Episode 21
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この日、凛はポアロの買い出しに来ていた。
レジを済まし、作業台で買った品物の袋詰めを終えると、両手に袋を抱えてポアロへと続く道のりを帰る。
(ここのお店ウイスキーボトルの種類が結構豊富だったなぁ。
今日お店終わったら買いに来ようかなっ♪)
鼻歌混じりに道を歩いていると、ふと煙草の臭いが凛の鼻腔をくすぐった。
苦手な煙草の煙の臭いに隠す事なくしかめっ面をした凛は、臭いの出処である近辺を見回す。
そしてとある場所で、視線は止まった。
視線の先には狭い路地があり、その路地に漆黒のロングトレンチコートと帽子に薄紫色のハイネックを身に付けた大男がひっそりと立っていた。
長い銀髪が柔らかい風に煽られて、ゆるやかに揺れている。
その大男の深緑の瞳と凛のヘーゼルの瞳が合った。
まるで捕らえた獲物を確実に逃がさぬ程の冷たいその瞳に、凛は目が離せなくなった。
たった数秒のはずだった。
しかし、その数秒が何分にも長く感じる。
大男が左手の指に挟んでいた煙草を口に運んで吸い、静かに吸い込んだ煙を吐き出した。
吸い終えたのか、指に挟んでいた煙草は地面に落とし、革靴でグリッと踏んで火を消す。
大男は一体いつからそこに居て、ここで何本の煙草を吸っていたのだろうか。
地面には数え切れない程の煙草の残骸が散らばっていた。
その瞬間、凛の口は無意識に開いていた。
「・・・ポイ捨て禁止ですよ。」
阿呆でもわかる。
この場で確実に言う言葉ではない。
案の定大男には鋭い目付きで睨まれた。
普通の人であれば、この目で睨まれると一目散に逃げるだろう。
しかし、今大男の目の前に居る人間は誰だ?
そう、凛だ。
自分が許せない物事であれば、相手が誰であろうと盾突く恐れ知らずな凛だ。
彼女が持つ正義感に意思があるならば、たまには空気を読め!とさぞかし冷や冷やしているところだろう。
そんな凛は、あろう事か今しがた買い物を終えた袋の中から透明のビニール袋を取り出し、大男に差し出すという信じられない行動をしている。
「携帯灰皿がないのでしたら・・・
とりあえずここに入れます?」
誰か彼女を止めてくれ。
今言える事は、凛の目の前に居る大男は確実にそのビニール袋を受け取り、あ、あざーす!助かりましたー!と言うような人間ではない事だけは確かだ。
何も言わずにただこちらを睨み付けている大男に、凛は目を瞬かせる。
そこでようやくマシな思考回路へと戻ってきた凛。
(・・・余計なお世話か。)
手に持っていたビニール袋を買い物を終えた袋に再び戻し入れ、大男に会釈をしてからその場を離れた。
狭い路地から凛の様子を鋭い目付きで睨んでいた男は、去りゆく彼女の背中を視線だけで追った。
「・・・何だあの女・・・」
大男はポケットから新しい煙草を取り出して口に咥えると、煙草の先に火をつけた。
そして目の前の先にある高層ビルに住むターゲットの監視を続けた。
「兄貴!」
大男が声の方へ視線を移すと、がっしりとした体格の男が走り寄ってきた。
受け口とエラが張った顎を持ち、サングラスをかけている男は、大男と同様、漆黒の服と帽子を身に付け、それに加えて赤いワイシャツを着ていた。
「遅くなってすいやせん・・・
トイレが混んでて・・・
何も問題はなかったですかィ?」
大男はフイッと視線を外し、高層ビルへと視線を戻した。
「・・・変な女に絡まれた。」
「変な女・・・ですかィ?」
「あぁ。」
「そいつァどうしやすか?
今すぐにでも殺りますかィ?」
「放っておけ。」
「へぃ!」
その後の大男をもちろん知らない凛は、ポアロへ帰宅して梓と談笑していたのであった。
