Episode 19
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忙しさがピークを迎えた20時過ぎ。
突然、厨房の方が騒がしくなっていた。
その騒がしさに不思議に思った凛は、すぐさま厨房へと向かった。
凛が厨房を覗くと、そこには床に倒れ込んだ小百合の姿と慌てる他の料理人たちがいた。
「小百合ちゃん!」
凛は小百合に駆け寄ると、頭をぶつけてる可能性を考えて極力小百合の身体を動かさないように注意しながら、その容態を確認した。
「う・・・
凛・・・ちゃん?」
意識がある事を確認した凛は、すぐさまスマホで119番をタップした。
そして他の料理人たちに何があったのかを尋ねた。
しばらくして店に救急車がやって来て、小百合は米花中央病院へと搬送される事となった。
その様子を心配げに見ていた凛に、副料理長が声をかけた。
「凛ちゃん・・・
オーナーに着いてもらえないかな?
あのオーナーの事だ、きっとあの状態でも店の心配をする。
だから俺たちはオーナーが余計な心配しなくていいように店を回さなくちゃいけないんだ。」
「副料理長・・・
わかりました。
小百合ちゃんの容態がわかり次第、お店に連絡しますね。」
凛は会釈すると、すぐさま小百合の乗った救急車へ乗り込んだ。
小百合が病院へ運ばれて検査を受けた結果、過労と栄養失調である事がわかった。
その為、2、3日入院をする事になった。
「過労と軽い栄養失調らしいね。」
病室のベッドの上でポツリと呟いた小百合に、凛は心配けな表情で頷いた。
凛には小百合が過労で倒れる程働く理由を知っていた。
小百合は幼少期の頃、離婚により母親と二人暮らしだった。
母親はキャバ嬢として働いていたが、過度なストレスから逃げるようにしてギャンブルとホストに狂い溺れた。
その結果、小百合にはロクにお金をかけてもらえず、いつでも満足に食事を摂る事も出来ず、高校にも行かせてもらえず、中学を卒業と共に働いて生きてきた。
小百合には、まだ4歳の幼い子どもが居る。
その幼い子どもの為、自分と同じ思いにはさせない為にも小百合は必死に働いているのだ。
「小百合ちゃんが倒れる程、働く理由を私は知ってるよ。」
「凛ちゃんには話してたもんね。」
「だから小百合ちゃんの気持ちもすごくわかる。
でもね、ちょーっと私は今から小百合ちゃんに怒りたいと思う。」
「え?」
小百合はキョトンとしながら凛に顔を向けた。
そして、凛は一つ大きく息を吸い込んだ。
「あのね、小百合ちゃんは周りを頼らなさすぎ!!
副料理長さんも他の料理人さんたちも、今日病欠の料理長さんもみんないい人で、話せば助けてくれる人たちばっかりでしょ?」
「それは知ってるけど・・・」
「だったら週に2日、小百合ちゃんがお店を休んだ日を作ったとしても、だーれも文句も言わなのも知ってるでしょ?
むしろ、やっとオーナーが休んでくれた!って喜ぶ程だと思う。」
凛の言葉を聞いた小百合は、顔を破綻させて笑った。
「あー、確かに!
いかにもあの料理長たちなら言いそうな言葉だわ!」
「でしょ?
だから、小百合ちゃんは休んでもいいんだよ。」
「うん、ありがとう・・・」
「それに秋人くんもママが倒れたら心配しちゃうよ。」
「本当そうよね。
・・・大事な秋人の為にって言っておきながら、結局秋人の事考えれてなかったなぁ。
こんな事になってしまうなんて・・・」
小百合は困ったように微笑みながら視線を外した。
彼女は、頼れる身内が居ない自分が入院する間、秋人をどこに預けるべきか悩んでいたのだ。
その事にもちろん気付いていた凛は、小百合の手を取って微笑んだ。
「小百合ちゃん、今秋人くんの事考えてるでしょ。」
「うん・・・」
「小百合ちゃんが入院してる間、私が秋人くんを預かっちゃダメかな?」
凛の言葉に小百合は、勢いよく顔を上げた。
「え!?
でっでも・・・」
「そりゃ小百合ちゃんの大切な秋人くんを他人に預けるのは、中々気が引けるのはわかるけど・・・」
「そうじゃなくてっ!
秋人も凛ちゃんになら懐いてるから、すごく有難いんだけど・・・」
「迷惑だと思ってるなら心配しなくていいよ。
全然迷惑なんかじゃないから。」
凛がニコリと微笑みながら、ね?と首を傾げた。
しばらく悩んだ小百合は、おずおずと口を開いた。
「・・・本当にいいの?」
「もちろん!」
「凛ちゃん、本当にありがとう!
なんてお礼をすれば・・・」
「んー、そうだなぁ。
じゃあお礼は、小百合ちゃんがいっぱい休んで早く元気になる事!」
小百合は驚いて素っ頓狂な声を出した。
「えぇ!?
そんな事!?」
「そんな事じゃないよ。
とっても大事な事だし、それが最高のお礼なんだからね!
わかったら返事!」
渋々と頷いた小百合に満足した凛は、夜間の保育園で待っている秋人を迎えに行くべく、病院を後にした。
