Episode 27
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降谷に組織の監視の目がついてから2週間が経った。
この日もポアロへ出勤する凛の護衛の為に
車で送っていると、風見は助手席に座る彼女から目を剥く程の提案が持ち掛けられた。
「・・・ダメです。」
「えー何でですか。」
「普通に考えてダメだからです。」
「えー・・・そこをなんとか。」
「そもそも降谷さんの許可なしに、私だけの判断で許可する事は出来ません。」
拗ねたように唇を尖らせた凛はなるほどと呟いた後、閃いたように目を輝かせた。
「あ、なら零に直談判したらいいって事ですね。」
「いえ、降谷さんこそ確実に許可を出さないと思いますが・・・」
「それは相談してみなきゃわかりませんよ~。
零は何だかんだ優しいので許可してくれそうですし。
では、今日もありがとうございました!
お仕事頑張ってくださいね。」
凛は助手席から降りると笑顔で手を振ってポアロへと向かった。
車内に残された風見は、凛からの相談事で荒ぶる降谷を想像して身震いをした。
そしてついに降谷は組織からの監視の目が外れた。
自身の身体と車内に付けられていた盗聴器がすべて外れた事を確認した降谷は、久しぶりにグレーのスーツに袖を通し、最後にネクタイにいつものラピスラズリのネクタイピンを着ける。
そして車に乗り込み、警察庁へと走らせた。
公安部へ着いた降谷は、風見の姿を見付けるとそちらへ歩を進めた。
「お疲れ、風見。」
「お、お疲れ様です、降谷さん。」
「俺が居ない間、特に変わった事はなかったか?」
「は、はい・・・」
風見の目は泳いでおり、時折チラチラと背後を確認するような素振りを見せていた。
その風見を不審に思った降谷は、すぐさま問い掛ける。
「どうした、何かあったのか?」
「い、いえ・・・その・・・」
その瞬間、風見の背後から凛の姿がひょっこり現れた。
さすがの降谷でもこの場に居るはずのない人物の登場に驚き、目を大きく見開いた。
「なっ、凛!?」
「Hi、零!
無事に組織の監視の目から逸れて良かったよ。
お疲れ様。」
「あ、あぁ・・・ありがとう。
しかし、どうして凛がここに?
組織の情報の話なら、後で俺が凛のマンションへ行くってーーーー」
降谷が話し終える前に風見の背後から降谷の前に出て来た凛は、彼の両手をギュッと握った。
「・・・零、逢いたかった!」
「あぁ、俺も逢いたかったよ。」
「零にお願いがあるの。」
身長差もある為必然的に上目遣いで見上げ、眉を八の字に下げる凛に、降谷の心臓はドキリと高鳴る。
「お、願い・・・?」
「うん・・・
あのね、どうしても一緒に住みたいの。」
"どうしても一緒に住みたいの"
その言葉を降谷の脳内で幾度なく繰り返された。
動かなくなった降谷に、凛は首を傾げながら彼の名前を呼んだ。
すると降谷は動き出し、目尻を下げて柔らかく微笑んだ。
凛の腰に手を回して自身の方へ引き寄せ、空いた方の手で彼女の頬を包む。
「・・・まったく、君はそんな事をお願いする為にここに来たのか?」
「そんな事じゃないわ。
とても大切な事よ。」
「ん?
そんなに一緒に住む事が大事?」
「そうよ。
1秒でも早くお願いを聞いて欲しかったの。
だから私・・・迷惑なのわかってたけど、零が組織の監視が外れてすぐに逢いに来たんだもの。」
降谷はその言葉にゴクリと喉を鳴らした。
目の前で上目遣いで見上げたままの凛の顔に、自身の顔をゆっくりと近付けていく。
「いいよ。
凛が望むなら、すぐにでも俺のセーフティマンションにーーーー」
「へ?
私のマンションでいいんだけど?」
降谷はピタリと止まって目を瞬かせた。
「だが、凛のマンションより俺のマンションの方がセキュリティはいい方だ。」
「セキュリティなら私の魔法でどうとでも上げれるわよ。」
話が噛み合わない2人に、風見は恐る恐る降谷の肩を叩いた。
そして振り向いた降谷の耳に、こっそり凛が言いたかった事を話す。
「降谷さん、違います。
神崎さんは降谷さんと一緒に住みたいと言っているのではなく、キュラソーと一緒に住みたいと言っているのです。」
風見から聞いた瞬間、先程までの降谷の甘い微笑みは消え失せ、スッと凛を腕の中から解放した。
「・・・ダメだ。」
「何故だ!?
さっきいいよって言ってくれたのに!?」
「キュラソーと一緒に住むんだろ?
ダメに決まってるだろ。」
突然意見を真逆に変えた降谷に戸惑いを隠せない凛は、当然不満の声を上げる。
「意味わからないよ。
だってキュラソーが生きてるって組織にバレたら、彼女は組織に狙われるんだよ?」
「キュラソーは公安の保護下の元、その身の安全の為に公安が所有する拘置所へ移動する。」
「キュラソーが今後如何なる場合であっても私たちに協力する事を惜しまず、彼女が知り得る組織の情報をすべて話す事で、彼女の身柄は公安の監視の元ある程度の自由は得られるって聞いた。」
「!?
誰からその事を!?」
「風見さん。」
降谷は鋭い眼光で風見を睨み付けた。
風見はビクッと肩を揺らし、蛇に睨まれた蛙の如く縮こまった。
降谷は溜息を深く漏らし、眉根を寄せて髪の中に手を突っ込みくしゃりと髪を握りしめた。
「だからと言って、君が彼女と一緒に住む理由にはならないだろう?」
「私と一緒ならいつでも護れるじゃん。
なんなら、外出時にキュラソーの姿を変える事も出来る。」
グッと口を噤んだ降谷に、凛はニヤリと笑みを浮かべて畳み掛ける。
「彼女は組織を裏切って私たちの味方になってくれた。
なら零がさっき言ったように、完全な安全を確保されるまで彼女の身を護るのも公安の仕事の1つでしょう?
でも公安の人たちも忙しいから、キュラソーに付きっきりでの行動は難しい・・・
そこで事情を知る私なら・・・一石二鳥どころか一石四鳥以上のお得な話よね?」
凛の圧に根負けした降谷は、再び深い溜息を漏らした。
「・・・いいだろう。
だが、いくつか約束がある。
その1、彼女が少しでも外へ出る際には、必ず変装させる事。
その2、彼女が少しでも怪しい動きを見せた場合、容赦なく魔法を使い捕獲する事。
その3、毎日21時には俺か風見が確認しに凛のマンションへ行く。」
「それじゃあ、零と風見さんが過労に過労を重ねて倒れちゃうよ。
国を護らずして倒れちゃってもいいの?」
「・・・2日に1回。」
「一緒だよ。」
「・・・・・・3日に1回。
これ以上の譲歩はしない。
これを承諾出来ないなら、その話はなしだ。」
「えー・・・わかったよ。
じゃあその約束でよろしく。」
「今から彼女を迎えに行くなら送ってく。」
「いいの?
ありがとうー!
ではみなさん、お騒がせしました!
お仕事頑張ってください!」
降谷と凛は仲良く公安部から去った後、公安部で先程のやり取りの一部始終を見ていた部下たちは・・・
「さっきの降谷さん見ました!?」
「何ですか、あの砂糖にメープルシロップとハチミツを掛けたような喉焼け確定甘々な雰囲気!!!」
「見聞きしてるこっちが恥ずかしくなりましたよ!」
「あの降谷さんがあんなにも緩みきった顔するんですね!?」
「絶対俺たちの事なんて眼中にない程、目の前の神崎さんしか見えてなかったですよね!?」
「さすがにこれはっっっ
ついに神崎さんとお付き合い出来たって事ですよね!?」
部下たちは一斉に風見を見た。
風見は眼鏡のブリッジを右手の中指で持ち上げた。
「あぁ、お前たちの言う通りあの2人は付き合い始めたようだな。」
「!?
聞いたか、お前ら!」
「今日は早く仕事片付けて、降谷さんの恋愛成就おめでとうパーティに行くぞ!!!」
「「「「おぉぉぉぉ!!!」」」」
(この公安部は、降谷さん愛が強すぎる・・・)
わちゃわちゃと騒ぎ立てる部下たちに、風見はフッと微笑んだ。
