Episode 21
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ーーーーそれはラムからの命令で始まった。
俺は組織の裏切り者の可能性のあるヤツの監視をしていた。
監視などまどろっこしい事せず、さっさと殺ってしまえばいいものを・・・
疑わしきは罰せよじゃなかったのか。
そう言ったが、ラムから返ってきた言葉は"そうしたいのは山々ですが、少々困った事が起こりまして。まぁヤツが逃げないよう監視をお願いします。"だった。
それなら他のヤツに任せればいいものを・・・
ラムは俺でなければ意味がないと言う。
当然それ以上の理由は有耶無耶にされた。
これだから秘密主義のヤツは嫌いだ。
監視を始めて3日目、未だにヤツが部屋から動く気配はない。
組織からの呼び出しに応じないヤツが部屋から動かぬ以上、確実な裏切りの証拠を掴む事も出来ねぇ。
組織一の警戒の強さを持つヤツと言われているのは間違いじゃねぇようだ。
何度目かわからねぇ舌打ちが勝手に出て、何本目かわからねぇ煙草を吸う。
苛立ちが募ったそんな日に、変な女に絡まれた。
その女は俺の目の前で立ち止まり、ツラを顰めたかと思えば俺の方を見た。
長い黒髪を風に揺らした女のヘーゼルカラーの目に吸い込まれた。
なんてこたァねェただの女。
俺に向かって煙草を捨てるなと言ってきた挙句、ビニール袋を渡してきた変な女。
何故俺はあの時、すぐに"失せろ"と言えなかったのかーーーー
「ーーーー兄貴。」
「なんだ。」
「監視を始めてから今日で9日目ですぜ?
これ以上ただ監視してるだけじゃ何の収穫も期待出来やせん・・・
ヤツの自宅へ乗り込みやしょう。」
「ダメだ。
ラムから乗り込む命令が来てねぇ。」
ジンはポケットから煙草の箱を取り出し、煙草を一本出そうとした。
しかし、箱の中身は空だった。
舌打ちをして空になった煙草の箱をグシャッと握り潰す。
その様子を見ていたウォッカは自身が吸っている銘柄の煙草を一本差し出した。
「兄貴・・・すぐに煙草買ってきやす。
その間、気休め程度ですが俺の煙草吸っててくだせぇ。」
ウォッカはそう言うとすぐさま走ってその場から離れた。
ジンは仕方なく渡された煙草を口に咥えて火を点けた。
肺全体に染み渡るようにして煙草の煙を吸い込むと多少和らぐイラつき。
フーッと紫煙を吐き出した時、ウォッカではない声が聞こえた。
「あ、また居た。」
ジンが声の方へ視線だけを動かすと、そこには両手に買い物袋を下げた凛が居た。
「しかもまた大量に煙草吸ってる。」
チラリとジンの足元を見て苦笑いする凛に対して、ジンは静かに煙草を吸い続ける。
すると、凛は買い物袋の中をゴソゴソと漁り始めた。
(・・・またビニール袋か。)
ジンは小さく溜息を漏らしながら、凛の行動をただジッと見ていた。
しかし、今度はジンが思っていたビニール袋は出てこなかった。
その代わりに買い物袋から出てきたのは、レザー調のソフト生地で出来た黒色の携帯吸殻入れ。
「これあげます。」
差し出された携帯吸殻入れをジッと見ながらジンはここで初めて口を開いた。
「・・・何だこれは。」
「え、携帯吸殻入れ。」
「それは見りゃわかる。」
「あぁ、何か怪しい物だと思ってます?
大丈夫ですよ・・・このスーパーの中にあったダイナソーでさっき買ってきたやつなんで。」
そう言いながら携帯吸殻入れの外袋を開けて中身を取り出し、ジンに中に何も仕込んでいない事がわかるように携帯吸殻入れの中を見せた。
「ほら・・・何も仕込んでないでしょう?」
「・・・何のつもりだ。」
「単純に、ポイ捨てするよりこっちに捨てた方がいいじゃないですか。」
凛は空いていたジンの右手に無理矢理携帯吸殻入れを持たせた。
その彼女の行動に、ジンは軽く手を振り解く。
「実はこれ買う前に一度ここの前を通ろうとしたんです。
そうしたら煙草の臭いがして・・・
あ、前の人が居るのかなー、またいっぱい煙草捨ててるのかなーって思って・・・
また店に戻って買って来たんです。」
凛はジンの目を見ると、フッと微笑んだ。
「居たのが貴方で良かったです。
もし今日ここに居たのが違う人なら、わざわざ買いに戻って恥ずかしい目に遭うところでした。」
それだけ言うとペコッと会釈して、凛はその場から去って行った。
残されたジンは右手に残った携帯吸殻入れをジッと見つめた。
「兄貴!
お待たせしやした!
・・・兄貴?」
ウォッカは右手に持った携帯吸殻入れを見て動かないジンに首を傾げた。
「何ですか、ソレ・・・
兄貴のですかィ?」
「・・・あぁ。」
「兄貴のんにしちゃ、随分チャチィ・・・あ、いっいや、すいやせん!」
「別に謝るこたァねェ・・・
実際、コイツは110円だ。」
ジンは携帯吸殻入れのスナップボタンを開けると、吸っていた煙草をその中へ捨てた。
そしてそのまま携帯吸殻入れをポケットに入れた。
「俺が居ない間に何かありましたかィ?」
「・・・変な女に絡まれた。」
「!?
またですかィ・・・次こそはその女、殺りますかィ?」
「・・・いや、放っておけ。」
ジンは口元を僅かに持ち上げながら、新しい煙草を一本口に咥えて火を点けた。
その後、ラムからの連絡で監視を続けていた組織の人間は裏切りではなかったと知らされ、ジンがブチ切れたのは内緒の話。
