Episode 25
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凛が沖矢に自宅のマンションまで送ってもらって別れた後、鍵穴に鍵を差し込むと、鍵は掛かっていなかった。
「・・・あれ、鍵が・・・」
出掛ける際に必ず鍵を掛けて出たにも関わらず、鍵が開いている事に身構える。
静かに玄関ドアを開けて中を見ると、玄関に見覚えのある靴が置いてあった。
(・・・これ、さっき零さんが履いてた靴・・・だよね?)
その靴の持ち主が降谷である事に気付いた凛は、そのままリビングへと続くドアを開ける。
すると、リビングにソファに座る事もせず、ただ立ち尽くす降谷の背中が視界に入った。
「零さん?」
凛はその背中に声を掛けると、降谷はゆっくりと振り返った。
眉を寄せて苦しげな表情をする降谷に、凛は近付く。
「・・・おかえり。」
「ただいま。
どうしたの?」
尋ねるも何も話さなくなった降谷の手を握り、空いている手で彼の頬に触れる。
その手に擦り寄るような仕草を見せる降谷に、凛は眉を下げた。
「・・・思い出してたのね。」
「・・・」
無言を肯定と捉えた凛は、握っていた降谷の手を自身の方へ引き寄せた。
降谷はすんなりとその力に身を任せ、彼女の方へ身体を寄せて抱きしめた。
そこで、ふと凛は前からの疑問を降谷にぶつけてみる。
「・・・ねぇ、零さん。
前からずっと思っていたんだけど、どうやって私の部屋に入ってるの?
ここの鍵、持ってないよね?」
降谷は無言のままポケットに手を入れると、凛に向かって何かを差し出した。
差し出された手の平の上には、鍵を開ける時に使われるピッキングの道具が乗っていた。
「Oh・・・」
ピッキングの道具を見せられた凛は、呆然とその道具を見つめた。
困ったように微笑むと、降谷から離れ、戸棚の中からスペアキーを取り出した。
そして、そのスペアキーを降谷に差し出す。
凛にスペアキーを差し出された降谷は、ハッとして彼女に視線を移した。
「・・・いいのか?」
「うん。
毎回毎回ピッキングで入るのも大変でしょ?」
「・・・すまない。
犯罪を犯してしまっていて・・・」
今更ながらに気まずそうに謝る降谷の手に、強制的にスペアキーを握らせる。
「ふふ、これが零さんじゃなければ殴り飛ばしてるね。
零さんだからいいよ。
その代わり、次からはこっち使って入って来て。」
降谷はもう一度謝ると、手にあるスペアキーを大事そうに握り締めた。
その時、降谷のスマホに着信が入った。
スマホの画面を確認すると、そこに表示された番号はベルモットのものであり、降谷は顔を顰める。
「・・・その顔は組織からの仕事みたいだね。」
「凛さんには何でもお見通しだな。」
「零さんは出逢った頃と比べて、わかりやすくなった気がする。」
「それは・・・君の前だからだ。」
降谷の言葉の意味がわからず首を傾げる凛に、フッと微笑んで彼女の頭に手を伸ばした。
「君の前では・・・仮面をつける事を忘れてしまう。」
「それはいい事だね。
ありのままの零さんで過ごせるワケだ。」
「いい事・・・なんだろうか。
君には俺のこんな・・・弱くて頼りなくて情けない姿を見せたくないんだがな。」
「私は嬉しいけどなぁ。」
目を瞬かせる降谷に、凛はへへっと笑う。
「弱さを見せれるって事は、それ程信頼してくれて心の拠り所にしてくれてる証拠。
だから、そんな零さんを見れるのは嬉しいよ。」
「ホント・・・
君には敵わないな。」
目尻を下げて柔らかく微笑んだ降谷に、凛の心臓はドキリと脈を打った。
その後、組織の任務へと向かう降谷を見送る為、玄関へと着いて来ていた凛に、降谷は視線を移した。
「・・・いってきます。」
「気を付けてね、いってらっしゃい。」
その降谷に護りの魔法を施しながら、凛は手を振って見送った。
