Episode 24
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バシッ!
凛が姿現しをした場所は、工藤邸の玄関だった。
彼女の姿現し独特の音を聞いた沖矢が、リビングから出てくる。
「・・・凛ですか?
どうしました、こんな夜に・・・」
その沖矢に、凛は突然襲いかかった。
沖矢の腰を両足でホールドし、そのまま床へ背中から押し倒した沖矢の腹の上に乗り掛かる。
右手に持つ杖を沖矢の首元へ突き付け、沖矢の顔を見下ろす。
「・・・どうして?」
「何が・・・ですか?」
「貴方なら・・・私如きの襲撃を、いとも簡単に防げるはずよ。
倒れた時に受身を取っていたのが証拠。」
沖矢は首元へ手を持って行き、ボタンを押して変声機のスイッチを切った。
「凛が・・・とても苦し気な顔をしていたから、何かワケがあると思ったまでだ。」
「ーーーーっ
私だって信じたくない!
貴方程の人間がそうせざるを得ない程、きっとあの時の秀一には何かしらのワケがあったってわかってる!
それに秀一だってつらかったのかもしれない!
でも、こんなの零さんが・・・ーーーーっ」
沖矢は首元の切れ目に指を掛けて変装マスクを取り、薄めていた目をゆっくり開けた。
赤井のグリーンの瞳と凛のヘーゼルの瞳が混じり合った瞬間、凛は躊躇う事なく赤井に開心術をかけた。
『ーーーーレジリメンス!』
"さすがだな、スコッチーーーー"
スコッチ・・・
彼のコードネームはスコッチというのね・・・
でもやっぱり拳銃を持ってるのは、スコッチと呼ばれた彼だ・・・
"俺に投げ飛ばされるフリをして俺の拳銃を抜き取るとはーーーー
命乞いをするワケではないが、俺を撃つ前に話を聞いてみる気はないかーーーー?"
"け、拳銃は・・・お前を撃つ為に抜いたんじゃないーーーー
こうする為だっーーーー"
"無理だーーーー
リボルバーのシリンダーを掴まれたら、人間の力で引き金を引くのは不可能だよーーーー"
秀一は初めから彼を殺そうとしていない・・・
なら何故・・・?
どうして彼は自ら命を断ってしまったの・・・?
"自殺は諦めろ、スコッチーーーー
お前は、ここで死ぬべき男ではないーーーー"
"何ーーーー!?"
"俺はFBIから潜入している赤井 秀一 ーーーー
お前と同じ、奴らに噛み付こうとしている犬だーーーー
さぁ、わかったら拳銃を離して俺の話を聞けーーーー
お前一人逃がすぐらい、造作もないのだからーーーー"
"あ、あぁーーーー"
なんだ・・・
彼は生きてるじゃない・・・
FBIが保護して、表向き彼は死んだ事になってるのか・・・
これは階段を誰かが上って来る音・・・?
そ、そんな・・・
まさか、これって・・・
「スコッチさんっっ待っーーーーー!!」
ドン!!
"・・・裏切りには、制裁をもって答えるーーーー
だったよなーーーー?"
開心術をやめた凛は、呆然とした。
「・・・こんなの、誰も悪くないじゃない。」
ポツリと口から出た言葉の次には視界が歪み、凛の瞳から涙が止めどなく零れ落ちた。
落ちた涙は、次々に赤井の頬に落ちては床に向かって流れて行く。
「・・・あの時、彼を死なせてしまったのは、リボルバーのシリンダーを持つ手の力を緩めてしまったのが原因だ。」
赤井は凛を腹の上に乗せたままゆっくり起き上がった。
そして、大きな瞳から涙が流れ落とす凛の目元を優しく指で拭う。
「悪いのは俺だ。」
「違う・・・違う!
秀一は何も悪くない!
零さんも悪くない!
彼も悪くない!
誰も悪くない!」
神様の悪戯か。
偶然が偶然を重ねて起きてしまった哀しい出来事。
もしあの時の降谷と赤井がお互いの素性を知っていればーーーー
もしあの時の降谷が声を発していればーーーー
もしあの時の赤井が手の力を緩めなければーーーー
もしあの時の彼が早まらなければーーーー
そんな無意味なタラレバばかりが、凛の脳内に浮かび上がっては沈んでいく。
首を左右に振りながら悪くないと言い続ける凛に、赤井は小さく微笑んだ。
「フッ・・・君は強情だな。」
「・・・強情なのは秀一よ。」
「彼の事は・・・俺が死なせたも同然だ。
これは事実だ。」
「違うってば。
秀一、しつこい。」
「悪いな、俺はしつこい男なんだ。」
赤井は小さく笑いながら目の前で涙を流し続ける凛の細い腰に手を回した。
そして自身の胸元へと引き寄せた。
「・・・だから、もうそんなに泣くな。」
自身の胸元で小さく嗚咽を漏らして泣き続ける凛を、赤井は彼女の背中をあやす様に撫でた。
