はまだ開業前だった為利用客は居ませんでしたが、サミット警備の下見をしていた警察官数人が軽傷を負ったとの情報が入っています。
繰り返します。
先程、統合型リゾート"エッジ・オブ・オーシャン"で大規模な爆発がありました・・・」
テレビの司会者から伝えられた言葉に、とりあえず死者が出なかった事に凛は安堵する。
エッジ・オブ・オーシャンの全体図が映し出されたかと思うと、再び防犯カメラの映像に切り替わった。
真っ白になっていた画面は粉塵が徐々に収まって、もうもうと噴き出す煙と炎が映る。
一瞬、その中に人影が見えた。
(ーーーー零っ!)
見間違えるハズのないその人物の姿に、凛はテレビの方へ身を乗り出した。
ほんの一瞬だったが、間違いなく傷だらけの降谷の姿だった。
すると、隣に座っていた灰原の表情が凍り付いている事に気付いた。
恐らく、灰原も先程の防犯カメラの映像で人影を見たのだろう。
そして、その人影の正体にも気付いたのだろう。
「・・・哀ちゃん・・・」
凛は凍り付いた表情で俯いた灰原の顔を覗くように、床に両膝を着いて彼女の両手にそっと自身の両手を添えた。
「・・・爆発直後の・・・防犯カメラの映像・・・」
「・・・うん。」
「一瞬だったし、見間違えかもしれないけど・・・」
「・・・うん。」
凛が添えていた灰原の震える手の甲を、親指でスルリと撫でた。
「あの人が・・・
ポアロで働いている・・・確か名前は・・・」
「・・・透?」
「えぇ、そうよ・・・
安室 透が・・・」
灰原が顔を上げると、目の前の凛は眉を下げてとても悲痛な表情をしていた。
その彼女の顔に、灰原は言葉を噤んだ。
「・・・そうだね。
透だね・・・」
「・・・凛、さん?」
凛は立ち上がると、灰原の頭を優しく撫でた。
「・・・ちょっと帰るね。
みんなにもそう言っといて?」
その場から離れて玄関へ向かおうとする凛の手を、灰原が慌てて握った。
「待って!
どこに・・・どこに行くの?」
振り返った凛は、弱々しく笑った。
「・・・貴女、もしかして・・・
彼とーーーー」
言葉を紡ごうとした灰原の唇に、凛の長い人差し指がそっと添えられた。
凛自身の口元にも片方の人差し指を添えていた。
「しー・・・
その答えはまた後で、ね?」
凛はそれだけを残し、その場から姿くらましで消えた。
