Episode 19
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「凛ちゃん、急でごめん!
今日の夜、助けて欲しい!」
目の前で両手を合わせて頭を下げる女に、凛は即答で了承した。
「OK、小百合ちゃん!
夜は暇してるし私に任せて!」
「ありがとう!
さすが凛ちゃん、最高!」
「小百合ちゃんの頼みとあらば喜んでだよ!」
「本当に助かったー!
女神すぎる!
後で細かな時間とかメッセージ送るわね!」
小百合はそう言うと、バタバタと慌ただしくその場を離れて行った。
小百合とは、創作料理 白百合の女店主だ。
その店は以前、凛が店名に釣られてふらりと入った店で、その時に店主である小百合と出逢った。
彼女は凛と同じ28歳で、一児の母であり、そしてシングルマザーだ。
凛と小百合は初対面にしてすぐに意気投合し、今ではすっかり親友となっていた。
凛は何度もヘルプで小百合の店に入る事もあり、今回も従業員が病欠で人手が足りなくなった為、彼女にヘルプの要請が入ったのだ。
凛は夜のヘルプに備える為に、すぐに自宅へと帰る事にした。
小百合から届いたメッセージには18時からお願い!と書かれていた。
しかし小百合の店は懐石料理のコースが多い為、その準備などがあるだろうと思い、凛は早めに出勤する事にした。
「おはようございまーす。」
「凛ちゃん!?
もう来てくれたの?
まだ16時30分だよ?」
「小百合ちゃんのお店は人気だし、きっと今日も予約で埋まってるから・・・
準備で忙しいだろうなぁと思って早めに来ちゃいました。」
「うわーんっ、凛ちゃんって本当に女神すぎでしょ!
実はてんてこ舞いだったのよー!
見てよ、この厨房の有様!」
小百合が指差した先の厨房は、確かに料理人たちが慌ただしげに動き回っている。
聞けば、今朝病欠で連絡してきたのはここの料理長だったそうだ。
料理長不在の厨房は今、副料理長が仕切っているが、それでも突然の事態に料理人たちは半泣き状態である。
凛は泣き付く小百合にすぐに手伝うよと微笑みかけると、店の制服である簡易着物に合わせて髪を結い上げて簪で留めた。
そして厨房に入る前に、手指を念入りに洗った。
「あのね、この人参をすべて梅の飾り切りにして欲しいの。」
「OK.
こっちのゆずも下処理しとくね。」
「ありがとう!」
厨房だけでなく、ホールの方も突然の変更ラッシュに襲われ、バタバタと忙しそうにしていた。
「オーナー!
18時ご来店の分のつき出しの準備がまだっ!」
「あ、それはさっき仕上げたので冷蔵庫に入れときました。」
「凛ちゃん、流石!
ありがとう!」
「オーナー!
19時予約の宮本様が三名様に人数変更希望です!
いけますか!?」
「了解、いけるよー!
全料理一人分増やしといてー!」
「オーナーァァァァッ!
先程、電話で大手広告企業の重鎮たちが使う会食の場に急遽今日お願いしたいと連絡きたんですが、どうしますか!?」
「えーーーー!?
何人よ!?」
「ザッと30人ですうううううっ!」
「んな人数、突然言われても無理に決まってんだろぉぉぉっっ!」
「20時からでもダメでしょうかねぇぇぇっ!?」
「小百合ちゃーん、20時からなら今から私がこっちの料理人さんのヘルプ入るから、30人分の懐石コース間に合いそうだよー。」
「凛ちゃん、大好き!
その予約承っといてー!」
「了解でーす!!」
凛は他の料理人たちの邪魔にならないよう、テキパキと自分の出来る仕事をこなした。
そしてある程度厨房内の手伝いを終えた頃、次はホールの手伝いに行こうかと思った。
「小百合ちゃん、一旦ホールのお手伝いに行ってくるね。」
「ありがとーっ!
お願いするわ!」
凛はオーダーで流れてきた酒類をチェックすると、盆の上に酒瓶とお猪口を乗せてホールへと向かった。
(えーと・・・これ持ってった後に、桜の間に向付の準備して、椿の間には大吟醸で・・・藤の間に熱燗・・・)
凛がブツブツと今後の動きの導線を考えながら提供に向かっていたその時、とある個室前の廊下で客の男に絡まれている髪を二つに結った可愛らしい女を見付けた。
凛は迷う事なくすぐさまそちらの方に身体の向きを変えた。
「やめてください!」
「んだよー、ちょっとこっちで一緒に飲もうって言ってるだけじゃんかよ。」
「迷惑です!」
「んな事言うなってー。」
近くまで来た凛は、その男の手首を掴んだ。
「お客様、当店でそのような行為はやめていただけますでしょうか。
他のお客様にご迷惑でございます。」
凛に手首を掴まれた男は、怪訝な顔を彼女に向けた。
しかし凛を視界に入れた瞬間、パッと表情を明るくした。
「おっ、アンタ中々可愛いじゃねぇか。
アンタここの店員だろ?
俺について酒を注いでくれよ。」
「申し訳ございません。
当店はそのようなお店ではございませんので。」
「んだよ!
付き合い悪ぃな!
客である俺が注げって言ってんだぞ!」
男は凛の腕を掴んで、無理矢理連れていこうとした。
その時ーーーー
「はいはい、そこー!
それ以上するなら逮捕するわよー。」
凛が聞こえた声の方へ視線を向けると、そこにはロングヘアーの女と見覚えのあるショートカットヘアーの女が立っていた。
「あ?
なんだ姉ちゃん、警察に連絡するってか?」
「私たちが警察官なんですー!」
ロングヘアーの女は警察手帳を男に見せ付けながら、凛の腕を掴んでいた男の手を無理矢理引き離した。
男は警察手帳を見た瞬間、文句を吐き捨ててバツが悪そうにしながら一人で部屋へ戻って行った。
「助けるつもりが助けられちゃいましたね、佐藤刑事。」
「そんな事ないわ、凛さん。
お陰でこの子が助かったわよ。」
佐藤は髪を二つに結った女の頭にポンッと手を乗せて微笑んだ。
二つくくりの女は、頭を下げて礼を述べた。
「はい!
先程は助けてくださりありがとうございました!
私は三池 苗子と言います!」
「私は宮本 由美よ。
たく、何よ・・・さっきの酔っ払い・・・
貴女、大丈夫だった?
結構強く、腕を掴まれていたでしょ?」
「助けてくださったので大丈夫です。
私は神崎 凛です。」
その後、すっかり由美たちと意気投合した凛は、三人と連絡先の交換をした。
そして飲み会の約束までしたのであった。
