Episode 22
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RX-7の助手席に座った凛は、運転席へと乗り込んだ安室をジト目で見た。
その彼女の目に安室は首を傾げる。
「・・・どうかしたか?」
「お客様相手にあの態度は如何なものかと・・・」
「あぁ・・・さっきの子たち?」
頷く凛に、安室はシートベルトへ手を伸ばしながら悪びれた様子もなくシレッと答えた。
「今はポアロの従業員じゃないんでね。」
「えー・・・」
一応接客業してる身でその態度はどうだと言いたげな顔の凛に、安室は彼女の方へ少し身を乗り出して口の端を持ち上げた。
「それに・・・俺は一途なんで。」
安室の言葉に、凛はサァッと冷たい何かが頭のてっぺんから足の先まで一気に駆け抜けた。
口元が震えて上手く声が出せない。
「・・・いち、ず?」
辛うじて絞り出た言葉に、安室は迷う事なく頷く。
「そう。
他の女性に必要以上優しく接して誤解されたくないからな。」
安室はシートベルトを留めた後車のエンジンをかけながら話していた為、凛が顔面蒼白となっている事に気付かなかった。
(・・・それって、零さんには好きな人が居るって事だよね?
何これ・・・苦しい、息が詰まる・・・
私、失恋確定じゃない・・・)
ドクンドクンと早る鼓動が鼓膜に強くうるさく響き、凛は呼吸が苦しくなる気がした。
なんとか空気を取り込もうと、大きく呼吸を繰り返す。
何度か大きく空気を吸い込んでは吐いてを繰り返し、隣に居る安室に感情を悟られないよう平静を保つ。
「・・・そ、そっか!
零さんにそこまで好かれてる女性はしあわせ者だね!」
平静を保って話すつもりが、わざとらしく明るくなってしまう。
しかし平静を保とうとすればする程、泣きそうになる自分がいる。
その為、無理矢理作った明るさが嫌という程に前面に出てきてしまう。
当然そのような異変は、すぐに安室に気付かれる。
「凛?」
「あー恋人かぁ・・・いいなぁ。
零さんの惚気聞いてたら私も人恋しくなってきたし、彼氏探そうかなぁ。
園子ちゃんにも恋人つくりなって言われてるし。」
「は!?」
凛の言葉に安室は慌て始めた。
「最近さ、この私にモテ期が到来したのか、ポアロで結構付き合ってって言ってもらえるんだー。
有難いよね。」
「ちょっと待て。
そんな事俺は知らないぞ。」
「そりゃみんな何故か零さんが居ない時に言ってくれるんだもん。
あ、これ嘘じゃなくて本当だよ!」
「おい、それは誰なんだ!」
凛の更なる言葉で、安室の焦りはひどくなる一方だ。
凛は自分の気持ちを押し殺す事に専念しており、安室の焦りなど気付きもしない。
「何?零さんが気にする事ないじゃん!
てか、私に彼氏が出来たら零さんの彼女さんと一緒にダブルデートしない?
絶対楽しいと思うんだ。」
「おい、君は何か誤解してないか?
俺が言いたいのはーーーー」
「てか聞いてよー・・・
今日の仕事中にねーーーー」
無理矢理話を変えられた安室は、何とか誤解を解こうと話を戻そうとした。
しかし、尽く話を変えられた挙句、安室名義マンションに着いてからはハロと遊ぶ事に専念するのですみませんがご飯が出来たら呼んでくださいと和室の襖を閉められた。
さらに食事の間も安室が何を言っても話をすぐさま変えられ、それ以外は黙々と無言で箸を進めた挙句、食べ終えたかと思えば杖を振って一瞬で食器を片付けた。
ついには安室の静止の声もまったく聞いてくれず、美味しかったですご馳走様でしたーとだけ残して、姿くらましでさっさと帰ってしまった。
姿くらましをして消えた場所に伸ばした手のままで安室は、数時間前の車内で発した自分の言葉を盛大に後悔した。
