Episode 21
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凛のマンションに着いた安室は、恒例の他の住人と共にエントランスをくぐり抜け、凛の部屋の前まで来た。
そしてドアの取っ手に手をかけてみると、なんと玄関の鍵は掛かっていなかった。
あまりにも不用心な事に、彼女の身に何か遭ったのではないかと不安が押し寄せる。
安室はゆっくりと玄関ドアを開けて中へ入り、リビングへと向かう。
しかし、凛の姿はリビングになく、キッチンに目をやるもそこには何か食べたような形跡はなかった。
寝室で寝ているのかと思った安室は、リビングを出て調合部屋のドアノブを押した。
安室が調合部屋のドアを開けると、不思議な香りが鼻腔をかすめた。
視線を部屋中に向け、ある一角を視界に捉えた瞬間、安室は目を見開いた。
安室の視線の先には、背中を丸め、ひたすら大鍋の中身を右手に持つカンロレードルでぐるぐるとゆっくり混ぜている凛が立っていた。
その凛に恐る恐る近付いた安室は、彼女の背後からテーブルの上を覗き見た。
テーブルの上には、瓶に入った植物のような根や動物の角のようなものなどが置いてあり、またまな板の上には植物の根が刻まれた跡があった。
続けて安室は、凛がひたすらに混ぜている大鍋の中身を見た。
その大鍋の中には何やら液体が入っている。
額に汗を滲ませ、青白い顔色をした凛は安室の存在に気付く事はない。
「・・・早く・・・
Pepperup・・・」
凛はブツブツと小さな声で何やら呟き、延々と鍋の中身を混ぜている。
その姿はまるでお伽噺に出て来る悪い魔女のようだった。
「・・・凛さん?
何をやって・・・」
安室が凛に恐る恐る声を掛けた瞬間、彼女の身体がぐらりと揺れた。
すぐに凛の身体を支えた安室は、彼女の体温が異様に高い事に気が付いた。
(身体がすごく熱い!
こんなにも熱が高いのに、一体彼女は何をやってるんだ!)
安室はすぐさま凛の右手からカンロレードルを奪い取って横抱きにすると、奥の寝室へと向かった。
ベッドへゆっくりと彼女を横たわらせて布団を被せると、凛が小さな声で何かを呟いた。
「・・・ず・・・み、ず・・・」
水を欲してる事に気付いた安室は、すぐさま道中で買ったミネラルウォーターを取り出した。
ペットボトルのキャップを開けてストローを刺し、それを凛の口元へ持っていく。
「凛さん、水だ。
飲めるか?」
安室が問い掛けるも、凛は目を閉じて眉間に皺を寄せ、苦しげに呼吸を荒らげているだけだった。
あまりにもつらそうに呼吸を繰り返す凛に、安室は悩んだ末、ペットボトルからストローを抜き取ると、少し口に含んだ。
そしてそのまま凛の唇へ寄せると、わずかに開いた彼女の口から水を流し入れる。
その行為を何度か繰り返すと、次第に凛の呼吸は落ち着きを取り戻して深い眠りについた。
(良かった・・・呼吸がかなり楽そうになった。
眠ってる間に何か食べやすい料理を・・・)
安室が安堵の息を漏らし、ベッドサイドから離れようとした瞬間ーーーー
「・・・ぃで・・・」
「?
凛さん?」
安室は何か要望だろうかと思い、凛の口元に耳を近付けた。
「置いて・・・かないで・・・
寂し・・・」
熱が高い故に人恋しく感じるのかと思った安室は、凛の頭を優しく撫でた。
君は一人ではないよ、と心で思いながら。
「・・・さんが、すき・・・なの・・・
ずっと、傍にいて・・・」
凛の爆弾発言により、彼女の頭を撫でていた安室の手はピタリと止まった。
凛はその言葉を最後に、スヤァと安らかな寝息を立てている。
安らかな寝息の中、安室は静かに立ち上がると寝室を出た。
(ーーーーやはり先日の居酒屋での話は本当だったのか!!
改めて彼女の口から言われると、腸が煮えくり返りそうだっっっ!)
安室は寝室の扉に背を預け、両手で頭を抱え込みながらその場に蹲った。
(一体全体どこのどいつなんだ!?
この俺があんなにも目を光らせていたというのにっっ!!
いつの間に凛さんに好意を寄せてもらえるような人物がっっっ!!)
心が荒れ狂った安室は、一度深呼吸をしてなんとか落ち着かせた。
(落ち着け・・・
俺ももういい大人だ。
これくらいで動揺してるようじゃ、公安は務まらない。
とりあえず優先すべき事は、彼女が元気になる事だ。)
安室は深い溜息を漏らすと、チラリと先程凛が混ぜていた大鍋に視線を移した。
大鍋の中身は透明な液体からドス黒い物体に変わっていた。
(そういえば、彼女は一体何を作ろうとしていたのだろうか・・・)
安室は本が並ぶ棚へ向かうと、"魔法薬全集"と書かれた本を手に取って索引ページを開いた。
(確かあの時、凛さんが何か言っていたな。
"早くPepperup"?)
"Pepperup"から始まる魔法薬がないか探していると、"Pepperup Portion"という名前の魔法薬を見付けた。
そのページを開いて内容を読むと、安室は納得した。
(なるほど・・・
彼女は風邪薬を調合しようとしていたワケか。)
魔法薬全集を閉じた安室は、本を元の位置に戻すと、調合部屋を出てリビングへと向かった。
