Episode 34
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それは何度目かわからない黒田と凛の奇妙なお茶会が開かれていたある日の事、手に持っていたカップを静かにソーサーの上へ戻した凛は聞き返した。
「エッジ・オブ・オーシャン?」
「あぁ。」
「それって来月開業予定の施設だよね?」
「施設自体はな。
来週に開催される東京サミットが、そのエッジ・オブ・オーシャンの国際会議場で行われるんだ。」
凛の向かいの椅子に腰掛けていた黒田は、静かにカップに口を付けた。
(サミット・・・アメリカやイギリスなど主要国の首脳が集まるって事か。)
凛は納得すると、紅茶の入ったカップへと手を伸ばした。
「なるほど・・・
当日、私は各国のお偉い様の護衛に回ればいいのね?」
「あぁ、その通りだ。」
「了解。」
凛は黒田から当日の警備にあたる場所、警視庁からの人員の配置場所、国際会議場となる建物の構造など細かく聞きながら、すべてを頭に叩き込んだ。
黒田からの指示を確認していた凛は、ふと気になる事が出てきた。
「・・・ねぇ、兵ちゃん。」
「ん?どうした。」
「もちろん事前に警視庁の警備艇がチェックするよね?
その中に公安の人たちも居る?」
「あぁ。」
「その日にち・・・教えてくれない?」
黒田の視線が凛を射抜く。
「何か気になる事でもあったか?」
「んー・・・まぁ、ないに越した事はないんだけど・・・
念の為、かな。」
「良かろう。」
凛は礼を述べ、警視庁の警備艇や公安部の刑事たちが巡回する日にちや時間帯の詳細を聞いた。
そして、公安部が国際競技場を巡回する日がやってきた。
警察庁の警備企画課では、朝早くから降谷や風見などの公安刑事たちが集まっていた。
降谷が風見たちに本日の巡回にあたる注意点や最終チェックをしながら、的確な指示を出していく。
「・・・以上だ。」
「了解です。」
「よし、では今から国際会議場へ向かう。」
降谷たちが警察庁の正面玄関から出ようとした瞬間、バシッという姿現し特有の音と共に、突如して目の前に凛が現れた。
「おはようございまーす。」
右手を軽く上げて呑気に挨拶する凛に、降谷や風見たちは目を大きく見張った。
「なっ、凛!?
何故君がここに!?」
「や、零。
今日も朝早くから元気で何よりだよ。」
驚く降谷に歩み寄り、背伸びをしながら腕を掴んで軽く引っ張ると、降谷はすんなりと凛の方へ腰を屈めた。
「ちょっと気になる事があってね。
ちなみに兵ちゃんから言われて、当日は私も巡回に当たってるよ。」
耳元でこっそり話された言葉に、降谷はなるほどなと思った。
「なら、今日の巡回も?」
「ううん、今日の巡回には行かない。」
「気になる事って・・・何かあったのか?」
「んー・・・ただの胸騒ぎってだけなんだけど・・・ね。」
凛はそう言うと、降谷や風見たちに向かって杖を振った。
暖かい何かに包まれたような感覚に、降谷も風見たちもそれが何を意味するのかわかった。
しかし、今回の護りの魔法は普段の柔らかい温かさとは違って少し熱く感じた。
「護りの魔法・・・だよな?
ありがとう。」
「これくらい礼には及ばないよ。」
「いつもより少し熱く感じたんだが・・・」
「うん、強めに掛けたから・・・」
何かを考え込むように指を口元に添えている凛の頭を、降谷はポンッと優しく撫でた。
その行動に視線を降谷に移すと、彼は口元に笑みを浮かべていた。
「いってきます。」
「いってらっしゃい。
気を付けてね?」
降谷は頷くと正面玄関から出て行った。
その後に続くようにして、風見たちも凛に礼を述べながら出て行った。
彼らの後ろ姿を見送り、各々の車が出て行くのをしばらく見ていた凛は、胸騒ぎを振り払うかのように首を軽く左右に振った。
そして、姿くらましを使ってその場から消えた。
