Episode 3
夢小説設定
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「・・・すみません。
起こしてしまいましたか?」
凛の目の前には、ピンクがかった髪に眼鏡をかけた男が立っていた。
突然の登場人物に、凛は固まった。
「顔色がよくありませんね。
大丈夫ですか?」
男が凛に向かって左手を伸ばした。
その瞬間、凛は素早く男の左手を掴んで横にズレて立ち上がり、そのまま男の背後へ回り込んで左手を押さえ付けた。
すると、男はゆっくりと視線を凛へと移した。
(ーーーーやば!
咄嗟に相手の背後取っちゃった!)
「あ、すみません。
大丈夫ですか?」
凛は慌てて押さえ付けていた男の左手を離した。
男は軽く左手を振りながら、「大丈夫なので、気にしないでください。」と言った。
「僕が急に、女性である貴女に対して熱を測ろうと手を出したのがいけませんでしたから。」
「あ・・・
いえ、私の方が・・・
すみません、驚いたとはいえ、手首を捻るようにして押さえ付けてしまって・・・」
「では、過失の割合は50:50という事で。」
男の言葉に、凛はピクリと反応した。
(お互い様って言わずに、敢えてその言い方・・・
この人は外国人なのかな。)
「大丈夫ですか?」
考え込んでいた凛の顔を覗き込んだ男に、凛は慌てて男の顔面に両手を当てて遠ざけた。
「だから、さっきからイケメンのお顔が近いんだってば!
ーーーーハッ!
私ってば、また失礼な事を!
眼鏡に指紋はついていませんか!?」
「・・・フッ」
「わっ笑われた・・・」
「あぁ、すみません・・・フッ
あまりにも貴女が必死だったもので・・・ククッ」
肩を震わせながら笑いを堪えている男に、凛はクエスチョンマークを頭の上に浮かべた。
「そんなに笑う程でしたか?」
「えぇ。」
「眼鏡は無事ですか?」
「無事ですよ。
そうだ、僕の名前は沖矢 昴と言います。」
「私は神崎 凛です。」
「凛さん、ですね。
実は今日、僕は新しいスマホを選びに来たのですが・・・
最近は色々と種類があって結局選べなかったんですよ。」
沖矢の話に凛は親近感が湧き、自然に微笑んだ。
「同じですね。
私もスマホを初めて買いに来たのですが、一緒に来た人でないとわからなくて・・・」
「そうだったんですね。
お連れの方はどちらに?」
「何か事件があったようで・・・
そちらに行きました。」
「ならばその事件は無事に解決したようなので、もうすぐ帰って来ますよ。」
「そうなんですね。
良かったです。」
「ここで逢ったのも何かの縁ですし・・・よろしければ連絡先の交換をしましょう。
あぁ、別に強制というワケではないので。」
沖矢はポケットから取り出した手帳のメモスペースに、自身の電話番号を書いた。
そしてその部分を破ると、凛に差し出した。
「無事にスマホ、買えるといいですね。」
「ありがとうございます。」
凛は差し出された連絡先を受け取りながら礼を述べた。
「あと、すぐそこの自販機で買ったばかりのミネラルウォーターもどうぞ。」
「え、いいですよ?」
「おや、毒など入っていませんよ。
なんなら、今ここで毒味でもしましょうか?」
「そういう意味ではなくて・・・」
「なら、もらってください。」
沖矢は凛の方へ顔を少し近付けた。
「顔色が悪いです。
軽く脱水症状かもしれませんから・・・ね?」
「ありがとう、ございます・・・」
凛は遠慮がちにミネラルウォーターのペットボトルを受け取ると、ニコリと微笑んだ。
「ホー・・・?」
「?
何か?」
「いえ、何も。
では、僕はこれで・・・」
沖矢は凛から離れると、ポツリと呟いた。
「・・・中々可愛らしい笑顔の持ち主だったな。」