Episode 28
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キュラソーが紅茶片手に休んでいる傍で、凛はジッとキュラソーの顔を見つめていた。
もちろん彼女のその熱い眼差しはキュラソーにも気付かれている。
「ふふ、そんなにも見つめられていると恥ずかしいわ。」
「あ、ごめん・・・」
「いいのよ。
どうかしたの?」
凛はキュラソーが着ていた道着の端をちょいちょいと引っ張って遊びながら答えた。
「んー・・・
お願いなんだけど・・・」
「何かしら。」
「私と手合わせしてほしいな。」
「凛と?」
キュラソーはチラリと凛の服装に目を向けた。
凛の本日のファッションは、ロング丈のスカートだ。
「でも凛は今日スカートじゃない。」
「あぁ、服装なら・・・」
凛は杖を振ってロングスカートからスキニーパンツへと早着替えした。
「これならいいでしょ?」
「わかったわ。
少しだけよ?」
「ありがとう!」
楽しみ!と軽くその場でジャンプして身体をほぐす凛に、キュラソーはフッと口の端を持ち上げた。
「つい癖で魔法放っちゃダメだからー・・・
あ、いいところに!」
右手に持っていた杖をクルクルと回しながら道場の外へ視線を移すと、ちょうどその前を通り掛かった風見が視界に入った。
「風見さーん!」
「!?
神崎さん!?
何故こんな場所にーーーー」
この場に居るはずのない人物に、風見は目を見開いて驚愕する。
その風見の腕には大量のファイルが抱えられていた。
「いいからいいから~。
これ、少しの間預かっててください。」
凛は風見の手に無理矢理杖を握らせた。
握らされたものが凛の杖であるとわかった風見は、さらに驚愕する。
「こっこれはーーーーっ
預かるのが何故自分なんですか!」
「え、風見さんなら私の大事な杖を預けるのに信用出来る人なので。」
シレッと答えた凛に、風見は彼女の大事な杖を預ける程信用してもらえるのは有難いが、物が物なだけに責任重大すぎて遠い目をした。
「しっしかし・・・何故、これを自分に預けなければいけないのですか?」
「キュラソーとちょーっと手合わせをしたいんです。
最近私の身体が鈍ってて動きが悪いので・・・
すぐ終わるので、杖お願いしまーす!」
言い終えると颯爽とキュラソーの元へ駆けて行った凛に、風見は大きな溜息を漏らした。
道場内は公安の男たちが、キュラソーと凛の手合わせを真剣な表情で見守っていた。
キュラソーの正面に立った凛は、いつもの愛嬌ある微笑みを浮かべた。
「キュラソー、よろしく!」
「ふふ、お手柔らかに。」
「じゃあ・・・
Ready・・・」
互いの足先にジリッと力が入る。
「・・・go!!」
その掛け声が上がった瞬間、凛は一気にキュラソーの懐目掛けて間合いを詰めた。
キュラソーの懐へ入った凛は、胸元の服を掴みに掛かる。
しかしキュラソーにその手を振り払われ、振り払った手を掴まれた。
掴んだ手をそのまま捻りながら足を薙ぎ払う。
足を薙ぎ払われた凛はバランスを崩したと思われるが、そのまま床に両手を付いてくるりと身体を回転させて着地した。
着地をして身体の向きを変えた凛は、再びキュラソーに目掛けて距離を詰める。
足の届く距離に入ると、左脚を軸にして右脚を振り上げてキュラソーの横腹目掛けて蹴りを入れる。
察したキュラソーは横腹を左腕でガードして凛の右脚を受け止める。
受け止めた凛の右脚の甲を左腕に引っ掛けられ、続けて振り上げられた左脚がキュラソーの左腕に絡まる。
バランスを崩したキュラソーが素早く右手を床に着いて身体へ襲い掛かるハズだった衝撃から守り、凛との距離を取る。
「さすがキュラソー・・・
すっごく強いね。」
「ふふ、ありがとう。
私も凛の身体能力が高い事はわかっていたけど・・・
ここまでとは思っていなかったわ。」
純粋に楽しめるこの手合わせに互いに口の端を持ち上げると、再び距離を詰め、激しい攻防を繰り広げる。
道場内は2人の身体能力の高さに感嘆の声を漏らし、徐々に声援へと変わっていく。
入口から見ていた風見ですら、目の前で繰り広げられる2人の手合わせに目を離せないでいた。
