Episode 25
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ベルモットから指示を受けた降谷は、一度自宅に帰ると着替えた。
黒のジャケットとスラックスを手に取って袖を通す。
引っ掛けてあるブローチタイを適当に手に取って身に付けると、とあるホテルへと向かって車を走らせた。
ホテルに着いた降谷は、最上階のバーへと足を進めた。
バーへ入ると、辺りを見回して目的の人物を探す。
すると、カウンター席に腰掛ける女を見付けた。
綺麗にふわふわと巻かれた明るめの茶髪、切長の目元から流れるように書かれた黒いライン、その目元を覆うラメとピンクのシャドウ、そして真っ赤な口紅に塗られた唇。
ギリギリまでスリットの入ったセクシーな真っ赤なドレスを身に付けたその女は、一人でカクテルを飲んでいた。
(・・・あの女か。)
降谷は目的の女を見付けると、接触を図る為に近付いていく。
「すみません・・・
隣、よろしいですか?」
女は降谷に視線を移すと、チラリと上から下まで一通り見た。
そして真っ赤な口紅を塗られた口元が綺麗な弧を描いた。
「いいわよ。」
降谷が女の隣の席に腰掛けると、バーテンダーに適当にカクテルを頼む。
その間、女にずっと見られていた降谷は、気付かぬフリをして何食わぬ顔で目の前に置かれたカクテルに口を付けた。
(まるで品定めをされているようだな。)
「ふふ、何か僕の顔についていますか?」
降谷は愛想のいい微笑を貼り付けて女に視線を移す。
降谷の視界にようやく入った女は妖艶に微笑んだ。
目元にあるホクロが、その女をより妖艶に魅せていた。
「お兄さんがあまりにもカッコイイから見惚れてしまったのよ。」
「それはそれは・・・」
「あら、本当よ?
私、貴方みたいな素敵な人は初めてだもの。」
カウンターに置かれた降谷の手の上に、女は自身の手を重ねて置いた。
さらに女は降谷の腕に擦り寄ってくる。
女が身に付けている香水の香りが非常にキツく、降谷は顔に出さず内心で毒づく。
(・・・くさい。
この女、どれだけ香水を振り撒いてんだ。
ウイスキーやワインの香りが掻き消される程香水をつけるのは、マナー違反だと知らないのか?)
「・・・冗談がお上手ですね。」
「信じてくれないのね。」
降谷の反応に満足しなかったのか、女は不服そうに口を尖らせた。
降谷の手の上に重ねて置いていた指を絡ませて、再び口を開く。
「ねぇ・・・貴方、本当は私の事を知ってて声を掛けたんでしょう?
欲しいんでしょう?」
「・・・と言うと?」
「もう・・・知ってる癖に。」
「何をですか?」
女は口の端を持ち上げると、絡ませた指を離して降谷の太ももに移動させた。
そしてねっとりとした手付きで上下に触りながら、降谷の耳元で甘い声で囁く。
「気持ちよくなるクスリ。」
降谷は聞き出す手間が省けたなと思いながら、バーテンダーに追加のカクテルを頼む。
「彼女にビトウィーン・ザ・シーツを。」
ビトウィーン・ザ・シーツのカクテル言葉は、"あなたと夜を過ごしたい"だ。
降谷がバーテンダーに頼んだカクテルを聞いた女は、ニヤリと微笑んだ。
そして女の目の前に置かれたカクテルを手に取ると、そのグラスの中身を一気に飲み干した。
その様子を見ていた降谷は、自身の太ももに置かれていた女の手をさりげなく振り払い、その手首を掴んでバーを後にする。
「そんなに急がなくても夜はこれからじゃない?」
背後から聞こえてくる女の声に聞こえないフリをしながら、予めベルモットが取ってあったホテルの部屋へと向かう。
そして目的の部屋へ着くと中へ入り、女をベッドの上に放り投げるようにして離した。
「ふふ・・・見た目によらず、案外乱暴者なのね。
それとも、早く気持ちよくなりたいの?」
(お前の持つクスリを早く手に入れて帰りたいだけだ。)
降谷は口には出せない言葉を心の内に吐き捨てながら、自分もベッドの上に上がって女を組み敷く。
「・・・貴女の言う、気持ちよくなるクスリとはどこに?」
「せっかちね・・・
先に素面で楽しみましょうよ。」
(ーーーーチッ
面倒くさい女だな・・・)
降谷の首元に腕を絡ませてくる女に不快感が募り、その腕から逃れるように上体を起こして口の端を持ち上げる。
「それもいいですが・・・
初めから狂ったように求め、激しく抱き合う方が魅力的ではありませんか?
そう・・・獣のように。
理性など捨てて、ただお互いの熱をぶつけ合い、快楽という名の波にその身を沈める・・・」
降谷の言葉にそのシュチュエーションを想像したのか、女の喉がゴクリと大きく上下に動いた。
「そ・・・それもそうね。
クスリは私の胸の谷間の中に隠してあるの。
さぁ、取ってくれる?」
女は豊満な胸元を降谷に見せ付けながら挑発的な笑みを見せる。
薬の在処を知った降谷は、躊躇なく女の谷間に指を突っ込んだ。
確かにそこには小袋が挟まっていた。
その瞬間、女はわざとらしい嬌声を上げる。
「あん・・・っ
もうホント、貴方って顔に似合わずせっかちさん。
それとも・・・それほど私を欲してるのかしらね。
ほら、ここも硬くなって苦しいんじゃない?」
(寝言は寝てから言え。
誰がお前なんかに欲情するか。)
女は降谷の下半身に手を添えながら微笑むが、降谷のモノはまったく反応していない。
一刻も早くこの場から去りたかった降谷は、まさぐる女の手を無視しながら、小袋の中に入っていた錠剤を一粒取り出す。
そして、その薬を女に向かって差し出した。
「・・・飲んでください。」
「あら、それは貴方が飲むのよ。」
「もちろん、僕も飲みますよ・・・
ですが、二人でこのクスリを飲んだ方が・・・もっといいと思いませんか?」
女の耳元で甘く甘く囁く。
まるで悪魔の囁きのように。
その悪魔の囁きにまんまと心を奪われた女は、もう言いなりになるだけだ。
「・・・いいわ。
でも貴方が先に飲んで見せて。」
「いいですよ。」
降谷は自身で用意しておいたミネラルウォーターのペットボトルの蓋を開けた。
そして、薬を一粒手に取って口の中へ入れる。
その後、ミネラルウォーターを口に含み、喉が上下したのを確認した女は口を開けた。
降谷がその女の口に薬を入れ、ミネラルウォーターのペットボトルを渡す。
「・・・口を開けて。」
言われた通りにする女の口腔内に親指を入れ、舌の下や奥歯の方に薬がないか確認する。
そして確認し終えた降谷は、ニヤリと笑みを浮かべた。
次第に女の息が荒くなり、頬に赤みが差す。
「・・・ねぇ、早く・・・
来てよ・・・」
「即効性ですか。」
「そうよ・・・
体内に入ってわずか数秒で効く高性能なモノよ・・・
ねぇ、早く・・・」
降谷は女の様子を見ながら、目の前にある女の膝から脛にかけてスルリと指で撫でる。
すると、女はそれだけで高い声をあげて達した。
女は荒い息遣いで降谷を見上げて懇願する。
「焦らさないでよ・・・
早く・・・ねぇっっ」
女は耐え切れなくなったのか、遂には自分で慰め始めた。
その様子を冷ややかな目で見下ろしていた降谷は、口に含んでいた薬を吐き出した。
そしてベッドから降りると、女を残して部屋を出た。
